第16話 嫉妬? おじさんも嫉妬するのね

「こん時のちゃんぽん、美味かったよなー」

 ちゃんぽんの何倍も値段のするお料理を食べながら、懐かしそうにリュウが「見て」と写真の中の仁美ちゃんを指さした。

 写真の中の仁美ちゃんの視線。

 みんなカメラの方を見てるのに一人だけちゃんぽんを見てる。

 なんなら手はお箸を握ってる。

「えー、気付かなかった!」

 確かに、仁美ちゃん食いしん坊だった!

「新発売のお菓子、必ず買ってきてたよな。俺何時もお裾分けして貰ってた」

 リュウ、それはきっと仁美ちゃんがリュウの事好きだったからだよ。でも、教えてあげない。私と仁美ちゃんとの秘密だから。

 なんだか急にリュウの事が憎たらしくなってきちゃった。

 なんだコイツ。

 乙女二人の気持ちをモテアソンデ!!

「もーらいっ!」

 リュウの海老の天ぷらくすねてやった。


 ☆ ☆ ☆


 別に良いよ、って言ったんだけど結局リュウの車で送ってもらう事になっちゃった。

 そのまま強引に帰る事も出来たんだけど、このままバイバイしてしまったら、これっきりになるような気がして。

 今日はとても大事な日、じゃないかなって。

 だから

「じゃぁ、お言葉に甘えて……」

 って、リュウの車に乗り込んだ。

 ちょっと高級そうな車。

 リュウの運転、凄く優しい運転。

「もしさ、あの日ノリがうちの店に電話して来なきゃ、再会する事もなかっただろうし、ヒトミちゃんが亡くなった事も知らないままだったろうな」

 運転席で真っ直ぐ前を向いたまま、リュウが言った。

 それは、ヒトミちゃんの死を知りたくなかったってこと、なのかな。

「これは運命だと思うんだ」

 何言ってんだお前。

 思わず言いそうになった。

「学校、行ってみないか」


 ☆ ☆ ☆


 夜もいい時間なので、校門は閉まってるし校舎は真っ暗。

 もちろん青春ごっこじゃないんだし不法侵入なんかしないけど。

 急に時間が二十二年前に戻った錯覚に陥った。

 丁度近くにコインパーキングが出来ていたので、リュウはそこに車を停めた。

「ここ、何があったっけ?」

 学校の直ぐ側にコインパーキングなんてなかったはず。

「一階が喫茶店で、二階は喫茶店の人の住まいだったと思う」

「駅から学校までも、随分変わったよね」

 さっき車で通りかかった駅も、すっかり変わってた。

 駅前にあったケンタッキーがなくなって、お洒落な駅ビルが建ち一階はマクドナルドになってた。

「二十二年だもんな」

「うん」

「子供だったら生まれた子が大学卒業するな」

「げ」

 すっかり年老いてしまったって突き付けられてるみたい!

 四十歳って初老だもんね……。

「でも、おれ。気持ちは十八の時のまんまだから」

 まぁ、私なんて十六くらいで止まってる気がするけどね。

「あのさ」

 リュウが突然居住まいを正した。

 なに、ちょっと怖いんですけど。

「会社の前で一緒に居た男、誰」

 リュウ、凄い顔してる。

 あ、因みに一緒に居たのは、例のヤマシタなんだけどね。

「会社の後輩。もう直ぐ上司になるんだけどね」

 あ、余計な事言っちゃった。

 やっぱり、私の中で引っかかってるな、この件。

「ふ~ん」

 なによ。

「いや、ノリが車に向かって歩き出した時、すっげぇ睨まれた」

 馬鹿ヤマシタ。

「目つきが悪いだけだよ」

「いや、あれは敵を見る目だった。あの男となんかあった?」

 あるわけないじゃない。

 え、もしかしてヤキモチですか?

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