第35話 14 リザルト


 戦闘フィールドの外で座り込む面々、その疲労感は体からではなく、脳と心が感じているものだろう。誰もが達成感の無いまま、目の前に表示されるリザルトを眺めている。


 俺はその中で木に背を預け、リザルトの確認を終えて、アイテムストレージを整頓していた。


「ね、ヤト……この後、話できる?」


 出会った時とは違う態度のナナに、別に構わないと答えた。


 そんな俺たちの耳に突如響く怒号。


「ふざけるな!なんだこの戦いは!高が最初の大陸の攻略で何人死んだ!!」


 アスランは、その太い腕で地面を殴りつけると、周りの男たちも呟き始める。


「これクリアできんのかな……」

「無理だろーな、……いつチート級の奴が出てきてもおかしくないしさ」


「俺、攻略組み抜けるわ――」

「……攻略組み抜けたところでだろ?この世界で何すんだよ。……モンスターと戦う以外に何ができるんだ?」

「女の子とイチャイチャとか?」


「それ以外は、味覚エンジンの限界を追及して料理作るとか?」

「無いわ~、……エロゲ的な感じでNPCの女の子の開拓ルート探す?」


「1人でやってろよ、……あ~なんでこんなゲームに……」


 それぞれ愚痴を言う中、1人がそれを口に出す。


「このゲームのクリア条件ってもう一つあったよな?」


 このゲームのクリア条件は、全ての大陸の攻略。そして、〝テスターの全滅〟もしくは〝非テスター〟の全滅である。


「そう言えば……そんなのもあったな」


 冗談交じりで男が、「非テスター狩りしちゃう?」と言った瞬間、今度はケージェイが怒号を上げる。


「馬鹿なことを言うな!この世界でPK、プレイヤーキルは!人殺しと同じなんだぞ!!私たちオーダーは彼らを護るギルドのはずだ!」


 そのケージェイの言葉に、男たちは顔を俯ける。


「あんたにそんなこと言う資格があるのか?な、ケージェイ――」


 アスランが鋭い視線で彼を睨む。


「どういう意味だアスラン――」

「あんた……さっきの戦いで、俺たちを見捨てようとしたろ?」


 その言葉は、ケージェイの旨に深く刺さり、言い訳も何もない。


 なぜなら、それが事実だから。


 ケージェイはゆっくりと目を瞑り、もう一度開けると、アスランを含むその場のプレイヤーを一瞥して深く頭を下げた。


「……申し訳ない――」


 その姿を見たアスランがさらに言う。


「謝れば済むとでも?死んだ仲間が生き返ると?」

「無論だ、死んだ者は生き返りはしない、だが、私は、ギルドマスターとして軽率な行動は取れなかった。私がいなくなることでオーダーは瓦解する、そうなれば折角作り上げた秩序がなくなってしまう」


「それは、お前を慕って共に剣を取った者よりも大事か?ここにいる誰よりも?」

「……ここにいる誰よりもだ、私がいなくなっても問題ないのなら、私は迷わず参加した!」


「詭弁だな!言い訳にしか聞こえない!」


 アスランは、彼の言葉に怒りを露にして怒鳴りつける。


 ケージェイは冷静に冷静に、耽々と己の存在意義を説こうとする。


 そんな二人の言い争いにすら、他のプレイヤーは無気力というか、他人事のように野次馬化している。

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