第19話 視界を塞ぐ物 それは……
無事に鍵も見つかり、リュウが向かってくれたのは高校時代に遠足と称して登らされた山の頂上付近にある遊園地の駐車場。
夜来る事なんてなかったから知らなかったんだけど、物凄く夜景が綺麗!!
夢の世界を見下ろしてるみたい!!
「うわぁぁぁ」
まさに感嘆の声って感じの声だしちゃった。
「え、なに、ノリここに来たの初めて?」
リュウ、ちょっとドヤ顔。
来た事はあるけど、夜景を見た記憶はない。
「おれ、大学時代ここの遊園地でバイトしてたんだよ。大学から電車一本で来れたから」
ふーん、例の元奥さんと来てたんでしょ。
って言いそうになって、慌てて止めた。
私、だいぶこじらせてるな、これ。
でも、多分、顔に出たね。
「本当は、ちょっと酔わせて夜景見せて指輪出してイエスって言わそうと思ったんだけど」
「若い頃ならともかく、おばさんよ? そんなのには引っ掛からないから」
あはははは。
笑って誤魔化したけど、まぁ、引っ掛かるよね!
どうして、チャレンジする前から諦めるのよ。
ふふふ、なんて笑いながら車の助手席に戻った。
「そっか、早く帰らないとシッポが待ってるもんな」
うん。
うん、そうなんだけどね。
本当は、何かのドラマみたいにリュウの背中に抱き着きたかったんだけどね……。
高校の時、あの日の橋の上と同じ。
私は歳ばっかり食って、なぁんにも変わってなかった。
ぼんやりと眼下に広がる夢の世界は、見慣れた景色に近づくとともに現実世界へと引きずり出された。
「あのさ」
無言で運転してたリュウが口を開いた。
「せっかくLINEも使えるようになったし、時々連絡していいか?」
「もちろん」
「良かった。せっかく再会できたのに、これっきりになるのは忍びなくてさ」
忍びないって、どこのおっさんよ。あ、おっさんか。
でも、凄く嬉しい。
って、なんで口に出して言えないの私っ!!
「寄っていく?」
「え?」
いや、誘い方!!!
絶対今誤解された!
「あ、そういう意味じゃなくて!」
あああ、もぅ。
墓穴掘った……。
「今日はやめとく」
うん。
えっ!
きょうは??
「あ、いや、そう言う意味じゃねーよ!」
リュウが顔を真っ赤にしてる。
ブッ…ブハハハハハハハハハハ!!
堪え切れずに笑っちゃった。
だって、四十のおじさんとおばさんよ??
「何やってんだろうね、私達」
リュウもつられて笑い出した。
赤信号で車が止まった。
この交差点、昼間は人通りが多いんだけど夜になると街灯も少なくて人通りも少ない。
カチッ。
隣でリュウがシートベルトを外した音がしたと思ったら、急に視界が塞がれ……。
リュウの唇が、まだ笑ってた私の口を塞いだ。
「ごめん」
直ぐに信号が青になって、リュウはシートベルトをして運転に戻った。
え?
今私キスされた?!
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