鹿の子まだらの根城より 短編集
姐御
恋と呼ぶにはあまりにも
あたしの胸には大きな穴が空いている。それは蟻地獄のように、
食欲。性欲。睡眠欲。その
あたしはあの時から空っぽになってしまったのだ。もうこの乾きを潤すことは出来ないのだ。
彼女に出会うまでは、そう思っていた。
肌は切り出したての水々しい木材のよう。瞳は彼女のお店の
彼女を作り出すために、山が自分達の身体を少しずつ寄せ集めたのだろう。そんな気さえした。
自分の世界が壊れる音がした。
彼女と顔を合わせる度に、新しい発見がある。
彼女と一緒にいると、ご飯の味が普段より美味しく感じる。
彼女といると、空気の匂いが鮮明になる。
この感覚は何なんだろう。
身体の芯がむずむずする。
もっと彼女を知りたい。だが、何故だか怖い。それでも手を伸ばさずにはいられない。
「今度の出張、あたしも一緒に行ってもいいかなぁ?」
勇気を出して、言ってしまった。少し体温が上がる感覚。心臓が踊る。
これは、この感情は何なのだろう。
いつかあたしに分かる時が来るのだろうか。
欲深いあたしは今日も笑顔で彼女と顔を合わせる。
ああ、その
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