アンデッド・クライマー
もくたん
第1話
戦争があった。長い、永い戦争だった。兵は朽ち、野は焼け、民は燃えた。これはそんな長い戦いに負けた、とある国の物語。
鬱蒼と茂る深い森。人が生きるにはあまりにも原始的なその場所は、皮肉にも未開であるが故に戦火から免れていた。そんな辺地のバス亭に、降りる者がいた。1人は少女。つば広帽子を被り、背にはリュックサック。ダウンジャケットに質素なズボン、スニーカーという出で立ちの彼女は、迷いなく獣道に踏み入り、森の中に進んでいく。そして、もう1人。深く被ったフードと丸渕のサングラス、マスクにネックウォーマーまで付けて顔を隠したその人物は、肩幅だけで男性と見て取れた。ヤッケを着込み大きなバックパックを背負い込んだ彼もまた、彼女の進んだ獣道に足を踏み入れる。足場の悪い一本道である。大柄な彼の登山靴は、すぐに先に入った少女の背中に近づいた。彼が少女に、今にも追いつきそうなその時、少女は彼に向き直る。虚をつかれ、一瞬固まる男に、少女は弾む声で言う。
「おじさん、ゾンビでしょ?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます