第二章:大切なヒトたちの笑顔の為に/01

 第二章:大切なヒトたちの笑顔の為に



 ――――同じ頃。

 自宅マンションのベッドで横になっていたセラもまた、頭の中に鳴り響く甲高い感覚を……遥が感じていたものと同じ感覚を覚え、緩やかな眠りから目覚めていた。

「この感覚……まさかっ!?」

 セラが血相を変えてベッドから飛び起きると、同時に傍に放ってあった彼女のスマートフォンが着信音を鳴らし始める。

 有紀からの着信だ。セラは掴み取ったスマートフォンを耳に当て、彼女からの着信に応じつつ……そのまま自室を飛び出していく。

「有紀!?」

『その様子だと、当然ながら君も感づいたようだね。……お察しの通りだ。バンディットサーチャーが敵の反応を捉えた。セラくんは至急現地に急行。敵を確認次第、撃滅してくれ。場所は……敢えて教えるまでもないだろう?』

 ニヒルな笑みを湛えて言う有紀に、セラは「ええ」と電話越しに不敵な笑みで返しつつ。自室を飛び出した彼女はリビングルームにあるダイニング・テーブル、その上へ雑に放ってあったバイクのキーを掴み取ると、制服姿のままで家を飛び出す。

「今から出るわ。そう遠くない……すぐに現着できるはず」

『ああ、了解だセラくん。必要ならSTFに出動要請も出すけれど』

「必要無いわよ。却って足手まといになるだけだから」

『フッ、確かにそうかもだね。……何にしても、気を付けてくれ。任せたよセラくん、いいや……ガーネット・フェニックス』

「任されたわ」

 マンションの外階段を駆け下りながらセラは言うと、有紀との通話を切り。スマートフォンを制服ブレザージャケットのポケットに放り込みつつ、そのままマンション一階にある駐輪場まで向かう。

 そこに停めてあった自分のバイク――――彼女の髪色と同じ、真っ赤な二〇一五年式ホンダ・ゴールドウィングF6Cに跨がると、セラは鍵穴にキーを差し込んでキュッと右に捻る。

 メーターパネルの警告灯がイルミネーションのように明滅するのを見ながら、セラはそのままセルモーターを回す。キュルッとセルが回れば、胴体に鎮座した排気量一・八リッターの水平対向四気筒、フラット・シックスのエンジンが怪獣のような唸り声を上げて目覚める。

 その後でジェットタイプのヘルメットを被れば、セラは風よけのバイザーを下ろし。暖機運転も待たないままにギアを入れると、住み慣れた自宅マンションの駐車場を飛び出していった。

「……こっちか」

 疾走するセラの向かう先、それは敵が――――バンディットが現れた場所。

 その場所は……本当に聞くまでもなく、感覚で分かっていた。自分が何処へ行くべきなのか、そして何処で戦うべきなのか。何も聞かずとも、セラフィナ・マックスウェルは全て分かっていた。

 だからこそ、彼女は乗り慣れた大型のマッスルクルーザーをスロットル全開で走らせる。一秒でも早く辿り着くために、一秒でも早く……己が手で仇敵を撃滅するために。

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