第十一章:強襲、白き流星/01
第十一章:強襲、白き流星
「さすがだね、この程度じゃ君らの相手にもならないか」
そうして遥とセラ、アンジェの三人が全てのバンディットを撃破した頃。傍らに控えた真ともに戦況を遠巻きに見守っていた潤一郎がフフン、と楽しげに鼻を鳴らしていた。
「年貢の納め時よ、キザ野郎! この間のお礼……アイツの分まで、たっぷりさせて貰うわ!!」
「真さんを……真さんを、返して貰うッ!!」
「……秘密結社ネオ・フロンティア、貴方たちを許すワケにはいきません…………!!」
そんな潤一郎に向かってセラとアンジェ、そして遥の三人が各々の武器を向けながら、闘志剥き出しの視線で潤一郎を射抜く。
そうすれば、睨まれる潤一郎は「おお、怖い怖い」とわざとらしく肩を揺らしてみせる。
「じゃあ先生、お願いしますよ」
大袈裟に肩を揺らしながら、潤一郎は指をパチンと鳴らした。
すると――――その瞬間、何処からか超高速の閃光がこの場に滑り込んできて。遥たち神姫三人の懐へ一瞬の内に飛び込めば、攻撃を敢行。目にも止まらぬ速さで三人を同時に吹っ飛ばしてしまう。
「がぁぁっ!?」
「うぁ……っ!?」
「っ――――!?」
セラにアンジェ、遥の三人が神姫装甲から激しい火花を散らし、彼方へと吹っ飛んでいく。
吹っ飛んでいった三人はそのまま地面を何度かバウンドし、砂利の上に転がった。
そんな砂利の地面に這いつくばりながら、自分たちの身に何が起こったかも分からず。戸惑いながら三人が顔を上げると……すると、そこにあったのは。
「うんうん、いい子だ。よく来てくれたね」
そこにあったのは――――砂埃を上げながら砂利の上を滑走し、潤一郎の前に
――――チーター・バンディット。
颯爽と現れたそのバンディットこそ、遥たち三人を一瞬の内に吹き飛ばした閃光の正体だった。
その見た目は……これまたセンチピード同様、名前の通りにチーターそのものな見た目だ。あの動物が人型になった形、と喩えれば分かりやすいか。
体色は黄褐色の地肌に薄い斑点模様がある格好と、まさにチーターそのものな色合い。体つきはしなやかで、無駄のない肉付きはあのバッタ怪人、グラスホッパー・バンディットを彷彿とさせるが……チーターの体躯はあちらよりも幾分か華奢だった。
そんな風貌のチーター・バンディット、華奢な見た目からして先程のセンチピードほどの攻撃力は有していないだろうが……しかし、それ以上に厄介な特徴があるのは三人全員が理解していることだった。
――――――速さ。
そう、それこそがあのチーター・バンディット最大の武器なのだ。
地上最速の動物として名高いチーター。その名に相応しいほどの常軌を逸した素早さを、あの怪人は有しているのだ。
こうして遥たち三人が不意打ちを喰らい、吹き飛ばされてしまっていることがその何よりもの証拠。歴戦の神姫である遥とセラ、そして速度に秀でた神姫であるアンジェですら……不意打ちといえ、反応できなかったほどの速度。それが如何に厄介なものかは、敢えて詳しく語るまでもない話だ。
「実は姉さんからもう一体預かっていてね。それがこの子というワケさ」
そんなチーター・バンディットを従える潤一郎は、自分の前に
――――アルビオンシューター。
それが一体どのような物なのかは、今更語るまでもないだろう。
潤一郎は懐から抜いたアルビオンシューターをくるくると右手の中で回し、調子良くガンスピンをしながら……傍らに控えた真に向かって横目の視線をチラリと流す。
「僕らも行くよ、真」
視線を流しながらニッと笑んで潤一郎が言えば、真は氷のような無表情のまま、小さく頷き「……任務了解」とだけ呟いた。
『READY』
そうすれば、潤一郎はシューター後端のローディングゲートを開き、左手で懐から純白のBカートリッジ『アルビオン・カートリッジ』を引っ張り出す。
その横で、真もまた右腕を小さく掲げ……そこに装着する禍々しい黒と紫のガントレット『ダークフラッシャー』を見せつけながら、左手では細い折り畳みナイフ型のデバイス『ダーインスレイヴ・キーブレード』をバチンと開く。
『GET READY』
「変身♪」
『SET‐UP ALBION‐SYSTEM』
「……転身」
『Change』
それぞれのデバイスから女声と男声、無機質な電子音声が鳴り響く中……潤一郎はBカートリッジを装填したシューターを構え、トリガーを引き。真は右手のダークフラッシャーに左手のダーインスレイヴ・キーブレード、その刃をガシャンと差し込む。
その瞬間、潤一郎の身体を滑らかな純白の装甲が瞬時に包み込み。真はその身体を禍々しい漆黒の閃光に包めば、一瞬の内に黒と紫の神姫装甲を身に纏う。
――――プロトアルビオン。
――――神姫グラファイト・フラッシュ。
純白の戦士と、黒と紫の禍々しき闇の神姫。二人はそんな姿に変身を遂げれば、立ち上がったチーター・バンディットとともに揃い踏み、遥たちの前に立ち塞がる。
そんな三人の強敵を前に、よろよろと起き上がりながら……遥とセラ、アンジェの三人は小声で囁き合う。
「……アイツの速さには、アンジェ。アンタしか対応できないわ」
「分かった。……じゃあ二人とも。真さんのことはお願い」
「やってみるわ。どうにかしてアイツを正気に戻す……手伝ってくれるかしら、セイレーン?」
「無論です。とはいえ……可能でしょうか、そんなことが」
「分かんないわよ、そんなこと。でも……やれるだけ、やってみましょう」
「――――ええ、分かりました」
三人で目配せをし合い、頷き合いながら。遥は近距離特化形態のブレイズフォーム、セラは基本形態のガーネットフォームにそれぞれフォームチェンジ。アンジェだけは現状の速度特化形態・ヴァーミリオンフォームを維持しつつ、両手で逆手持ちに握り締めたミラージュカリバーをグッと握り締める。
そんな三人と、潤一郎たちネオ・フロンティアの三人がジッと睨み合ったのは――――ほんの僅かな時間のみ。
「さあ、踊ろうか――――――!!」
銃撃とともに告げる、そんな潤一郎の言葉を合図として。三人はそれぞれ踏み込み、それぞれの敵の元へと駆け出していく――――。
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