道玄坂戦記
@leon729
第1話 紡がれる歴史
「道玄坂戦記」
第1章 「紡がれる歴史」
美咲は不機嫌だった。
今日美容院で染めた髪の色に、どうにも納得がいかない。
(サティったら・・・なんでこんな色にしたのよ)
担当の若い美容師に、いつも通りの明るい色で、と頼んだのだが、何故か今回は暗い色に染められてしまった。
サティ「ほーら、美咲ちゃんには絶対こっちのほうが似合うよ」
などとサティは言っていたが、夜からの出勤さへ無ければ、染め直しさせていたところだ。
今も気になって仕方ない美咲は、さっきからずっとサイドの髪を目の前に持って来てはため息をついている。
トモ「どーしたの美咲ちゃん、険しい顔して。なんかあった?」
ヒロ「そーだよ美咲ちゃん、笑って笑って!せっかくの可愛い顔がもったいないよ」
席についている客のトモとヒロが、不機嫌を隠そうとしない美咲に話しかけてくる。
すかさず、
トモ「おーい、コメちゃーん!ヒロがなんか言ってるぞー」
トモはわざとらしく、席についているキャストのコメに告げ口をしてみせた。
コメは髪をポニーテールに結び、パッと見は女子高生に見えなくも無い可愛らしいキャストで、ヒロのお気に入りだった。
コメ「え?何?ヒロさん、なんて言ったの?」
ヒロ「ごめんなさいっ| コメちゃん、ダメな僕を罵ってくださいっ」
トモ「おいおい、コメちゃんの罵りはタダじゃねーよ。そうだヒロ、フルーツ頼めフルーツ」
と、お決まりの流れではしゃいでいると、席に近づいて来たボーイがトモに耳打ちをする。
チャオ「お待たせしましたトモ様。詩音ちゃん空きましたが、どうします?」
トモ「お、待ってました!詩音ちゃんのお歌聴かないと帰れねえからなぁ」
詩音・・・トモがいつも本指名するキャストである。
歌姫を目指す、と自称するだけあり、とても歌が上手くノリも良いため人気があり、ようやく今も前の指名が終わってトモの席にやって来た。
トモ「詩音ちゃんお疲れさま!待ってたよ」
詩音「ごめんねー トモさん。お待たせしちゃって」
ヒロ「詩音ちゃーーん!ねぇねぇいつもの歌って歌ってぇ」
詩音が加わり盛り上がっている中、顔こそ笑っている美咲だったが、心の中は空虚な気持ちでいっぱいだった。
自分には本指名で来てくれる客が居ない。
みんな自分の事を可愛い、面白いと言ってくれるし、フリーでついた客から嫌な事を言われたことも無い。
出勤率が高いせいもあるが、常に売上もトップの座をこの店「wakuwaku」のNO.1キャストであるコマと争っている。
だが何故か、美咲じゃないとダメだ、と言ってくれる客が居なかった。
(フクちゃん・・どうしてんだろ・・・)
以前にひとりだけ、美咲を本指名で通ってくれる客が居たのだが、その者は普通の会社員であり、
飲み代が負担になったのか長くは続かなかった。
自分は誰にも必要とされていない。
ずっと昔から囚われている虚無感を今また美咲は感じていた。
そんな美咲の様子に気づいたのか、同僚のコメが話しかけてくる。
コメ「美咲ちゃん大丈夫ー? 元気ない感じするけど? あ、そう、見て見てー!この前実家帰った時の写真」
コメは性格も良く、入店が同時期なのもあり、美咲が唯一気を許しているキャストだった。
以前に一度、牧場を経営しているコメの実家に遊びに行った事もある。
美咲「え、見たい見たい! あ、おうまさんだー!」
コメのスマホに、1頭の雄馬が映っている。
コメ「うんうん。なんか、美咲ちゃんにめっちゃ懐いてたもんなぁ。でもなぁ、もうええ歳やから、次に帰った時には会われへんかもやねん・・・」
美咲「そうなんだ・・・」
美咲はこの馬が好きだった。
コメの実家でこの馬に触れた時、何故か無性に懐かしい気持ちになり、ずっと撫でていたものだ。
美咲「おうまさん・・・」
もう会えないのか、としんみりとした気持ちでスマホを眺める美咲の隣で、人の気配がした。
この店の№1キャスト、コマだ。
コマは隣のテーブルに腰掛けたが、すぐ隣にいる美咲と目を合わそうともしない。
コマと美咲は犬猿の仲だった。
確かに売上を競っているライバルではあったが、そういった事情以前にどうにも気が合わない。
コマとは過去に何度も
美咲「今日も、ゼロさん?」
コマの太客、ゼロリス。通称ゼロと呼ばれる男だ。
コマ「・・・そうね」
美咲「羨ましいわぁ、いいお客さんがついてて」
実祭、コマの売上は大半がゼロに拠るものだった。
コマ「そうね。でも・・・今日で終わりかな」
美咲「・・・え? どうゆうこと?」
が、コマは答えない。
その時、突如けたたましい音が鳴り響いた。
火災報知器だ。
トモ「おい、なんだ?訓練か?」
詩音「え?聞いてないけど?」
ヒロ「おいおい、マジかよ」
コメ「とりあえず、みんな逃げよ!」
美咲も立ち上がり皆に続こうとしたが、何故か隣にいるコマは動こうともしなかった。
美咲「なにやってんの!逃げるよ?」
コマ「・・・無駄よ」
美咲「無駄?」
コマ「そうよ・・・。さよなら・・・美咲」
美咲「・・・え? 何言っての?? 意味が・・・ゴホッ・・」
すでに店内に煙が入り込み始めている。
淡い灰色の煙に包まれながら何故か満足そうに、コマは微笑んでいた。
ミクオは憂鬱だった。
昨日から一睡もしていない。
言問通りの、とある交差点。赤信号で車を止めた今も、昨夜からの事を思い返している。
さっきまでアヤが座っていた助手席には、今は誰も居ない。
連日残業続きでヘトヘトだったところを、昨夜突然アヤから呼び出され、車を飛ばし会いに行った。
責められ、泣かれ、謝られ、最後に、今までありがとう、と言われ、アヤは去って行った。
ミクオ「はぁ・・・どうしてこうなんだろ、俺」
いつしか辺りはすっかり明るくなっている。
アヤの事を考えモヤつく気持ちが今まで眠気を忘れさせていたが、このまま徹夜明けでまた仕事かと思うと、さすがに睡魔が襲ってきた。
ミクオはドリンクホルダーからモンエナの缶を取ると、残っていた中身を飲み干す。
仕事に関しても、どうも今ひとつ意欲的になれない。
任務には精一杯取り組んで来たし、以前は可愛がってくれる上司もいた。
だがその恩人も退職してしまい、新しい上司は仕事は丸投げ、成果は横取り、尊敬なんてする気にもなれない。
「お前は凡人で終わる男ではない」
そんな事を、幼い頃から可愛がってくれている叔父、海老原から言われた事も有るが、
これからどう生きて行けばいいのか、何をすればいいのか、まるでわからない。
(なんか、どうでもよくなって来たなぁ・・・)
考えるのが面倒になったミクオに、
( ˘ω˘ ) スヤァ…
ネタロウは浮かれていた。
夜中の配送も問題無く終わり、今日から非番。家に帰ってゆっくり休み、起きたら愛娘のマトと遊ぶ約束をしている。
マト「わーい、パパありがとう!
ルン⋆⸜(* ॑꒳ ॑* )⸝ルン 」
欲しがっていたスプラトゥーンを買ってやった時の、マトの嬉しそうな顔が思い出される。
(マト・・・上手くなってるかな)
そんな事を考えながら、ネタロウはトラックを走らせていた。
自宅までもう少し、言問通りの交差点に差し掛かったところで信号が黄色に変わるが、
これなら充分渡りきれそうだ、と少しアクセルを踏む。
だが、思いもよらぬ事に交差点の中央、高架の橋桁の影から、突然乗用車が飛び出して来た。
運転席には、若い男がハンドルに突っ伏しているのが見える。
居眠り運転だ。
「馬鹿野郎!何やってんだ!」
避けきれない。ネタロウは必死にクラクションを鳴らし続ける。
「はっ・・・」
けたたましいクラクションの音で、ミクオは我に返る。
だが、気づいた時に右の窓から見えたのは、こちらに向かってくるトラックのフロントマスクだ。
「・・・えっ?」
清らかな空気、時折吹く心地よい風。
柔らかな日差しの下、木々の枝から聞こえる小鳥のさえずり。
およそ不快とは無縁な心地良さで、この場所は満たされていた。
「・・・で、あなたはいつまでそこでサボっているつもりなのですか・・・」
迷惑そうな顔で女が呟く。
およそ人間離れした、非の打ち所のない美人である。
「ぇー、いいじゃん、たまにはのんびりしても」
問われた女が気だるげに答える。
こちらも美人だったが、先程の女とは異なり、親しみを覚える人間らしさがある。
女はテラスのチェアに腰掛け、おにぎりせんべいを食べながら雑誌を読んでいた。
女神イブメルと、この場所に留まる死者、ショコラである。
イブメル「ここにずっと居ても、幸せな恋は見つかりませんよ?」
ショコラ「はあぁぁあ? 現生に居ても見つからないんだけど?」
イブメル「それはやり方がまずいのでは?」
ショコラ「何言ってんの? だいたい何よあれ。ライブ配信やればモテる、稼げるって言うからライバーやったのに、そんなにギフト貰えないわ、逆にこっちは知り合いのとこで投げるわ、で結局赤字だし、男のリスナー来ても、ひたすら謎いコメントする人とか多いし・・・」
イブメル「ちょっと、いいんですか?そんな事言って。またフォロワー減りますよ」
ショコラ「・・・」
イブメル「ホント、いい加減挫折する度にここに来るのやめてください。私忙しいんですから。お願いですから、早く現世に戻って・・・」
ショコラ「戻ってもさ、どうしようもなくない? いい男居ないし・・・」
イブメル「そうでしょうか・・・素敵な殿方はいらっしゃると思いますけどね・・・」
ショコラ「うーん・・・しばらく恋愛はいいかなぁ・・・ごめん、ここでゆっくりするわ・・・。おーい、ミィタちゃーん、おにぎりせんべい無くなったわ。ポテチ持ってきてー!」
イブメル「ちょっと、ミィタを自分のオカンみたいに扱うのやめてください。可愛い後輩なんですから」
ショコラ「あれ?ミィタ居ない?」
イブメル「あら?そう言えば」
ショコラ「まあいいや、そう言えばさ、あんたミィタに仕事の引き継ぎしてるって言ってたけど、なんでなの?なに、女神やめんの?(笑」
イブメル「フフフ・・・やっと聞いてくれましたね?」
ショコラ「なに、気持ち悪いんだけど」
イブメル「遅いですよ、言いたくてウズウズしてたのに・・・。辞めませんよ!なんとですねぇ、じゃじゃーん!産休です!」
ショコラ「え・・・産休?」
イブメル「そうなんですよー!主神で在らせられるアルカン様の御子を授かりました?」
ショコラ「主神って、一番偉い神様ってこと?」
イブメル「そうです!アルカン様は全知全能の神です!パソコンには特に詳しいです」
ショコラ「いや、最後の情報はいらないけどさ・・・。ん・・・? 待って。主神ってからには、あんたもその人に雇われてる感じ?」
イブメル「まあ、人では無いですけど、そうなりますね」
ショコラ「変なこと聞くけど、あんたさ、産休明けたら、どうなるの?」
イブメル「それは、お仕事に復帰でしょうねぇ」
ショコラ「ふーん・・・」
イブメル「ん・・・?何ですかその、奥歯にキットカットが挟まったような言い方」
ショコラ「え?あんたもキットカットとか食べるの?」
イブメル「・・・甘いものには目がないんです・・」
ショコラ「へぇー。 いやぁ・・・さっきの話ね、その主神さん?あんたをちゃんと養う気は無いんだなぁ・・・って思ってね」
イブメル「え? あ・・・」
ショコラ「そっか・・・ふーん」
イブメル「・・・なんですか?」
ショコラ「ぅーん。ちょっとだけ、あんたと仲良くなれそうな気がしてきたわ」
そんなやり取りをしているところに、庭園の門から、可愛らしい女性がこちらに近づいて来る。イブメルの後輩、女神ミィタだった。
ショコラ「ミィタたーん!待ってたよぉ(><) アタシ、ポテチが食べたいのぉぉっ!」
ミィタ「ちょ、でけえ声出すなって。あぁ・・・だりぃぃぃ」
ミィタは手に持っていたペットボトルの水を喉を鳴らして飲んだ。
ショコラ「うわ、酒くさっ・・・」
イブメル「・・・。ミィタ・・・また貯蔵庫の飲み物を勝手に飲みましたね?」
ミィタ「うっるせぇ・・・いいじゃんよぉ、酒飲むくらいしか楽しみ無いじゃんここ」
イブメル「貴女には、ここヴァルハラで死者の魂をサポートするお仕事が有るのですよ? ちゃんとして貰わないと困ります」
ミィタ「はあああああぁあっ? てめぇじゃん、貴女にピッタリです!ってそそのかしてアタシを女神にしたの。確かにアクアのコスプレはやりたいって言ったよ? でも、ずううううっとアクアじゃん、他の服ねーじゃん」
イブメル「いいじゃないですか、良く似合ってますよ?」
ミィタ「でもここ、男居ねえじゃん!見せる相手居ねええし」
イブメル「たまに若い男性の魂も来るでは無いですか。」
ミィタ「はぁっ?来てもすぐにどっか行っちまうじゃん」
イブメル「困りましたねぇ、意欲的にお仕事して貰わないと、私が産休取れないじゃないですか・・・」
ミィタ「それだよそれ!なんなん?自分だけちゃっかり男作って!あ、そうだ、アルカンっていい男なんでしょ?今度紹介してよ」
イブメル「ちょっと、何言ってるんですか!」
その時、イブメルに付き従う天使のヴィヴィがやってきてイブメルに告げた。
ヴィヴィ「イブメル様、下界から一人、訪問者が来ました」
イブメル「え?」
ショコラ「ほぉー、自分以外でここに来る人、初めて見るなぁ」
ヴィヴィ「どうしますか?ここに連れて来ます?」
イブメル「ヴィヴィ、下界から来たのは、男ですか?女ですか?」
ヴィヴィ「男です。若くて、割とイケメンかな?」
イブメル「通しなさい」
ショコラ「おい!顔で選ぶのかよ!」
イブメル「産休ですので、本来私は働かなくてもいいのです。気が向いただけです」
ショコラ「あんた、ある意味正直だね・・・」
しばらくして、ヴィヴィが一人の若者を伴い戻って来た。
イブメル「あら、結構タイプかも。貴方、お名前は・・・?」
連れて来られた男は今の状況を飲み込めて居ない様子ながら答える。
ミクオ「俺ですか? ミクオって言いますけど、どこですかここ?あなた方は・・・?」
イブメル「私は女神イブメルです。あなたを守る為に来ました」
ショコラ「おいおい、アタシの時と扱いが違いすぎるだろっ!」
イブメル「あれからアップデートが有っただけです」
ショコラ「はぁ? まあいいや・・・。アタシはショコラ。アンタの先輩・・・なのかな?」
ミクオ「先輩・・・?」
イブメル「ミクオ・・・残念ながらあなたは死んでしまったのです。ここはヴァルハラ、選ばれた魂が訪れる場所です」
ミクオ「死んだ・・・? そうか・・・トラックが迫ってくるところで、そこから何も・・・」
イブメル「可愛いそうに・・・」
ヴィヴィ「それは、トラウマになっちゃいますね」
ミクオ「今のトラウマって言葉の出だしだけでも、ビクってなっちゃいます」
ヴィヴィ「あはは」
ショコラ「ねぇ、ミクオくん」
ミクオ「はい?」
ショコラ「・・・トラック(ボソッ」
ミクオ「ひぃ」
ショコラ「www」
ミィタ「ショコラ、ダメじゃん(><)からかっちゃー!」
ショコラ「ごめんごめんw」
ミィタ「大丈夫ですか?ミクオさん・・・でも・・・トラック(ボソッ」
ミクオ「ひぃ」
ショコラ「おいミィタwww」
ミィタ「ごめんごめんwww」
イブメル「あなたたち・・・いい加減になさい」
ヴィヴィ「ホントですよー!」
イブメル「話を戻します・・・ミクオ、ここヴァルハラに運ばれた魂は、望むので有ればもう一度現世をやり直す事ができます」
ミクオ「えっ?」
ショコラ「なんかさっき、イケメン以外は断ろうとしてなかったっけ?」
イブメル「そこも含めて、ここに来れた者です」
ショコラ「・・・・・・」
イブメル「では確認しますね? ミクオ、もう一度人生をやり直したいですか?」
ミィタ「え?ちょっと待って!アタシの時は選択権無いって言ってたよね?」
イブメル「・・・そんな事言いましたっけ?」
ミィタ「言ったよ!アイドルになりたい!って言ったのにダメだって。どうせなら女神に生まれ変われ、とか言われた気が・・・」
イブメル「あ・・・今、お腹で赤ちゃんが動きました」
ミィタ「誤魔化すなっ」
イブメル「で・・・ミクオ、どうしますか?やり直しでも、規定の通りに時期を待っての転生でも、好きなほうを選んで構いません」
ミクオ「・・・はい」
ミクオは悩んだ。
転生?
まったく違う人生を最初から?
やり直し?
毎日夜中まで働いて、あげくは彼女に振られ・・・またそこからやり直す?
最後の夜、アヤから言われた言葉を思い出す。
アヤ「ミクオは優しい・・・凄く優しい・・・仕事してる私の事も考えて、夜中に起こしちゃいけないって思ってくれてるのもわかるわ、でも・・・」
アヤ「たとえ5分でもいいから会いたいって・・・たまには言って欲しかったの・・・」
アヤ「・・・きっと・・・ミクオは、本当に私の事を好きじゃないのよ・・・」
(なんだよそれ・・・俺はアヤの事だけ見てきたぞ・・・本当の好きって、じゃあなんなんだよ・・・)
イブメル「ミクオ・・?聞いてますか・?」
ミクオ「あ、はい・・・」
イブメル「では、どうしますか?」
ミクオ「俺は・・・」
イブメル「返答をどうぞ」
ミクオ「やり直したいです」
イブメル「元の自分のままやり直す、で良いのですね?」
ミクオ「はい」
イブメル「わかりました。では、ミィタ」
ミィタ「ん?」
イブメル「この者にふさわしい試練を用意してあげてください」
ミィタ「お? 了解っす!」
ミクオ「試練・・・?」
イブメル「そうです試練です。通常の転生であれば、自ずと全てがリセットされますので不要ですが、やり直しの場合は死んだ事実を強制的に無かった事にする為、その資格が有るのかを問われる事になります」
ミィタ「アタシの時には選択の権利自体無かったけどね・・・」
イブメル「これから、ミィタが用意する舞台で試練を受け、見事クリアすれば合格。元の人生をやり直せます」
ミクオ「クリアできなければ?」
イブメル「またここに戻って来るか、そのまま消滅するかですね」
ミクオ「・・・」
イブメル「ではミィタ、あとはお願いね」
ミィタ「うぃっす! ミクオさん」
ミクオ「はい」
ミィタ「ミクオさんには、これからあるステージで、ミッションクリアを目指して闘ってもらうことになるわ」
ミクオ「え? 戦闘ですか・・・苦手だなぁ」
ミィタ「そうみたいだね。だから、今回のステージは、代理戦闘形式のモノを用意してあげるね?」
ミクオ「代理戦闘?」
ミィタ「うん。ステージに出ると、ある者があなたのパートナーとして現れる。その者と力を併せ、ミッションをクリアしてね」
ミクオ「ある者・・・?」
ミィタ「うん、どんな者かは会ってみないとわかんないけど、パートナーの強さには結構バラツキが有ったりするの」
ミクオ「そうなんだ」
ミィタ「破格に強いパートナーに当たると、ほぼ勝利確定な時もあるしね」
ミクオ「強い人に当たりたいですねー」
ミィタ「どんなパートナーに当たるかは、運と、あとは縁かな?」
ミクオ「・・・縁?」
ミィタ「そう、縁。パートナーとして出現するのは基本、英霊と呼ばれ、歴史上活躍した国王だったり英雄だったり、中には思想家だったり、そういった者達が選ばれるんだけど、その者達と血縁や信仰等の縁があると、召喚される時の選定要素となるの」
ミクオ「そんな英雄との縁・・・俺には無さそうですが・・・」
ミィタ「縁は今更どうにも出来ないけど、運はある程度なんとかなったりする」
ミクオ「え?」
ミィタ「ミクオさん。さっきいじめたお詫び。私が女神の祝福を与えてあげる。これでアンタの運が一時的に800%上昇するわ やったね!」
ミクオ「すご・・・」
ショコラ「( ゚∀゚)・∵ブハッ!! チートかよ」
ミィタ「ではミクオさん、準備は良い?祝福を与えた後、すぐに貴方をステージに移すよ」
ミクオ「え・・・」
ショコラ「ミクオくん、私も1度そのステージやったけど、敵つえーから気をつけてね・・・」
ミクオ「・・・わかりました。なるようになれです。いつでもどうぞ!」
ミィタ「いい覚悟じゃん。じゃ!」
ミィタはミクオの額に手を乗せ、祈りを捧げはじめる。
心地よい温かさに包まれながら、ミクオの意識は薄れて行った。
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