第12話
次ぐ日の朝。空は昨日の激しさが嘘のように晴れていた。男の腹の傷は未だ生々しく血を滲ませていたものの既に塞がり始めており、包帯を替える少女は驚く。
「だから大丈夫と言ったろう?ゾンビだからな」
「ゾンビってどっちかっていうとボロボロで傷だらけのまま動いているイメージだったけど」
「ゾンビウイルスは元々不死身の軍隊を作ろうとしてできたって説もある。この身体、治癒能力は相当だ」
男は足の様子を確かめながら言う。折れていた足も、引きずりながらではあるが歩けるまでに回復していた。
「まあ、何とか頂上までは行けるだろう」
「その後は?」
「頑張る」
即答する男に、少女は苦笑する。男も合わせるように笑みを零し、向き直って言う。
「とりあえず飯にしよう」
男の用意した簡素な朝食をもそもそと食べる少女。男はその向かいに腰を下ろし、口を開いた。
「何はともあれ、目下の問題はクマだ。クマは獲った獲物に執着する。つまり、あいつは必ずまた現れる」
「じゃあ暫く2人でこの小屋に泊まるってのはどう?籠城作戦」
フリーズドライサラダに手を伸ばしながら提案する少女に、男は頭を振る。
「ダメだ。ワライグマはああ見えて剛腕で、鼻も利く。その気になればこんな家の窓なんざ簡単に壊して侵入して来るぞ。まあでも、もし嬢ちゃんがこの小屋に残って助けを待つなら、ここで別れるって手も」
「それはダメ」
今度は少女が頭を振る。
「おじさんは私が死ぬまで見てて」
「だよな」
男は溜息を1つつき、諦めたように続けた。
「戦うか」
「勝てるの?!あのクマに」
「頑張る」
少女は震える。そう口にする男の目からは、先までの穏やかさは消えていた。
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