けものの脇道 ~レヴィの戦い~
レヴィは六体のホムンクルスを相手にしながら、森の中を進んでいた。
元々戦闘は得意ではないレヴィであったが、族長の血族である彼女の力は普通の龍族よりも高い。
そんなレヴィであっても複数のホムンクルスを一人で相手にするのは難しく、逃げの一手に甘んじている状態だった。
「クッ、しつこい! ニーズともはぐれてしまったし……何とか他の皆に情報を共有しないと!」
先程、避難所には思念伝達して状況を送ったが、他の戦闘要員の仲間たちに届いたかは不明。
もし届いていたとしても、ホムンクルスが他の場所にも潜伏している可能性を考えると応援は期待できない状態であった。
「うぐっ!」
レヴィの背中に痛みが走る。
ホムンクルスの鉤爪がレヴィの背中を捉えたのだ。
「チッ! いい加減にしやがれ!」
レヴィは離脱しようとするホムンクルスの足を掴むと胴体に向かって手甲で覆った拳を叩き込む。
その衝撃でホムンクルスは四肢を飛び散らせて四散するが、翼の根元をやられたレヴィはよろよろと地面に下りてしまった。
「フッ、ちょっとまずいかもしれないね……でも、簡単にやられるあたしじゃないよ!」
レヴィは翼をたたみ、手甲を眼前で構える。
ホムンクルスたちは木々を利用し、四方八方から攻撃してくる。
「ウゥ、ウガッ、アァ!」
数の暴力で蹂躙されるレヴィは全身を切り刻まれながら苦痛に悶える。
「うぐぅぅ……くそぉ!」
レヴィが苦し紛れに放った打撃は近づいてきたホムンクルスの顔面を粉砕する。
「へ、へへ……どんなもん――ゲフッ!」
事態が好転したと思ったのもつかの間――
後ろから近付いてきたホムンクルスの剣がレヴィの背中から脇腹まで突き通る。
レヴィは激しく血を吐きながら自らの血で赤く染まった剣先を握る。
「あ、あぁ……う、グッ!」
レヴィはそのまま身体をひねると、裏拳でホムンクルスを剣を突き立てている腕を残して粉砕する。
身体が千切れそうなほどの激痛に耐えながら、レヴィは剣を脇腹から引き抜いた。
だが全身の傷に加え、脇腹の傷から流れ出る血はレヴィから立ち上がる力を奪っていく。
「ハァハァ……」
最早、声を出す体力さえ残っていないレヴィの頬にホムンクルスの無情な一撃が加えられる。
頬を切り裂かれたレヴィは踏ん張ることが出来ずに地面に倒れ込む。
目から光が失われていくレヴィに対して、残った三体のホムンクルスは近くに降り立つと品定めをするように首を動かす。
一体のホムンクルスがおもむろにレヴィの尻尾を掴むと高らかに持ち上げた。
「う……ぐ……」
呻くレヴィに剣を装着したホムンクルスが近づく。
「Φ§ΑΘ!」
ホムンクルスが何か音を発すると装着している剣が発光し始めた。
そう、ここから始まるのは獲物から素材を削ぐ作業。
熱を帯びた剣を使い、損傷をなるべく抑えて削ぎ取る様に指令を受けているホムンクルスたちはレヴィの素材にならない部分ばかりを痛めつけていた。
そして、ホムンクルスたちはレヴィが継線能力を失ったと判断し、本来の目的に移ったのである。
一体が身体、一体がレヴィの身体と尻尾の境目を押さえ、残りの一体が高熱を放つ剣を振りかざす。
「ご……めん、皆――」
レヴィが最後の声を絞り出した。
その時、辺りに風が巻き起こり剣を構えていたホムンクルスの腕が粉砕される。
その風はそのままレヴィに迫ると身体を押さえているホムンクルスたちを蹴散らした。
「血の匂いがすると思って来てみれば……何なのだ此奴らは?」
そこに現れたのは白銀の毛並みを持つ巨狼。
レヴィはただ虚ろな眼差しでその狼が反射する光を見つめていた。
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