第四章:正義に燃えよ烈火の拳、剛烈の神姫クリムゾン・ラファール/03

「だぁぁぁぁぁっ!!」

 真っ先に飛び掛かっていったのは、美雪だった。

 バンッと地を蹴って飛び、上空からの鋭い飛び蹴りをライノセラスに見舞ってやる。

 普通のバンディットなら、これでひとたまりもないはずだ。

 しかし――――。

「っ!?」

 美雪は妙な手ごたえのなさを感じると、そのままライノセラスの身体を蹴って後ろに飛び、飛鷹の傍に戻ってくる。

「ギュルルルル……」

 そんな美雪の前、彼女の鋭い飛び蹴りを喰らったはずのライノセラスは……しかし不気味な唸り声を上げるだけで、大したダメージを負ったようには見えない。

 ――――硬すぎる。

 ライノセラス・バンディットの皮膚は美雪の想定以上に硬く、その為に思うようなダメージを負わせることが出来なかったのだ。

「はぁぁぁぁぁぁっ! たぁりゃぁぁぁぁ――――ッ!!」

 そうして美雪が戻ってきた直後、飛鷹もまた踏み込んでライノセラスに肉薄。そのまま鋭い蹴りを……ではなく、左腰に装備していた武具の……刀のつかのようなものを彼女は右手で抜き放つ。

 そうすれば、飛鷹が抜いたそのつかから光の刃が……緑色の、それこそビームの刃としか形容できないものがバッと迸り、剣の形に形成される。

 ――――ビームソード。

 神姫クリムゾン・ラファールが有する武具のひとつだ。飛鷹はそれを……ライノセラスの懐に潜り込むと、まるで居合斬りのように抜刀。そのままビームの刃でライノセラスの腹を斬り裂こうとする。

「……む」

 手ごたえは、あった。

 だが飛鷹の振るったビームの刃はライノセラスの体表を焦がしこそしたが、一刀両断とまではいかなかった。

「でりゃぁぁぁぁっ!!」

 ビームソードでは、少なくとも今の出力……通常出力のビームソードでは厳しい相手だと悟ると、飛鷹は振り上げた脚で連撃を仕掛けて追撃。そうしてライノセラスが怯んだのを見て後ろに大きく飛び、美雪の傍に戻ってくる。

「師匠、この敵……思ったより硬いです……!」

 そんな風に飛鷹が戻ってくれば、美雪が焦りを滲ませた声で言う。

 すると飛鷹は「ああ、そうだな美雪!」と力強く頷き返し、

「だが……この程度で折れる私とお前ではないはずだ!」

 と、弟子を奮起させるような言葉を、飛鷹は覇気のある声で告げる。

「確かに奴は硬い。だが……この程度で私の天竜活心拳を破れると思うなッ!!」

 続いて叫ぶと、飛鷹はビームソードを左腰に戻し。再び格闘戦の構えを取れば、同じく構えを取った美雪とともにライノセラスと正対する。

「……一人では厳しくても、二人でなら……私とお前でなら倒せるはずだ」

「やりましょう、師匠!」

「ああ、行くぞ美雪! 悪魔の所業は……此処で食い止める!!」

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