17話 狼さんは寂しがり屋のようです!

 俺たちが町に戻ったころにはすでに日が暮れ始めていた。

それで俺たちはとりあえずレオンに今回の事を伝えるべく冒険者ギルドに向かった。


「お~いレオンはいるか!」


俺はそう叫びながら冒険者ギルドに入ったのだがその時周りの男冒険者を見て固まってしまった。

なぜなら男冒険者は、 全員髪型がモヒカンになっていたからだ。

ここは一体どこの世紀末だよ!


「いたぞぉぉぉぉ! いたぞぉぉぉぉぉ!」

「また新し女を連れてるぞ!」

「小指をタンスにぶつけて死ね!」

「全員で奴を捕まえろ!」


そう言った後男冒険者改めモヒカン隊は、 俺に一斉に飛びかかってきた。

そして俺もとっさのことで反応できず奴らにロープでぐるぐる巻きにされてしまった。

因みにその時エルザは、 地面へと落下し目を覚ました。


「おい! お前ら俺をどうするつもりだ!」

「早くこの男を裏路地へ連れて行くぞ!」

「HANASE!」

「俊! 夜暗くなる前には帰ってくるのよ!」

「何暢気なこと言ってんだよ! 誰でもいいから俺を助けてくれぇぇぇぇぇ!」


結局俺の叫びはむなしく俺は、 裏路地へと連れていかれた。

そしてモヒカン隊は俺の事を地面に思い切り叩きつけた。


「痛った! てめぇら! 一体これはどういうつもり……」

「黙れ! 今から貴様の裁判を行う!」

「は? 裁判? お前ら頭大丈夫か?」

「口を慎め!」


そう言ってモヒカン隊の一人が俺の頭を靴で踏んずけて来た。

こいつら調子に乗りやがってぇぇぇぇ!


「まず貴様の罪状は、 女の子と公衆の面前でイチャイチャしたことだ!」

「イチャイチャ?」

「と、 とぼけるな! 我らが女神ラピス嬢と手をつないでいたではないか! それにあの巨乳の女性とも!」

「待て待て! 確かにラピスさんとは手をつないだ。 あれをイチャイチャと言われても仕方がない。 だが! 千鶴とは違う!」

「嘘をつけ! あんな公衆の面前でSMプレイをしていたではないか!」

「そうだ! そうだ! 俺だってあんな美人にいじめられたいのにずるいぞ!」


今言った奴相当な変態だな。


「あれのどこがSMプレイだよ! あれは、 確実に拷問じゃないか!」

「うるさい! それに今度はあんな美幼女まで連れてきて! 貴様など死刑だ! 死刑!」

「「「「異議なし!」」」」

「ま、 待て! お前らは一つ勘違いしている!」

「「「「何をだ!」」」

「俺と千鶴は、 ただの幼馴染でやましい関係でもない!」

「何! あんな美少女と幼馴染だと! これはさらに許せん! おい! ゲイさんを呼んで来い!」

「ゲ、 ゲイさんって誰だよ?」

「ふふふ、 この町に住んでいる筋肉もりもりの男なのだが、 その人はゲイでな。 貴様みたいな若い男が大好物なのだ! ふはははは!」


なるほど! それはヤバいな! ハッハハ!

暢気に笑ってる場合じゃねぇ!

早くここから逃げないと俺の貞操が危ない!

何か! 武器はないのか!


「さあ、 ゲイさんの到着だ!」

「あらなにこの子。 ものすごく私好みだわ!」


そう女口調で言ったのは、 ドレスを着ていて顔には白粉を塗った化け物だった。


「来るな! 化け物! 俺は絶対にここから生きて帰るんだぁぁぁ!」


俺はそう叫んだ瞬間余程あの化け物に犯されることが嫌だったのか、 火事場の馬鹿力らしきものが発動し、 ロープを引きちぎった。


「よし! 後は逃げるんだよぉぉぉぉ!」

「奴が逃げたぞ!」

「捕まえろ!」

「「「「おお!」」」

「もう。 私は元気な子の方が好きよ」


そこから俺は、 奴らが諦めるまで裏路地で俺の貞操をかけた鬼ごっこをする羽目になった。

奴らは幸い夜になると諦めて帰っていった。


「ま、全く。 吸血鬼なんかよりあの化け物のを退治すべきだろ!」


さてと俺もそろそろ帰るか。

俺は、 家へと帰ろうと大通りを歩いていたのだが、 その時気分転換に空を見上げあた。

空には、 星がたくさんあり綺麗な三日月が出ていた。

どうやらこの世界にも月と星はあるようだ。

そして俺が星と月を見上げるのを止め、 正面の町の広場を見ると一人の白髪の美女が月を眺めていた。

そして俺はその美女をみて……


「よし! 帰るか!」


何も関わらず帰ることにした。

なぜ俺がこの選択をしたかと言うとその答えは言ったてシンプルで単純なことだ。

彼女は、 全裸だったのだ。

しかも、 背中にはとても大きな大剣を背負っていった。

あんなに美人なのに露出狂なのは、 色々残念だがあれに関わったら碌なことにならない予感がしたので帰ろうとしたのだが、 運悪く俺たちは目があってしまった。


「「あ」」


そして俺は気づかれた瞬間逃げようとした。

だがそれに対して白髪の美女は俺のチートステータスによって生み出される速さを上回る速さで俺に接近し俺の頭に思い切り噛みついた。


「痛い! 痛い! 離れろ!」

「がうっ!」


なんか前にもこんなことがあったような?


「お前は何故森に来なかったんだ! 暇なときに来ると言っていたではないか!」

「お、 お前もしかしてハクか?」

「そうだ! 全く。 それぐらい気づけ馬鹿者!」

「いやいや! わかるわけないだろ! それにお前とあってまだ一日しかたってないじゃないか!」

「私はお前が今日も来てくれるだろうとずっと待ってたんだぞ!」

「お前どんだけ寂しがり屋なんだよ!」

「うるさい! うるさい! うるさい!」

「痛い! 痛い! 痛い!」



結局俺はハクの気が済むまで頭を噛みつかれた。


「そういえばお前って人型になれるんだな。 それとお前メスだったのな」

「そうだ! 全く何故私がメスだとわからんのだ! 話方でわかるだろ!」


そう言ってハクはまた臨戦態勢に入った。


「お、 お願いだからもう噛みつかないで!」

「わかった」


俺が懇願するとハクは臨戦態勢を解いてくれた。


「それでお前はなんで全裸なんだ?」

「ん? そんなんもの服を持っていないからに決まっているだろう」

「恥ずかしくないのか?」

「全然」


そうだよね。

だってこいつ元は狼だもんね。


「あのな。 人間の世界では、 お前みたいな奴のことを露出狂っていうんだよ」

「そうなのか。 それは困るとな。 よし、 シュン。 私に服をくれ!」

「お前森に帰る気ないのかよ!」

「だ、 だって森だとシュンがいつ来るかわからないし、 それにお前がいないと寂しくて夜も眠れないんだ」


ハクは目を潤ませながらそう言ってきた。

止めろ! そんな目で俺を見るな!


「はあ~。 わかったよ。 お前の寝床は俺が何とかしてやる。 それと服については明日買いに行こうな」

「その言葉は本当か!」

「本当だ」

「ありがとうシュン!」


そう言ってハクは俺に抱き着いてきた。

てかこいつの胸よく見たら千鶴よりあるじゃねぇか!

その胸が今俺に押し付けられている!

や、 やばい!

鼻血でそう!


「いいから離れろ!」

「それでシュンは何処を寝床としているんだ?」

「ああ、 それはあるとっても優しい人の家で下宿させてもらってるんだよ」

「そうなのか。 それと……」

「ああ、 お前の正体については秘密にしといてやる」

「そうか!」


てかよくよく考えるとこいつをラピスさんの家に連れて行くのはいいのだが、 全裸の美女を連れている俺って絶対に変態扱いされるよね?

てか千鶴にばれたら絶対ヤバいよね?


「ん? どうかしたのか?」

「いや。 なんでもない。 そう言えばお前の背中に背負ってるのって……」

「ん? これか」


俺が尋ねるとハクは背負っていた大剣をブンブン振り回し始めた。


「これはあの森に眠っている聖剣で白狼剣ホワイトウルフだ」


何それ! てかやっぱりあの森。

〇いの森と同じで聖剣を隠していたのか!


「それはお前が使うのか?」

「そうだ」

「フェンリルの時はそれ使えるのか?」

「ん? 私本来の姿の時は口に咥えて使うぞ?」

「そ、 そうですか……」


なんか狼で大剣っていうとあのキャラを思い出して涙が出てくるな。


「シュン! そんなことより早く案内してくれ!」

「はいはい」


俺は、 ハクにそう言われ周りの人に見つからないよう裏路地を使ってラピスさんの家へと向かった。

はあ。 今日は本当に最悪な一日だよ……

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