単発集
Inertia
柔い身体
空に手を
絶え間なく流れ続ける血潮が、生を実感させる。
狭く薄暗い場所から出てきた身からすればこの晴れ渡る空は、ひどく空虚で眩しくてたまらない。
人は私のことを陰者、ひねくれものなどという。確かに、そういう点もなくはない。
それにしても、世の中はめまぐるしく変わっていくものだ。穏やかだったこのあたりの風景も、すっかり賑やかになり、往来の波に揉まれる。
世間体から浮いた私の存在など、風に吹かれて飛んでいく
手を翳す。相も変わらず私の血は流れ続ける。
___青い、私の血が。
___8本の腕の、根から先まで、吸盤まで満遍なく行きわたる。
___どす黒い感情を、スミとともに、真っ青な海へ。
___私は動物界、軟体動物門、頭足網、鞘形亜目、八腕形上目…
タコ目の、タコだ。
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