第一章:BLADE DANCERS/02
「でやぁぁぁぁっ!!」
神姫ヴァーミリオン・ミラージュ、基本形態のミラージュフォームに変身したアンジェが腰のスラスターを吹かしながら飛び、その勢いのまま脚のストライクエッジでコングへと飛びかかっていく。
「ゴオオオ!?」
そうしてアンジェが飛びかかり、横薙ぎの蹴りを繰り出してストライクエッジの刃で斬ってやれば、コングは身体から散る火花とともに苦悶の声を上げながら数歩後ずさる。
流石に硬いコングといえども、あそこまでの勢いを付けての攻撃はそこそこ効いたようだ。
「グルルルル……!!」
だが……それでも、コングに与えたダメージは微々たるもので。後ずさったコングはセラの前に着地したアンジェに対し、怒りを孕んだ視線を向けながら威嚇の唸り声を上げている。
「思ってたより、ずっと硬い……!!」
「アンジェ、邪魔しないで! コイツらはアタシが……!!」
「どう見たって無理だよ!」
シールド越しに叫ぶセラを、アンジェは叫び返して諭す。
「ッ……!!」
そんなアンジェにセラが歯噛みをしていると――――すると、彼女たちから少し離れた場所に蒼の閃光が飛び込んできた。
「ハァッ!!」
それは蒼と白の神姫、ウィスタリア・セイレーン……
やはり基本形態、セイレーンフォームで立体駐車場に現れた彼女は、手にした聖剣ウィスタリア・エッジを閃かせ、今まさに別の男性に手を掛けようとしていたホーネット・バンディットの動きを斬撃で以て制する。
「逃げてください、今の内に!」
そうして二度、三度と斬撃を喰らわせてホーネットを怯ませながら、遥は背にした男性へと叫び。するとその男性は「あ、ありがとう……!」と上擦った声で礼を言いながら、一目散にこの場から逃げ出していく。
「セイレーンまで……!!」
現れた彼女、神姫ウィスタリア・セイレーンを目の当たりにして、セラはまた歯噛みをし。そうすればホーネットから一度離脱した遥は二人の傍に、セラの傍に滑り込んで来て「大丈夫ですか?」と案じた声を彼女に掛ける。
「ッ……! アタシの邪魔をしないで!」
そんな遥に何故か頭にきてしまって、セラは荒げた声で叫びながらシールドを投げ捨てると……途端に重砲撃形態、ストライクフォームへのフォームチェンジを敢行する。
両肩に重粒子加速砲、腕甲にマシンキャノン、両腰に榴弾砲と、両太腿にミサイルポッド。そして両手に巨大なガトリング機関砲を携えたその姿は……こんな閉所、こんな至近距離では明らかに過剰威力としか思えないほどの重装備っぷりだった。
「全員纏めて吹っ飛ばしてやる……!」
そんな姿にフォームチェンジしたセラは、目の前に居る敵の群れを一気に薙ぎ払おうとしたが……。
「駄目です!」
しかし、横から遥がセラの右手首を掴んで制止する。
「邪魔しないでって言ってるのよ!」
「撃ったら此処が崩れてしまいます! そうしたら……どうなるかぐらい、貴女にも分かるでしょう!?」
普段の間宮遥からは想像も出来ないほど、普通なら絶対に出さないほどの強い語気で、彼女はセラを制止する。
「ッ……!」
そんな彼女の強い語気での制止に……彼女の、ウィスタリア・セイレーンの正体が間宮遥でないと知らぬセラも思わず
「でも、このままじゃ……!!」
と、二人でそんな問答を交わしている間にも――――彼女たちの後ろから、どこからともなく機関砲弾が飛び込んできた。
「っ!?」
それにセラが驚くのと同時に、少し離れた場所に立っていたコフィンが胴体を貫かれ、弾け飛んで爆散する。
これは……明らかに狙撃だった。
「カイト……!!」
セラが戸惑っている傍ら、後ろに振り向いたアンジェが嬉しそうな顔で彼の名を呟く。
それに反応し、セラもまた後ろを振り返ってみると。すると――――――。
「――――まずは、一匹」
この立駐の対面に建つ、別の立体駐車場――――そこで大型狙撃ライフルを構えた漆黒の重騎士、その姿をセラの金色の瞳が捉えていた。
――――ヴァルキュリア・システム。
P.C.C.Sの、篠宮有紀の作り出した人類守護の戦士。その漆黒の装甲に身を包むのが誰か……それを知らないセラではなかった。
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