メラミ(青)
それは、俺が『筆頭勇者』となるきっかけの出来事だった。
半年ほど前、俺がちょうど19歳になった春だった。
その頃はまだ『勇者』という言葉が単語としては流行を始めるが、『魔物』というものを見たことのない人も大勢いた。俺もその1人で、高卒の新社会人として上京、今の事務所、当時はただの一人暮らし用のアパートだったそこの土地勘を養う為に行った外出中、それは見つかった。
ミケ猫の様な耳、ズボンからはみ出た尻尾を持つ少年だった。
風が吹けばまだ寒さの残る中、穴の開いたTシャツに半ズボン。顔についた泥を落とそうともせず背を丸めてとぼとぼと歩く姿が気になり、思わず声をかけた。
「居場所が、ないんです」
聞けば、両親の離婚を機に親族をたらい回しにされていたという。
その上、ある日『魔物』となってしまった事で保護責任がなくなり家を出されたのだという。
「それは……」
言葉に詰まる様な悲劇だったが、他人事とは思えなかった。
超能力が露呈する度に引越しを繰り返し、両親からは厄介者扱いを受けていた俺はいつ、彼の様になってもおかしくない。彼と俺の違いは国が化け物と認めているかどうかのただそれだけだった。
……助けたいとは思わなかった。
……助けられるはずがないと思った。
明日は自分の身に起こり得るかもしれない境遇だ。
いったいどうして彼を助けられる自信が持てるだろうか。
「もう、大丈夫だよ。ほら、この帽子をかぶって……尻尾はズボンに隠して、絶対人前では脱がないで……」
「ありがとうお兄さん」
俺は彼が『魔物』である事を伏せて孤児院に連絡をした。
その後、彼がどうなったかはわからないが、いつまでもそれを隠せてはいないだろうと思った。精一杯の行為だったが、罪悪感が芽生えた。その事はいつまでも頭の片隅から消えてくれなかった。
それからというもの、『目立たない事』だけを優先して選んだ単純作業の仕事をこなしながらも、夢見の悪い日々が続き、そんなある日に気がついた。
「そうか……善人でいようとするから辛いんだ」
その閃きこそが全ての始まりだった。
その日を境に悪夢は見なくなった。俺はあの少年にした件を上手く厄介ごとに対処しただけと思おうとした。化け物が化け物を救う道理など無いのだと言い聞かせる内に、そういう考えにあった抵抗さえ薄れていった。
これは、化け物の食い合いだ。
そして、俺がそれに勝っただけと割り切れた頃、SNSを使って『超能力』や『勇者』というカテゴリーで注目を集め、『天啓』を得たという『嘘』で『超能力を美化』する今の戦略を思いついたのだった。
とはいえ、SNSの反応は初めから好調とは言い難かった。
そもそもフォロワーもいない急造のアカウントだったし、超能力という見出しに反応はあったが、そのコメントはどれもが合成映像を疑う声でしかなかった。それを変えたのが、メラミこと芽良実の家を襲った魔物退治とその場に居合わせた野次馬が写した俺の姿だった。
……
「全然ダメだな……」
会社の定休日、日曜日だと言うのに開いたSNSには通知がない。
話題になる方法を考えると結局はそれしかない。『魔物を捕まれる』ことだ。当時流行していたもう一つの仕事、動画投稿者達もまた最近はその話題で持ちきりだった。彼らにとってそれは臭い食べ物を食べてみたり、踊ってみたりと大衆の気を引く行為の延長線にあり、魔物を捕まえてみたとか、飼ってみたという動画は既に数が多くあった。また、魔物には人権がない事で過激な行いが許され、エスカレートして炎上することも少なくなかったが、その結果、コンテンツの注目度自体は盛り上がる一方だった。
「魔物なんて、そう簡単に見つかるか?」
「……」
……簡単だ。俺ならば、だ。
例えば、サイコキネシスで自分の身体を浮かせて空から観察すれば一般人の数倍早く異常に気づく事ができるはずだ。
……ただ、抵抗はあった。
今まで人目につかない事を最優先にしていた超能力を公に使う事には不安は拭いきれない。ましてSNSの様な形で後悔することは失敗すれば日本に住むことも息苦しくなるかもしれない。
「いいさ……このままよりずっといい」
だが、隠れてこそこそ生きる。
常に負い目を感じ続けるのは億劫で息苦しい。
例えば、一般人が今日から両膝両肘を曲げずに生活しなさいと言われればどれだけのストレスがあるだろう。日々できる事は減るし、何より出来るはずのことを態々苦労しなくてはならないストレス。俺にとって超能力を使わないように気をつける生活というのはつまりそういう事だ。
「……決めたことじゃないか……」
アパートの塀を飛び越えサイコキネシスを発動する。
カンガルー男を浮かせた様に、自分の身体を宙に浮かせ、擬似的に空を飛ぶ。
俺はこの能力をサイコキネシス(念動力)と呼んでいる。
世間一般の認識と同じかは分からないが、サイコキネシスは小説などに登場する超能力では群を抜いて有名だ。諸説あるが定義としては触れずにものを動かす力でいいだろうか。敢えて詳しく言うならばスマホの画面に表示されるアイコンをタップして動かす様に現実のものを動かせる能力で、空間を切り取って動かす能力ではなく、脳の電気信号を支配して行動を強制する類でもない。
俺は今までに公に超能力を使ったことはない。
初めは制御が難しかったが、ぎこちなさが消えるまでにそう時間はかからなかった。
「はは……いい!! いいぞ!!」
空を滑走する開放感は凄まじい。
坂道を下る自転車の比ではない爽快感だ。全身に感じる風やその冷気さえもが新鮮で心地よい。地面をのそのそと歩くことしか出来ない連中の頭上をバイクにも迫る速さで飛び回る。
「最っ高だ!」
しばらくは雲に近い高さから街を巡り、その後は徐々に高度を落とした。
最後には電線と同等の高さを移動しながら街の異常を探したが異常は見当たらず、心配していた様な人に見られて大騒ぎになるといった事もなかった。皆スマホや本を見ていたし、そうでない人もほとんどが視線を地面に向けて歩いていた。
「地面なんか見て何が楽しいんだ?」
いや、楽しくないのだろう。
現実があまりにも楽しくないから何もない地面の方がマシなのだ。もしくはスマホに移る非現実や遠い世界にそれを求める。認めたくないが、そういう気持ちは分かる。
結局、その日には異常を発見する事は出来なかった。
翌日は超能力の使いすぎで寝込み、会社も欠勤してしまった。今まで使ってこなかったから知らなかったが、超能力は意外と疲労するものだった。特に目に疲れが出る。充血した目の写真を送信したおかげで上司からの苦情もなく、むしろ心配をされたくらいだった。
3日目からは超能力での探索は1時間未満と決めた。
生活に支障が出ない範囲で継続するのが賢明という判断だ。
そして更に数日後、俺はメラミに出会ったらしい。
……らしいというのは、俺はその時に出会った少女をメラミだったと認識出来なかったからだ。
夕食時の空は良い。
家の数だけの夕食の香りが空を踊っている。最近はこの時間を選んで空を飛ぶの事を気に入っている。
「……今日はカレーにしよう」
美味しい匂いに罪はないが、食欲が刺激されて過食気味になるのが悩ましいところだ。
「ん? あれは……」
それは、一目で分かる異常だった。
一軒家から吹き出す赤い火、黒い煙。
「火事か……」
俺は冷静だった。
常人にない力の使用を躊躇わなくなった事で、俺には常に余裕が生まれていた。慌てる事なく消防、救急を手配、その片手間にサイコキネシスで自分の配信動画用ビデオカメラ数台を現場に設置、舞台は整った。
俺は急降下し家屋2階の窓を突き破り、サイコキネシスで浮かせたカメラと一緒に火災現場への潜入に成功した。
「……」
若い、女性の部屋だろうか。
ベッド、大きなクマのぬいぐるみ、クローゼットに鏡台。……ハートが散りばめられたピンクのカーペットが災いした様だ。この部屋で1番よく焼けたドアからこのカーペットに引火したのだろう。大半が燃える床、黒煙の象徴する部屋には足を無くしたベッドと顔を失ったぬいぐるみが横たわり火の手が発生してからそれなりの時間が経過している事が分かる。
「誰か! 誰かいませんか?」
まずは取り残された人がいないかを確認。
返事はないが、おかしい。
「……」
これは事故じゃない。
放火、それに最低でも負傷者がいる。多数……そうでなければこの臭いは説明がつかない。
「いるんだろ? 出てこいよ」
「……」
返事はない。
だが、確信がある。部屋のクローゼットに向かいもう1度言う。
「そんなクローゼットじゃあ2人は狭いだろ?」
「……よぉく分かったね」
クローゼットが小さく開き、どこかなまりの残る男の声がした。
「下の階か? 血の臭いがここまで上がってきているんだ。事故じゃない事はすぐに分かるさ」
「臭いなんかするかな? 本当?」
「……」
教える必要は無いが、それはこの犯人が嗅覚疲労の状態なだけだ。
人はあまりに強い匂いが続く環境にいるとその臭いを感じる事をやめてしまう。犯人にとってこの血臭は既にそうなっている。血が流れてからそれだけの時間が経ち、下の階は鼻が狂うほどに多量の流血なのだろう。
……因みにクローゼットに隠れていたのは風で分かった。
よほど気になったのだろう。俺が背を向けたタイミングでクローゼットを丁重に押し、無音で開いて隙間を作ったのはいいが、その時の空気の揺れで火が僅かに揺らめいた事が決め手になった。
運が悪かったのだ。
微々たる変化だが、パイロキネシスの能力を持つ俺は火の変化には敏感なのだ。火事を俺に気づかれたのが既に不運だったと言っても良い。強いて謎があるとすればこの火事の中クローゼットに忍んだこの男はどうやって脱出する算段だったのかという事くらいだが、男の姿を見てすぐに理解する。
「鼻が良かった……でいいだろう? それより、出てこいよ」
「……」
「……ふぅん」
現れた男の姿を見て、納得した。
なるほど、脱出する気なんて初めから無かったのだ。犯人の目的は自殺、そして道連れだ。自殺の理由は恐らくその針金の様な剛毛に覆われた右腕だろう。まだ人間の左腕にはこの部屋の主人であろう気絶した女の子が抱き抱えられていた。
「何の魔物だ?」
「知らないよ。知る必要もないしね」
「……」
同情するつもりはないが、今の世は魔物になれば問答無用で人外になる。
税金の支払はいらなくなるが公共機関は利用できず、店に入ることもできない。動物愛護管理法にも適用されない意味では待遇は動物以下で、駆除を担当する『勇者』や面白い動画目当てに捕獲を企てる『動画配信者』などにつけ狙われるのだから生きるのを諦める選択を間違いとは言えない。
「どうして、この家を選んだ?」
「この家……いつも笑い声が聞こえんだ。この子のお父さんはカレーが好きで、この子と2つ下の妹とお母さんの3人で作んだ。どうだ? 信じられない様な幸せな家だろう? 最高だろ? 汚すなら、綺麗なものの方がいいだろう? なあ? そう思うだろ? なぁ?」
笑った。
信じられない事に男はそう言って心の底から笑った。気を失っている女の子を放り出して腹を抱えて笑う。俺は怒りというより、不快感を感じた。
「自殺志願者じゃあ……殺しても罰にもならないな……」
「あぁ、もう満足した。君が殺してくれるなら、それでいいよ」
「……そうはいくかよ……」
サイコキネシスで少女を俺の背後に逃し、部屋の火を集めて作った炎の縄で犯人を包囲した。
「なんだよこれ……殺してくれんの?」
男は、俺の超能力を見ても驚くこともなく不満を口にした。
だが、これでいい。不愉快だが、この男は殺しても罰にならないし、俺本来の目的である動画配信としても残酷なシーンは望ましくない。
「……警察を呼んだ。……正しく裁かれろ」
……
数分後には消防車が到着したが、そこに火はなかった。
火事の火は全て俺が消した。それは俺の超能力、パイロキネシスならば簡単な事だ。パイロキネシスといえば発火能力として有名だが、俺の場合は発火、温度調整、操作、火に感覚を投影するなど様々に応用が効く。今回の火事の消化も俺に言わせれば火の温度を可能な限り下げ、水場に運んだだけだ。
その数分後、救急車が到着した。
彼らは気を失ったままの女の子を病院に連れ帰る為、サイレンを鳴らしたが、その救急車が一階にいる者を乗せる事はなかった。
さらに数分、やってきた警察に犯人を突き出した。
警官は罪を問えない魔物に戸惑い、火の縄を操る俺に戸惑っていたが、上司に判断を仰いだところ犯人の願いは叶うことになった様で、その為の場所へと運ばれていった。
数日後、俺の動画は大きな反響を呼んだ。
ただそれは、超能力の存在、勇者の話題性以上に魔物の恐怖と、自殺志願者への死罪の意味という議題が討論の的となったことによる効果だった。
「僕はこれからも魔物と戦います。勇者として……これは天啓を得た僕の使命です」
動画の結びになったその言葉も次第に注目された。
連日テレビ局がうるさく騒ぎ、勇者エニスのデビューは最高の滑り出しを見せた。肝心の天啓の件も世間は上手く鵜呑みにしてくれた。
それからの日々が一変した。
仕事を退職してテレビ出演、どこから嗅ぎつけたのか灰崎(偽名)が参入を志願し、数回にわたる魔物との戦いに圧勝。時には握手会を開き、CMのイメージキャラクターを務める多忙な日々だった。
……
そうして忙しなく3ヶ月が過ぎた夏だった。
その日は大型デパートで開かれる俺の握手会だった。白い敷布に包まれた横長の折りたたみテーブルの向かいに立った青い髪の少女はどこか興奮気味に息を吐きながらこう言った。
「やっと……会えました。あなたのためなら私……なんでもします!!」
「……え?」
俺は営業スマイルのまま凍りついた。
身に覚えはないが、そのセリフや表情には情欲的な如何わしさがあり、ディレクターの目を見ると、その目は(昔の女? お前さ……自分の立場分かってる?)という言葉が明確に浮かんでいるが、本当に、まるで身に覚えは無く、俺はただ全力で首を振った。
そんな事、するわけが無い。
今は俺にとってこの上なく大事な時期だ。俺の世間でのキャラクターは好青年であり、恋人はテレビの前のみんなであるに越した事はない……という考えは些か古いかもしれないが、その方が無難ではある。
「あー、その……名前を教えてもらってもいい……カナ?」
「あっ!! 失礼しました。私、芽良実です……貴方が助けてくれた火事の……」
それが、メラミとの出会いだった。
あの時は緊張していたのだろうか、俺は彼女が名乗るまでそれに気づかなかったし、あの火事の中で出会った少女の髪の色は今も思い出せない。
「その……すいませんでした」
「いやー、問題ないよ。むしろ君があの火事の少女? これは良いネタだ。最高じゃないか!!」
「……芽良さんだったね、大丈夫かな? このディレクター、視聴率が絡むと鬼なんだ」
「いえ……私は、大丈夫です。エニスさんのお役に立てるなら嬉しいくらいで……」
結果から言えば、彼女は優等生然とした模範的な良い子だった。
一度は撮影中止の危機となり緊急CMを入れる事態だったが、彼女があの火事で俺に助けられた少女だったと説明した事で(俺の事はまったく信じなかったくせに)ディレクターは信用してくれた。それどころか、容姿的にも絵になる芽良をディレクターが気に入り、翌日の生放送に対談のコマを急遽組みこむほどだった。
「明日……ですか?」
「都合悪かったかな?」
予定を聞いた俺とディレクターに芽良は困った様な顔を向けた。
「あの、エニスさんのお役に立てるなら……ただ……」
「よぉし、決定だ。すぐにスタジオを空るよ。今の君たちの番組は何より数字が稼げるからね!!」
「……え、あの……」
この時、俺はまだ彼女の事を詳しく知らなかった。
知っていればこんな事は起きなかった筈だ。
「あの、エニスさん……」
「ん?」
芽良は言いにくそうに顔を赤め、もじもじとした態度で俺の耳をねだり、息のかかるような距離で言った。
「その日なんですが実は……下着が……赤の日なんです……」
「は? ……え?」
まずは、聞き間違いを疑った。
しばらく考えて、もう一度聞き間違えがないか思案した後、顔を赤らめる彼女を見て、聞いた。
「……下着?」
彼女は小さくうなづき、両手でスカートの裾を抑えた。
……
俺はその日、出会い頭の彼女について3つのことを知った。
彼女は良い子ではあるが、気弱な性格でトラブルを招きがちな体質であること。そして口下手な事だ。俺は彼女の意味不明な下着の悩みを聞き出すべく何度かの質疑を重ね、ようやくさきほどの怪発言の真意を理解した。
「……つまり、多重人格か。で、その引き金が下着の色?」
「はい……」
芽良は一連の会話中ずっと顔を赤らめていた。
初対面だったこともあり、もはや彼女の平常の顔色を忘れそうだったが、それはともかく、彼女は下着の色に合わせて人格が変わるらしい。
彼女の体質はあの火事が原因だという。
長くなりそうな雰囲気を察し、俺は彼女とディレクターを握手会会場にある応接室(と言ってもソファーと机のある小さな個室)に集めた。
「その日、青の下着をはくことはできないのか?」
「私達は表に出る日を決めていて……赤は約束を破ると、すごく怒るんです……」
赤、その人格は青の芽良とはまるで対極で粗暴な印象を受けた。
大問題だと思った。
しかし、ディレクターは会話に何度も【下着】や【はいた】という言葉が飛び出す事に対してそんなもの放映できるかと腹を立てると当日の処理を俺に丸投げしてしまった。(だからあのディレクターが担当だと放送事故が起きるんだ)
「俺としては明日は出来れば君、えっと青の君に会いたいんだけど、彼女を説得する事は出来ないのかな?」
「難しいと思います……ついこの前の事なんですが……私が赤の日に間違えて青の下着をつけてしまった翌日なのですが、ごめんさないという書き置きをして赤の下着をはいた翌日、目が覚めると……」
「目が覚めると?」
先を促すと、芽良は今までで1番の躊躇の後に言った。
「全裸でグラビアのポーズをした写真がテーブルに並んでいて、置き手紙に【次ローテドジったらSNSにこれを流す】と……」
「怖……え? 脅迫……いや、自分の身体か……」
「……スマホの暗証番号も変えられていて、あの時は許してもらうのに1週間かかりました」
「……」
それは、俺からみると一見1人2役の滑稽な喧嘩の様ではあるが、思い返しただけで彼女は深いため息を吐いた。その姿を見ればその苦労(やや自業自得ではあっても)はうかがい知れる。そして、粗暴な印象を受ける赤という人物に会うのは少々気が滅入ったが、会わなければ分からない事もあるだろうと自分に言い聞かせた。
「その赤の芽良と話すことはできるかな?」
「……赤への手紙も用意しますので少し、待って下さい」
「ああ……」
(今、持ってるんだな……赤の下着……)
……
青い芽良は席を経つと着替えに向かった。
そんな事があるのか。下着の色で人格が変わるなど、普通はすぐに信じられることでは無い。だが、俺もまた普通ではないのだからそれを頭ごなしに否定なんて出来ないとも思った。
「待たせたな!」
「あ……あぁ」
行き丁寧に閉めたドアを勢いよく開け、彼女は帰ってきた。
(あぁ、なるほど。赤か……)
帰ってきた芽良は態度が一変しただけでなく、髪も赤く変色していた。
そして、青の芽良が選んで着ていたのだろう裾も短くないスカートが太ももまでめくれる勢いで足を組み、俺と目が合うといたずらな笑みを浮かべた。
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