第14話

 しばらくして、差し当たっての回復を待った男はロープをよじ登った。満身創痍な男は、少女に尋ねる。

「火は燃え広がらなかったか?」

「うん」

「それは良かった。……あいつには、悪いことをしたな」

 男は崖下を一瞥して言う。

「うん」

「あんな苦しませる殺し方しか思いつかなんだ」

 悔恨の表情を浮かべる男に、少女はかける言葉を持たず、代わりに

「とりあえず、小屋に戻ろう?」

 と促した。


 小屋に戻り、男の傷だらけの身体の応急手当をする少女。滑り落ちた際の裂傷、擦り傷は既に治り始めていたものの、全身の皮膚は未だ焼け爛れ、もし常人の身体であれば助からない域であると、少女は直観的に感じ、しても仕方のない問いと思いながらも訊いてしまう。

「これ、治るの?」

 それに対し男は笑って言う。

「治るさ。今よりゾンビが知られてなかったとき、焼夷弾、まあ爆弾で焼き払うのが定説だったときがある。だが奴ら、焼かれてもピンピンしてたし時間が経てば再生してた。俺も一緒さ」


「なら良いけど」

「さあ、早いとこ昼飯にして出発しよう。流石に今日中に登頂しないとな。飯が足りなくなる」

 なおも暗い顔の少女に、男は爛れた顔で努めて明るく言った。



「このシチュー美味しいね」

「そうか?何よりだ」

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