episode.『09月10日(木)』



書きたくても書けない


書こうと思うのに気分が乗らない


いつか書ければいいなと思いながら


また好きなものから遠ざかる


同じものを食べ続けたら飽きてしまうように


時折、好きなものから距離を置く


必ず帰ってくると誓いの言葉を胸に翳して


破ることは決してない


だって、心の底から大好きなものだから



      ※



過去を振り返り


思い出に縋って


皆が前を向いて歩いていく中


私だけが後ろを向いている


落ちこぼれになったあの日から


私の人生は狂い


明るい未来は閉ざされた


元を辿れば自分のせい


私を孤独に追いやったのも


努力を怠った私が問題で


私が私にとどめを刺したのだ


もう戻れない


後戻りはできないんだよ



      ※



過去に囚われ続ける私を


周りの皆は知りはしない


会う度に気丈に振る舞って


あの頃の自分であろうとした


心配をかけまいと


笑い話で済まそうとした


たとえそれが


自業自得であっても


未だ受け入れることができない


あの日から全てが狂い


私は私ではなくなっていた


ただ依然として


私は道化を演じていた



      ※



私は同等でありたかったのだ


対等な存在として接したかった


だから心配されないよう


必死で笑顔を取り繕った


いつも通りの自分であろうとした


哀れみの目で見られるより


皆の笑顔が好きだから


自分は大丈夫だと嘘をついた


見栄を張っていた


私を狂わせ歪めたのは現実


無力な私というトドメの一撃だった



      ※



私の人生はこんなのばかりだ


誰よりも恵まれない環境で


誰よりも夢みがちなバカだった


だからこそ痛い目を見て


二度と取り戻せない過ちを繰り返して


後悔ばかりが募った


もしもあの時


落ちこぼれになっていなかったら


明るく調子のいいガキのままだった


世界は希望に満ちている


そう信じてやまなかった



      ※



大人ぶったガキだった


自分を信じてやまない


愚直に信念を貫き通す男


それは今でも変わっていない


ただ闇落ちとでも言うべきか


根は真っ黒に染まっていた


あの明るさはどこへいったのやら


人と関わることを避けるようになった


口を閉し、心を閉し


自ら孤独を選んで進んでいた


何もかもを恨む自分がいた



      ※



歳を重ねるごとに


考えは改められ


徐々に昔の自分を取り戻していった


それでもパズルのピースは足りない


何度も何度も崩れ落ちる


大事なピースが欠けていた


それはもう絶対に手に入らないものだ


どこで失くしたのかもわからない


あの日落とした明るさだけが見つからず


私は歪んだまま


途方に暮れていた



      ※



やはり落ちこぼれは落ちこぼれのまま何も変わらない


愚かにも自分を信じて歩み続けている


諦めが悪いと言うか


意地っ張りと言うか


良くも悪くも何も変わらない


明るい自分は失われ


明るい未来は存在しない


この先生きても幸せはない


それでも死ぬまで


叶わない恋や夢に現を抜かす


それが私の人生でした


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