第六章:静かな月明かりの下で/01
第六章:静かな月明かりの下で
――――その後の経緯を、ざっくりとだが説明しよう。
風谷家を離れた戒斗とアンジェの二人は、そのままパトカーで連れられていった最寄りの警察署で形だけの事情聴取を受けることになった。
事情聴取といっても、先に述べた通り本当に形だけの話だ。ある程度の話を訊かれ、そして二人が何者であるのかを証明し、書類に書き記すだけのこと。本音を言えば必要のない作業だが、あくまで書類上……お役所仕事でどうしても必要なのだという。
そんな事情聴取の最中、戒斗は運転免許証と一緒に、身分証代わりにP.C.C.SのIDカードも見せてやったのだが。これを見た刑事……さっき戒斗たちに声を掛けた、あの四〇代のトレンチコートの刑事がひっくり返りそうな勢いで驚いていた。
ある意味で予想通りだが、極秘の特務機関であるP.C.C.Sについても警察はある程度把握しているらしい。戒斗としては半分洒落で、半分試す意味を込めて見せてやったのだが……どうやら、現場レベルの刑事でも多少はP.C.C.Sについて心得ているようだ。
そんなP.C.C.SのIDカードを見せられた刑事は、それこそ椅子から転げ落ちるレベルで大袈裟すぎるぐらいに驚いていたのだが。それと同時に、戒斗がアンジェと一緒に美雪を助ける行動に出たことに深く納得していた。
曰く『P.C.C.Sの職員なら、勇気ある行動に出られたのにも頷ける』だそうで。
とにもかくにも、そうやって刑事は色んな意味で納得してくれて……三十分ほどで簡単な事情聴取を終わらせると、そのまま刑事がまたパトカーで二人を家まで送ってくれた。
ちなみに――――これは完全に余談になってしまうが。夜遅くに突然、しかもパトカーで帰ってきた戒斗とアンジェを見て、二人の両親と……そして遥はぽかーんと大口を開けて唖然としていた。
当然の反応だろう。何せ息子と娘が突然パトカーをタクシー代わりにして帰ってきたのだ。二人の両親も、そして遥も。皆が皆、それこそ目が点になるといったレベルで困惑していた。
とまあ、そんなこともあったが。何にしても一日は徐々に終わりを迎えて、そうして――――今日もまた、夜は更けていく。
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