episode.『09月30日(日)』



あなたに出逢えてよかったと、言えたらどれだけ幸せでしょう。


愛してくれてありがとうと、伝えられたらどれだけ幸せでしょう。


そんな幸せを送れたら、私はどれだけ笑顔でいられただろう。


涙涙しかない人生。上辺だけを重ねてきた私には、言葉にできない苦しみでいっぱいです。


孤独な私は不幸者だ。



      ※



12年前の初恋を引きずっている。


11年、面影の似た彼女に片想いをしている。


素敵だと言う人もいれば、臆病者と言う者もいる。


伝えることは容易だ。でも会いたくても会えない。


その苦しみが私を縛り続ける。


だからもう恋はしないと豪語する。


叶う叶わないではなく、私はただ幸せでいてほしいのだ。



      ※



一途な恋を素敵だと言う人がいる。


けれど実際、そんな人を見かけると重い奴だと判断する。


その人の何を知っているわけでもなく、憶測や偏見でしか物事を語らない。


他人の愚痴。貶してばかりで視野が狭い。


ものの見方を変えずして、何が理解できるというのだろう。


皆、口ばかりだ――。



      ※



人と深く関わることが怖い。


だから上辺だけの関係が築かれる。


理解者が欲しいんじゃない。私はただ、肯定してほしいのだ。


否定され続けた私には、支えがない。


期待と裏切りの連続。些細なことで、嫌いになる。


相手を知らないと口を開くこともできない。


不安で、仕方がない。


だから人は選ぶよ。



      ※



上辺だけの関係を築き、心の中ではいつも一人。


孤独死寸前。寂しさにはもう慣れた。


現実に縛られ、自由などどこにもない。


唯一、夢を見る時だけが幸福で、この歳で後悔ばかりの人生を送って来た。


そんな過去を気休めでも理想で覆いつくしたくて、自分の一部を一つの世界として生み出している――。



自らの過去に理想を付け足し、なんとも激しい自己投影をして……。


それが何になるのかはわからない。


けれどそうすることでしか、この乾ききった心を癒すことができない。


時々、それすらも苦痛になることがある。


だからいっそ、死んだほうが楽なのではと思ってしまう――。



それでも、諦めきれない夢があるから。それで何かが変わるかもしれないから。


そんなちっぽけな願いだけが、今の自分を支えている。


今までどれだけの期待に裏切られたことか、自分がよく知っているはずなのに。期待なんて、するだけ無駄なのに……。



周りからすれば、愚かな行為なのだろう。


でも、もう決めたことだから。



      ※



私はあなたが好きでした。


けれどあなたには、好きな人がいるという噂があった。


噂はどこまで行っても噂。


それでも私は、あなたに告げることができなかった。


好きだからこそ、嫌われることを選んでしまった。


あなたのためにと、逃げるための言い訳を並べて――。


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