第十四章:Through the Fire/04
「ハッ……!」
「だぁぁぁぁ――――ッ!!」
「アタシの奢りよ! 全部乗せ、持ってけぇぇぇ――――ッ!!」
セラの撃ち放つ榴弾砲が唸り、両手のガトリング機関砲とマシンキャノンが吠え、マイクロミサイルが弾け、そして両肩の重粒子加速砲から撃ち放たれた重粒子ビームが迸る中。遥とアンジェの二人はそんな分厚い援護射撃に守られつつ、一気に敵の懐へと飛び込む。
「遥さん、ちょっと肩貸してねっ!!」
「はい、行ってください――――アンジェさんっ!!」
走りながら、飛んだアンジェは遥の肩を踏み台にして更に高空へと飛び上がり。するとそのまま両腰のスラスターを吹かし、滞空していたホーネット・バンディットへと強襲を仕掛ける。
「だぁぁぁぁっ!!」
両手で逆手に握り締める、ヴァーミリオンフォームの武器たる短剣『ミラージュカリバー』。ホーネットへと飛び込んでいくアンジェは、すれ違いざまに両手のミラージュカリバーで斬り掛かり……ホーネットの背に生えた羽、名前通り蜂の羽のようなそれを根元からぶった切った。
「ギャアアアア――――ッ!?」
とすれば、自慢の羽を斬り落とされた痛みに喘ぎながら、失速したホーネットがそのまま地面へと墜落する。
「まずは、これで……!」
そんな光景を、砂利の地面を派手に滑走しながら、砂埃を上げながら着地したアンジェは見て。確かな手応えとともに、敵を追い詰めた感触を抱いていた。
――――これでホーネット・バンディットは最大のアドヴァンテージ、飛行能力を失った。
だとすれば、戦況は一気にこちらへと傾いたことになる。後は、一歩ずつ着実に敵を追い込んでいけば……!
「アンジェさんっ!!」
「えっ――――!?」
そう思っていたアンジェの背後に、彼女の名を叫びながら遥が滑り込み。いつの間にかアンジェの真後ろに忍び寄り、彼女を闇討ちしようと企んでいたスコーピオン・バンディット……振り下ろされた右手のハサミを、遥は間一髪のところで受け止めていた。
驚いたアンジェが振り返ると、そこには遥の背中と……彼女が構えた聖剣ウィスタリア・エッジと斬り結ぶスコーピオンの姿があり。それを目の当たりにして、アンジェは漸く自分が窮地に立たされていたことを知った。
「ご無事ですか!?」
「うん、ありがと遥さん……!!」
「アンジェさんに何かあったら、私が戒斗さんに合わせる顔がありませんから……!!」
言って、遥はそのままスコーピオンとの鍔迫り合いを押し切り。隙を晒したスコーピオンの懐に飛び込むと、一瞬の内に何閃もの斬撃をその甲殻類めいた身体に叩き込む。
斬られた箇所から激しい火花を上げながら、スコーピオンが苦悶の声とともに後ずさる。
「シュルルルル…………!!」
「くっ……!」
だがスコーピオンもやられっ放しとはいかず、隙を突いて尻尾を動かし、その毒針器官を遥へと突き立てた。
研ぎ澄まされた感覚でそれを察知した遥は、咄嗟に飛び退くことで尻尾の攻撃を回避。
「シュルルルル!!」
しかし、避けたはずの尻尾から――――毒針が飛び出してきた。
それこそ、銃弾のように。遥はどうにかこうにか身を捩ってそれを避けようとしたが――――ほんの僅かに、間に合わない。
(だったら……!!)
ならば迎撃するまでだと、遥が遠距離形態のライトニングフォームにフォームチェンジしようと決意した、その瞬間だった。
「シュルル……?」
「! 今のは……!!」
遥がフォームチェンジしようとした一瞬前に、遠くから機銃掃射が飛び込んできて……今まさに遥を襲おうとしていた毒針を、何者かが空中で撃ち落としてしまったのだ。
ハッとした遥が、セイレーンフォームのままで飛び退きながら、機銃掃射が飛んできた方を見ると。するとそこにあったのは――――陽炎揺れる採石場の中、悠々とした足取りで歩いてくる、大きなガトリング機関砲を携えた鋼鉄の重騎士の姿だった。
「――――待たせたな」
漆黒の重騎士、人類の切り札……ヴァルキュリア・システム。
それを纏う戒斗は、ギラリと光る真っ赤なカメラアイが睨むヘルメットの下で、不敵な笑みとともにそう呟いていた。
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