第21話 恋バナ ドライヤーが脚を直撃

 本当のところリュウのブレーキランプは何回点滅してたんだろう。

 シャワーを浴びて髪を乾かしながら、ぼけーとそんな事を考えていたら、スマホからLINEの着信を知らせる音がした。

 今度はドライヤーを画面に叩きつけない様に、焦らず慌てず。先ずはドライヤーのスイッチを切って、静かに洗面台に置いた瞬間絡まったコードに指が引っ掛かり、置いたつもりのドライヤーが落下。そして、足の甲を直撃……。


 いったぁい!!!!


 もう、なんでこんな時にコードが絡まるのよ。

 そこまでして、やっとスマホを握る事が出来た。

 スタンプで『おやすみ』だけって!!

 こちとら告白までしたのに、いえ、するつもりはなかったんだけど、それに返事もせずスタンプ一個だと!?

 負けじと、可愛い女の子のスタンプを購入して、『おやすみなさい』のスタンプを送り返した。

 すると間髪入れずにハートのスタンプがいくつも送られてきた。

 おじさんも、こんな事するのねって。

 やだぁ、何か恋人みたい!!



 なんとなく、本当になんとなく謎の充実感で出勤したら、恐ろしく仏頂面のヤマシタが待ち構えていた。

 なんなのよ。

「浮かれてますね。あの車の男ですか」

 何よ、その言い方。

「先輩、好きなんすか?」

 ど直球。

「ん? どうかな。うん、好きだと思うよ」

「なんすか、それ」

 ねぇ、私アラフォー何て可愛いもんじゃなくて、どーんと40歳なの。微塵も望んでないけど40歳なの。

 おばちゃんよ?

 そんな恋バナみないな事しないわよ。

「え。そうなんすか?」

 少なくとも、女の子同士でするものよ。

「先輩、恋バナする相手いるんすか!?」

 ぐうの音も出ない。

 居ないわよ。いや、いる。香織ちゃんがいるじゃない。

 でも……

「でも? 香織ちゃんって俺が知ってる香織ちゃんですか?」

 誰よ、それ。なんでヤマシタがリュウの妹を知ってるのよ。

「先輩のカレシ、リュウって言うんですね。で、妹が香織ちゃんと」

 こ、こいつ。

「俺、話聞き出すの上手いって言われるんすよ」

 知ってるわよ。それが成績にも直結しててご昇進でしょ!

「あ、やっぱり根に持ってる!」

 だめだ。完全にペースに乗せられてる。

「ほらほら、仕事仕事」

 なんとか追い返したけど、あいつは要注意だわ。

 ほら、もう若い女子社員とこっちをちらちら見ながら何か話してる。

 まさかバラしてないわよね!?

 

 ところで、気が付いてなかったんだけど、朝リュウからおはようのスタンプが来てた。

 スマホにプライベートな連絡なんて長く着てなかったから、朝スマホをチェックする習慣もいつの間にかなくなってて、気が付いたのは10時頃。

 やってしまった未読スルー。

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