復興

ロイドニア領とルベルソン領での、それぞれの領民を入れ替えて仕事を行わせる試みは、非常に大きな効果を生んだ。


ロイドニア領民らによる宿場町の整備と運営についても、元のロイドニア領における宿場町運営で判明した様々な改善点をしっかりと取り入れて新たに作られたため、さらに良いものになったようだ。


また、ルベルソン領の農民らは、ロイドニア領の非常に良好な農地で耕作が行えるようになり、収穫量が跳ね上がって、借地料を払ってでもそれまでよりはるかに収入が増えることとなった。


さらには、難民として周囲の領地へと避難していたマオレルトン領民らの中で希望する者には、それぞれの農地や宿場町で働き、しかも定住することも認めたのである。


これによって労働力も確保。特に農地では生産性が上がったことでよりマンパワーが必要になり、働く意欲がある者については優遇されることとなった。


しかし、かつての<清貧な暮らし>を望みマオレルトン領への帰還を求めている者達については、そのまま<難民>としての暮らしを続けさせた。


事ここに至っても変化を拒むような怠惰な輩を、ミカは必要としていなかったのだ。


それでも、さらに数ヵ月後には、マオレルトン領での戦闘がいよいよ下火になり、なおもゲリラ的に身を隠して抵抗を続けるデヴォイニト・フローリア王国軍の兵士達が多少残ったものの、安全が確認された地域から<復興>が開始されることとなった。


なお、戦争中、マオレルトン領民らの住宅やマオレルトン卿の屋敷から、何者かの手によって多くの私財などが簒奪されたが、それらがどこに持ち去られたかについては杳として知れず、ほとんどすべて、取り返すことは叶わなかった。


後年、遠く離れた国の裏市場などでマオレルトン卿の屋敷にあった貴金属類などが売られていたなどという噂話がまことしやかに囁かれることになるのだが、それについてはもはや関係のない話なので詳しくは触れない。


いずれにせよ、かかる事態により、故郷への帰還を望んだ者達も財産の一切を失ったということになる。


これに対してミカは、元々住んでいた土地について国の側で買い上げる代わりに当面の生活費を渡すという政策を取った。


この時代、戦争などに巻き込まれてもその地の住人らへの公的な支援などあってないようなものだったために、マオレルトン領の領民達は、


「ありがたい」


と感謝したという。


しかしそれは、事実上、国による土地の接収であり、買い上げられた土地は商人らに売られ、商人らはその買った土地を自分達で再開発。多くは農地として、そこで耕作を行いたいと願う者に貸し出すことで利益を得るようになったのだった。


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