第四章:NIGHT RAID/02
M727を構えて歩いてくる戒斗を前にして、十数体のコフィン・バンディットたちは……自分たちではセラの対処は困難と判断したのか、一気に攻撃対象を切り替えたかのように戒斗へと突っ込んでくる。
「さあ、来い……!!」
そんなコフィンたちの群れに対し、戒斗は一切の躊躇無くM727を発砲した。
フルオートでの連続射撃だ。五・五六ミリの小口径・高速ライフル弾の反動を戒斗は巧みに制御しつつ、まずは手近な一体へ集中的に銃弾を叩き込む。
すると、戒斗の掃射を喰らったコフィンは十数発ほど耐えはしたが……やがて灰色のコンバット・アーマーも耐久限界に達し、アーマーが割れると共にそのコフィンは殺到する五・五六ミリ弾に身体を引き裂かれ、そのままバタンと仰向けに倒れてしまう。
(こんだけ撃ってやっと一匹か……予想以上に骨が折れるな)
手早くコフィン一体を撃破出来たものの、しかし戒斗の内心は決して穏やかではなかった。
なまじVシステムの圧倒的な火力を行使しての戦闘に慣れているから、今の戒斗は余計に生身の非力さ、無力さを実感してしまっている。
何せ、ライフル弾を二〇発以上ブチ込んでやっと一体を倒せるぐらいだ。人間なら一発喰らっただけでも致命傷だというのに、このコフィン・バンディットはそれを二〇数発も耐えてしまった。
まして、使っているのはP.C.C.S特製の特殊徹甲弾だ。これがもしも通常弾、ありふれたフルメタル・ジャケット弾だったらと考えると……寒気がする。
……何にしても、これだけ撃ち込んでやっと一体を撃破出来るレベルだ。どうやら戒斗が予想していたよりも、ずっと厳しい戦いになりそうだった。
「ま、やってやるさ……!!」
だが、諦める気は毛頭無い。
例えVシステムがなくても、この手には銃がある。銃がなければナイフ、それもなければ素手で戦えばいい。今の戦部戒斗の双眸に諦めの色は欠片もなく、その瞳の奥にはただ、激しく燃え盛る闘志の炎だけがあった。
「さあ、掛かってきな……!!」
コフィンを一体撃破した後、戒斗は不敵な笑みを浮かべつつM727の照準をズラし、次の標的へと狙いを定める。
スッと横に動く銃口、それが標的と重なり合わさった瞬間――――そっと引鉄を引く。
すると、狙い定めた標的に向かってライフル弾の雨あられが正確に降り注いだ。
「チッ……!」
しかし、さっきの一体を撃破したときに弾倉の大半は使い切ってしまっていた。
ガチンと撃鉄が空を切り、M727のボルトキャリアが後退したまま静止する。
――――弾切れ。
だが、まだ狙い定めたコフィンを仕留められてはいない。目の前のコフィンは今の斉射で怯みこそしたが、しかし未だ息絶えてはおらず。よろめいた格好から体勢を立て直すと、他のコフィンとともに携えたライフルの銃口を戒斗に向ける。
そうすれば、放たれた反撃の豪雨がすぐさま戒斗を襲った。
それに対し、戒斗は舌打ちをしつつ大きく横っ飛びに飛び退くことで回避。今まで彼が立っていた位置にライフル弾の豪雨が降り注ぎ、アスファルトの床が激しく火花を散らす中……着地し、勢いのままぐるりと地面を転がりながら、戒斗は膝立ちに起き上がる。
起き上がると、戒斗は右腰の弾倉ポーチから新しい弾倉を取り出し。その弾倉を握った右手の親指で、M727のマグキャッチボタンを押し込むと……重力に任せ、ライフルに差さっていた空弾倉を足元に叩き落とす。
そうして空弾倉が落ちると同時に、戒斗は瞬時に新しい三〇発フルロードの弾倉を叩き込み。一旦ライフルを右に傾けると、空いた右手の手のひらでボルトキャッチボタン、ライフルの左側面に生えているそれを叩いた。
とすれば、後退状態のまま静止していたボルトキャリアが解放され、前進し……弾倉から拾い上げた新しい一発を薬室へと装填する。
「俺をどうにかしたけりゃ――――」
そうして再装填を終えたM727を構え直し、戒斗は再びフルオート射撃を開始。すぐさま先程仕留め損なった一体を撃破すると、その流れのままもう一体も蜂の巣にしてやった。
「――――もう少し、腕を磨いてから出直しな」
蜂の巣にされたコフィン二体がバタンと地面に倒れ、派手な爆炎とともに爆死を遂げる中――――膝立ちでライフルを構えた格好のまま、戒斗はニヤリと不敵な笑みを浮かべていた。
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