貧乏神
@koyoyo-we
第1話
今より少し前の話、女は至って普通の家に産まれた。幼稚園から帰ってくると母親は派手な化粧をしどこかへ出かけ、女は家にいる時間が退屈だった。いつも先に帰ってくるのは父親で、晩御飯がインスタントになるのは当たり前だった。それでも女は父親と過ごせる時間が幸せで、特に休日に遊びに出かけてくれたりした日々は数少ない童年の思い出だった。
しかし、転機は訪れた。小学生に上がった時、父親は重い病気になり、ほぼ植物人間状態だった。母親も酒とギャンブルに明け暮れてほぼ家には帰ってこなかった。お金を持っていた方でも無かったので、直ぐに女の家は貧しくなって、一軒家から汚いボロボロのアパートへ引越した。小学生ながらも配達やレストランの洗い物、家の家事をしていた女は、勉強をする暇など無かった。それでも給料はボロアパートの家賃を払うのがやっとで、学校では周りから貧乏神と腫れ物扱いを受けていた。余り容姿も整ってた方では無かったので、中学生に入るとさらに酷いいじめが起きてしまう。自殺を考えたこともあったが、父親の事を放っておけず、アルバイト漬けの中学生ライフを送る。3人は生活保護とアルバイトの金でどうにかやりくり出来ていた。女は出席日数は足りなかったしお金もなかったのでもちろん高校には行かなかった。中学を卒業すると女は未成年でも働ける水商売に手を出した。先輩からのいじめや同僚からの嫉妬も沢山あった、色んな気持ち悪い客も居た、だが女は諦めなかった。NO.1の称号を手に入れた時にはもう既に父親の治療代が集っていた。女は喜び震え、胸が弾ける思いで久方実家に帰ると、あのアパートに両親は居なかった。急いで父親に電話を掛けたが、出たのは母親だった。母親はいつになく真剣で女に、
「大変よ!お父さん緊急手術だって!今ちょっと遠くの大きい病院に居るんだけど、とりあえず振り込んでもらえる!?」
と、女は特に疑わず直ぐに銀行へ向かい、母親のカードに当時持っていた金のほとんど全てを、振込んだ。それから何度電話しても電話に出ず、3日が経ち流石に怪しいと思った女は、アパートの大家に聞くと、父親は3ヶ月前にもう亡くなっていたそうだ。亡くなったその日の夜に、母親は荷物を恰も最初から準備していたかのようにアパートを出て行った。家にあるお金全部と、父親の死んだ生命保険金と…。女は泣き崩れた。怒れる相手も友達も居らず、一人でボロアパートの前で泣き崩れた。大家に母親は何処へ行ったのか聞こうと思ったが、聞いたところで復讐しようと思えたわけじゃないし、もう放っておこう、と諦めた。
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