最高の結末
そしてミカは、排泄も済ませ、昨日、大量に自らに放たれた精がいまだに零れ落ちてくるのを丁寧に拭い、排泄物と汚水が入った桶は、朝食のトレイを取りに来た元奴隷の囚人に渡し、身嗜みを整え、この時点での最善の自分を目指した。
汚くみすぼらしい自分であっては、『ざまあみろ』と思う者もいるだろうが、同時に、『可哀想』と思われてしまうこともあるだろう。それでは駄目なのだ。
自分を憎む者達が溜飲を下げる瞬間は、ちゃんと用意されている。
ならばその時までは、多くの国民にしっかりと憎まれ続けなければいけない。
どんなに痛めつけても折れることのなかった、屈することのなかった、恐ろしく憎らしい<悪女>が、ギロチンで首を刎ねられて死ぬ。
まさに最高の結末ではないか。
それを実現するためには、自分は<可哀想な女>であってはいけないのだ。
こうしてミカは今日も<務め>を果たした。
一番手はやはり看守長だった。
「……お前、平気なのか……?」
昨日は<初日>だったこともあって希望者が殺到し、朝のうちから夜まで休みなく男達に嬲られ続けたはずにも拘らず、今朝も昨日とまるで変わらず平然としているミカに、看守長の表情は強張りさえした。
「……」
けれど、ミカは応えることなくするりと服を脱ぎ捨て、ベッドへと横たわった。
その姿に、看守長はゴクリと喉を鳴らす。
『いや……男なしじゃ生きられねえ<淫売>なら俺も何度か見たことあるけどよ、こいつはそういうのとは違う…まったく別の<何か>だ……
なるほど、こいつなら眉一つ動かさずに、泣き叫ぶ小娘をギロチンにだって掛けそうだ……』
そんなことを思いつつも彼女を抱くと、あたたかくて柔らかくて、包み込まれるような気さえした。
それを実感し、看守長は悟った。
『そうか……これが<神>って奴か……
人間とはまったく別の道理で成り立ってるものだ……
くっそ……俺達なんかじゃ太刀打ちできねえよ……』
と。
そうだ。この女は、いや、<これ>は、きっと、首を刎ねたとしても、<神代の国>とやらに帰るだけで、今、自分が抱いている肉の体も、結局は<
だから、どれほど男共に嬲られようと、ギロチンに掛けられることが決まろうと、こうして平然としていられるのだ。
などという考えが頭をよぎって恐怖さえ感じるのに、それなのに……
『ちくしょう…! 離れられねえ……っ!』
この女に包まれていること自体が<幸せ>で、離れたくないのだ。
それでも、何度か精を放てば、名残惜しさは強く残っても、どうにか体を離すことはできた。
『……この女は駄目だ……これ以上抱いたら俺はこの女のために命すら投げ出すだろう……
近付いちゃいけねえ……人間が触れちゃいけねえ存在なんだ……!』
こうして看守長は、二度とミカを抱こうとはしなかった。
もっとも、他の男達が彼女に溺れる分には、口出しすることもなかったが……
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