第22話
「何様?
お前は自分が何を言ってるのか分かっていないみたいだな。」
俺はわざと立ち上がって見下ろした。
「どういう意味だよ?」
「俺は自分が仕事をしてないクセに逆ギレして自分の会社に迷惑をかけていることすら気付かないようなこんなバカと一緒に居て、まともな仕事が出来るとは思わない。
なので、今回の話は白紙に戻させてもらう。」
俺は力強くマネージャーを睨みつけた。
「何言ってんだよ、会社は関係無いだろ?」
「まだ分からないのか?
お前は何故、今ここに居る?
お前は誰から給料を貰ってる?
これでも会社は無関係か?」
「……だからって。」
マネージャーは周りの状況が少し見えたのか、また顔色が真っ青に。
「…もういい、木ノ下やめなさい。」
谷プロの社長が話を制止した。
「…ですが。」
「木ノ下!
やめろと言っている。」
社長はマネージャーの肩に手を置き、首を横に振っている。
社長は俺の方に向き直すと
「この度は不快な思いをさせてしまい、大変申し訳ありません。
黙って聞いていましたが、此方には弁解の余地もございません。
ただ、温情の余地が御座いましたら、白紙は撤回して頂きたい。
その為なら、どんなペナルティでも受ける所存です。」
社長は俺に深々と頭を下げた。
マネージャーは社長の態度にオロオロとしている。
「お前は社長の態度を見てどう思う?」
「大変申し訳け無く思っています。」
「何に対してだ?」
「俺の言動で社長に迷惑をかけてしまった事にです。」
「……浅いな。
社長、白紙は撤回します。
ただしペナルティとして、こいつはこれから外に出す事を禁じます。
マネージャー業から外し電話番だけさせなさい。」
「ありがとうございます。」
社長は首の皮一枚繋がった事に安堵の表情を見せた。
「木ノ下、分かったな?
分かったら、退室して事務所に戻りなさい。」
社長が木ノ下に退室を促した。
「失礼します。」
木ノ下は言葉少なく頭を下げ、トボトボと歩き会議室を出た。
「お前の言った『浅い』とはどういう意味だ?」
ヤノマンが俺に聞いてきた。
「多分、アイツは反省はしてない。
ただ、表面上を繕っただけだ。
反省して、何が悪くて社長が謝ったかを考えれば誰に対して謝らなければならないのか分かるはずだ。」
「なるほどな。
お前に対して最後まで謝罪は無かったし、この場に居合わせた人に迷惑をかけた事も謝罪すべきだよな。
特に白紙に戻されれば被害を被ったのは萩原さんだからな。」
「まぁ、良いだろ。
テストは不合格だと分かったし。」
「テストとは何ですか?」
社長は訳が分からなくなっている。
「後で説明しますね。
あと、俺は本気で白紙にする気は無かったので社長は気に病まないで下さい。」
「とにかく、うちの木ノ下が皆さんに御迷惑をおかけしまして申し訳ありませんでした。」
『コンコン』
ドアをノックして課長が会議室に入ってきた。
後ろには玲香が立っている。
「失礼します。
今、通路で谷プロ様のマネージャーさんとすれ違いましたが。
俺は悪くないとか、辞めてやるとか言いながら血相を変えて歩いてました。
あいつムカつく、ぶっ殺す等の暴言も吐いていましたが…
何かあったのですか?」
「大した問題では無いです。」
リクが答えた。
「なら良いのだが…
高城君に呼ばれたとの事なのでお連れしたが。」
「玲香!
何故お前が?」
谷プロの社長は急に現れた愛娘に驚きを隠せない、しかも高城に呼ばれたと言う。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます