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「いいじゃん、そういうの。かっこいい。」
彼とも彼女とも思い出せないそれは、そう言った。
今となっては、それの存在すら自らの想像上の存在なのではないかと疑うほど、その声の主に心当たりがない。ただ、その言葉のみが、度々頭の中でこだまするだけである。
僕は小学生の頃から浮いた存在だった。周りにどうしても馴染めなかった。馴染もうとすら、思わなかった。その姿勢を、周囲は痛い奴だと捉えた。確かに、一般的な人間が僕を見たら、あまりに機械的で、冷酷、言動もどこか思慮に欠けていると、詰るだろう。
いつかの僕は、その姿勢を折ろうとしたのかもしれない。その時、彼とも彼女とも知れぬそれが、その言葉を発してくれて、僕は今もあの時の僕のままでいられるのかもしれない。
いつかの僕は、孤独に耐え兼ね、精神疾患を患い、想像上に自らの形を維持するための偶像を創り上げてしまったのかもしれない。
もしくは、僕は何らかのショックで、記憶の一部が不明瞭になり、その際生まれた断片的な記憶の中に、そのような文言が入り込んだのかもしれない。
いくら思考を巡らせても、その答えは見つからない。自身のことなのに、見つからない。
その辺りが、やはり僕はどうもいかれているようだ。
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