episode.『09月27日(木)』



今日は高校最後の体育祭。


2年間、敗北を味わい続け、ようやく優勝を手にした。


皆の顔は笑顔で、喜びで満ちている。


けれど私は、何も感じてはいなかった。


やって来たことが無駄に終わらずに済んだ。ただそれだけの感情。


私の心は、どこまでいっても灰色だったよ――。



      ※



他人の目を気にし、自分の評価のことだけを考え、利益にならないことはしない。


傍から見れば優しい人。自分からすればただの偽善者。


私を優しいと言う人は、私を本当に理解してはいない。


だからそんな目で私を見ないでくれ。


他人の目を欺き、自分を偽る薄情者。


言っただろ?私は優しくないと――。



      ※



私の願うものは手に入らない。


期待をしても裏切られる。するだけ無駄。


自分の思い通りになる理想世界。そんなものは存在しない。


上辺だけの関係を築き続ける私は、いつだって一人。


だから私は、幸せにはなれないよ。


あなたに、私を理解することはできないよ――。



      ※



あなたに私の何がわかる?


あなたの知っている私はいない。


心に孤独な闇を抱えた黒い自分。皆の想像する偽りの自分。


どちらも自分であって自分じゃない。


上辺だけで生きる苦しみ。人格崩壊者。


憶測や偏見で相手を貶す周りに、私を理解できるはずがないだろう。


私はどこまで行っても、一人だよ――。


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