第十八話 ドラゴンとの戦い
「いやあああああああああああああ!?」
リュンの絶叫があたりに響き渡る。
「待ってろリュン!!今すぐ助けてやるからな!!」
「マサヨシさん!?口ではそう言いつつ振り返りもせずに全力ダッシュなのはどうしてですか!?よもやあたしを生贄にして逃げるつもりじゃないですよね!?体よく捕まってくれたぜラッキーとか思ってないですよねぇ!?」
「…………」
「なんか言えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇえ!!」
だが、リュンが捕まったとはいえドラゴンが俺を追ってくる足は止まる気配を見せない。どうやら二人まとめて食べないと気が済まないらしい。
「くそ、やるしかないのか……?」
「くそってなんですか!?くそってなんなんですか!?あたしの命がかかってんですよ!?ねぇ!?」
しかしどうする。
今の俺の手元にあるのはダイコーンとニンジーンのみ。
ニンジーンは使い物になるか分からないのでワンチャンあるとすればダイコーンソードだが、果たしてあのぶっとい脚を切ることなんてできるのか?
だが、もう迷っている時間はなかった。
背中に挿していたダイコーンを手に取ると、眩い生命の輝きとともにダイコーンソードに変わる。
相変わらず発生条件はわからないままだが、今はとりあえず変形してくれたことに心底安心した。
走るのをやめ、振り返ってドラゴンと相対する。
すると俺が覚悟を決めたことを悟ったのか、ドラゴンもリュンを口に加えたままその場で立ち止まった。
「マシャヨシしゃぁぁぁぁぁぁぁん……!あたしは……あたしは信じてましたよ……!正直今胸きゅんっきゅんしてます……!意味もなく惚れちゃいそう……!」
今もどうにかリュンを捨て駒にして逃げられないか考えてるって知ったらどんな顔するんだろう。
改めてドラゴンを見ると、その見上げるほどデカい図体に戦慄する。
いや、うん。これはさすがに無理じゃない?ダイコーン一本でどうにかできる相手じゃなくなくなくない?
斬りつけにいく→踏み潰される→dead end。だめだそんな未来しか見えない。
どうしようかまごついていたその時だった。
『貴様、普通の人間ではないな?』
聞いたことのない低音ボイスが聞こえてきた。
「あっ、い、息が、くすぐったい!ぬるい!こしょばい!あっ、いやっ、らめぇっ!」
見上げれば、悶えるリュンのその後ろ、ドラゴンの金色の瞳が俺を捉えて揺れていた。
どうやらドラゴンが喋っているらしい。
だが、言葉が通じるのなら話は早い。
「俺は至って普通の農民だ。食べても美味しくないぞ俺は」
「おかしいねぇ。わざわざ強調する必要ないですよねぇ。まるでマサヨシさん以外、つまりあたしは普通じゃないから美味しいって言ってるように聞こえるねぇ」
絶体絶命のピンチなのに元気だなぁ。
俺の言葉に、ドラゴンは愉快そうに笑った。
『グハハハハハハハハ!それほどまでに強い光を放つ武器を持つものが普通の農民であるはずなかろう。その光は、勇者のみが放つことのできる光。なるほど、貴様が今代の勇者だな?」
「だったら見逃してくれるのか?」
『何をふざけたことを。我は魔族に与するもの。敵を前にしてわざわざ逃してやるわけもない。それに、その様子だと未だ戦いには不慣れのようだ。若い芽は早いうちに積むに限る』
ですよねー。
どうやらドラゴンは戦う気満々らしい。
となればもう腹を括るしかない。
逃げても死、戦っても死なら、格好いい方を選ぶ。それがカブ村男児たるものの生き様である。いや死にたくはないんだけどね?
『ほう。力の差があると分かっていてもなお我に戦いを挑むの勢や良し。ならばこちらも本気で相手をさせてもらうとしよう!』
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