短編小説置き場
ゆなか
片想い
……好きになった人に彼女が出来た。
同じサークルの年下の可愛い女の子。
ふわふわとした巻き髪に、パステルカラーの洋服がよく似合う、綿菓子の様な甘い香りのする女の子。
地味で平凡な私とは違う……誰から見ても可愛いと思われる女の子。
打算ばかりの私とは違って……駆け引きなんて一度も考えた事がなさそうな、ちょっとおバカさん。だけど、好きな相手に素直に甘えられる女の子だ。
だから、あの子が……あの人に選ばれた。
結局、私は始めからあの人の眼中になんか存在しなかった。
ただの同級生。ただのサークル仲間。ただの女友達の内の一人……。
だったら……始めから優しい言葉なんて掛けないで欲しかった。
『お前意外と可愛いじゃん』なんて……ニッコリ微笑まないで欲しかった。
『サークルの同期の中でお前が一番気が合う』だなんて……気を持たせるような事を言わないで欲しかった。
『俺、お前の事はずっと友達だと思ってるから!』
あの人に女だと思われていないことぐらい……本当はずっと分かってた。
いや……。
あの人は私の気持ちには気付いていたはずだ。
『私』は……あの子が構ってくれない時の……代用品。
……ねえ、私の気持ちを弄ぶのは楽しかった?
私があなたに話し掛けられる度に頬を染めていたことを……嬉しそうにしていたことに気付いていたよね?
だから、あの子を嫉妬させたいが為の……道具として利用し続けたのでしょう?
私を構うあの人の姿を、あの子は拗ねながら見ていたもの。
ああ、こんなにもズルい人だったんだ。
意地悪で……でも……すごく優しい人。
私は本当に……本当に大好きだったよ?
そして……好きな気持ちと同じくらい大嫌いだった。
でもね、もう良いんだ。
私の中でこの恋は終わった。
気持ちの整理はできた。
胃の辺りがフワフワして、キリキリして……ギュッと心臓が掴まれるようなもどかしい気持ちを味わうのは……もう終わり。
「……よし!」
熱いシャワーを頭から全身に向かって浴びながら、私はパンッと両頬を思い切り叩いた。
バスルームの中にある鏡には、まだ見慣れない自分の姿が写っていた。
胸元辺りまで長く伸びた黒髪をバッサリとショートカットにして、初めてカラーリングをしてみた。私をよく知らない人からすれば別人に見えるだろう。
新しく生まれ変わった私は、また新しい恋を見つける。
今度こそは、私を選んでくれる人を好きになれると良いな……。
過去の自分は綺麗サッパリ洗い流した。
今からは新しい自分だ。
「あっ……いけない。まだこんな所に残ってた」
私はふふっと笑いながら、ガラスに跳ねていた好きだった人の血痕をシャワーで流した。
……追い詰めた時のあの人の怯えた顔がとても可愛かった……。
『頼む!彼女だけは……!!』
懇願したあの人の顔はとても素敵だった。
だから、あの子から殺してあげたの。
心臓を一突き。それから、何度も何度もナイフを振り下ろした。
涙を流しながら瞳を見開くあの人の顔……ゾクゾクした。
これだから片想いは止められない。
ふふっ。ふふっ。
さあ、次は誰に恋をしようかな……?
*****
どうしてこうなった?!
私自身がびっくりです(^^;
『失恋』の話を描いていたのに……。
短編よりも詩に近いかもしれないです!
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