第一章:乙女たちの残光/01

 第一章:乙女たちの残光



 ――――対バンディット特務機関、P.C.C.S。

 その本部ビルの地下司令室に、今日も今日とて戦部いくさべ戒斗かいととアンジェリーヌ・リュミエールの二人は集められていた。

 二人の前には例によって総司令官の石神いしがみ時三郎ときさぶろうが立っていて、石神の傍らには補佐役としてみなみ一誠いっせいの姿もある。

 今日は定例ミーティングの日だった。やることといえば現状の大雑把な確認や、今後のあれこれなどの話ばかり。今更ながらな話も多く、取り立てて話し合うべきことも少なく。二人を呼び出した定例ミーティングは、普段よりも早い時間で切り上げとなった。

「さてと、時間も時間だ。二人とも腹減ってるんじゃないか? 良かったら昼飯でもどうだ? 今日は俺の奢りだ。南くん、君もついでに来るか?」

「おっ、マジっすか司令! ゴチになるッスよー!!」

 定例ミーティングが終わり、笑顔で昼食に誘ってくれる石神と、ついでに連れて行ってやると言われて全力で喜ぶ南。

 そんな二人の傍ら、戒斗は「そういや、先生はどうした?」と今更な質問を石神に投げかけていた。

「そういえば、セラも見かけないね?」

 続けてアンジェも、セラが――――セラフィナ・マックスウェルがこの場に居ないことに、きょとんと首を傾げる。

 ――――戒斗の言う先生、即ち篠宮しのみや有紀ゆきとセラは、珍しく定例ミーティングの場に居なかったのだ。

 そのことに今更ながらに気付いた二人が、不思議そうに首を傾げていると。すると石神は「ああ、それなんだが――――」と言い、

「今日、二人には調査に出て貰っているんだ」

 と、戒斗たちに答えてくれた。

「調査……?」

「えっと、一体何の調査なんですか?」

 きょとんとする二人に、石神……と、補足で南も口を挟みつつ、二人でセラたちが居ない理由を説明する。

「一週間ほど前、とあるポイントで強烈な反応をバンディットサーチャーが感知したんだ」

「でも、すぐに消えちゃったんスよ。P.C.C.S発足以来、今まで観測してきたどの反応よりも強い反応だったッス。サーチャー側の故障も疑ってみたんスけど……でも、バンディットサーチャーは正常に稼働していたんスよ」

「サーチャーの不具合ではない以上、放置しておくワケにもいかんのでな。一応、有紀くんにはその場所の調査を頼んでおいたんだ。セラくんはその助手も兼ねた護衛役、といったところだな」

 どうやら、そういうことらしい。

 ――――今の説明を簡潔にまとめると、こうだ。

 一週間前、P.C.C.Sのバンディットサーチャーが、ある場所で今まで前例がないほどの強烈な反応を感知した。サーチャーの故障ではなかった為、その場所を……凄まじい反応があったポイントを調査すべく、有紀とセラを現地に派遣した。

 簡単に言えば、二人がこの場に居ない事情はそういうことのようだった。

「……なるほどな」

 二人の説明を聞き、頷いて納得する戒斗。

 そんな彼にアンジェがチラリと目配せをすると、戒斗もまた視線だけで分かっている、と暗に返してくれる。

 …………二人とも、実を言うとそれが何だったのか、その反応の正体が何だったのかは、ある程度知っていた。

 知っていたが……しかし、とても話すワケにはいかなかったのだ。

 だって、これは――――他ならぬ彼女、間宮まみやはるかに関わることなのだから。

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