チーレムなんてぶっ潰してやる!

邪道ムーン

幼馴染み二人……

「ねえ、カツミ。どんな職業になるかなぁ」


 ソフィアが屈託の無い笑顔で話しかけてくる。

 大事な幼馴染みの女の子。ド田舎の村で生まれ育ち、生まれた日が近くて同い年の子も他に居なかった僕らは、いつも仲良く一緒に居た。

 成人したら結婚しようって約束もしてるんだぜ。言わせんな恥ずかしい。

 いや、誰も聞いてないって? 聞いてなくても声に出して言いたいわマジで。


 僕らは今、隣村の教会に来ている。

 今日は成人の日。それは神様から祝福を受けて職業を賜る日であるんだ。

 近隣の村から同い年の子が祝福を受けるために集まっている。


「そうだなぁ、家の仕事に関係する職業だと嬉しいかな。でも戦闘職でも良いなぁ。そしたら冒険者になっても良いしね」


 僕らの村は軍馬を育てる名産地で、村人の多くがそれに関係した職に就いている。

 僕の家はお祖父ちゃんもお父さんも軍馬を調教している。ソフィアの家は厩舎の管理をしてる。


 別に賜った職業に絶対に就かなければいけないということも無いけど、自分の適性、才能を現しているので、その職業を活かす人が殆どだ。

 職業が木こりなのに、魔法使いを目指しても仕方がないって話だね。


 職業を賜るとその職に関するスキルを使うことが出来るようになる。戦士なら武器を扱うスキルとか、魔法使いなら属性魔法とかのスキルがあるらしい。



「もし冒険者になったら村を出ていっちゃうの?」

「旅をしたり、迷宮都市に行って大冒険するのは憧れるよね。あ、でもその時はソフィアも一緒に行こうね」

「良かった。置いて行かれるのかと思っちゃった。そうだよね、ずっと一緒だもんね」

「結婚しようって約束したしね」


 心配そうに聞いてくるソフィアは、僕の言葉に安心したのか見とれるような笑顔を返してくれた。

 かわいいなぁ、こんな子と僕は一緒にいるんだなと、改めてソフィアと両想いな事を神様に感謝した。


 僕には年の離れた兄が居てるので、自分の将来は村に残ろうが、町に出ようが好きにして良いと親に言われている。


 ぶっちゃけソフィアと一緒に居られるなら何でも良いんだけどね。


「ね、昨日の夜に言ってくれた事、もう一回言ってよ」

「今ここで? 恥ずかしいよ」

「良いじゃん、言ってよお願い」


 本当に恥ずかしいので彼女の耳許で小声で言う。


「神様に誓うよ。ソフィア、君だけをずっと守り続けたいって。だから僕と結婚して下さい」


 ソフィアは言われた台詞に、僕はこんな所で言わされた事で、お互いに顔が真っ赤になった。

 毎年、プロポーズの言葉を言わされるんだけど、毎回違う台詞を考えるのも難しいんだよね。ソフィア的にはこの台詞が一番お気に入りらしいけど。


「おぉ~い、イチャイチャするのは良いがそろそろ成人の儀式が始まるぞ」


 僕らの付き添いで一緒に来ていた父親が冷やかしてくる。

 ちょっと恥ずかしい。お互いの両親と一緒に来ていたのを忘れてた。


 いつの間にか祭壇上に、司祭様が来ていたらしく、徐々に集まった人達が静かになっていく。


「それでは成人の儀を今から執り行います。成人した皆さんは祝福を授かり、神から一人一人に適した職業を賜る事となります。祝福された職業に恥じない様に、これからしっかりと生きていける様に私の心からの祈りを……」


 司祭様の言葉に合わせて、僕も祈りを捧げる。

 祈り続けていると、今までに聞いたことの無い、厳かというか神秘的というか、形容出来ない声が聞こえてきて、僕の職業を教えてくれた。

 これが神様の声なんだろうか。


 僕の職業は飼育士らしい。僕と意思疎通を交わす事が出来る生物を、望むように成長を促せるらしい。なるほど、家の仕事にぴったりだわ。


「これで祝福は為されました。成人した皆さんには神の御加護があらんことを」


 司祭様のお言葉の後、ここら辺一帯を治める代官様からの有難いお言葉を頂戴して、成人の儀式は終了した。

 あとは自分の職業を、待機してる役人に報告して帰るだけになる。


 役人に報告しないといけないのは、レアな職業持ちを領や国で囲みたいからだと思う。


「ソフィアの職業は何だった……どうしたの?」


 横にいるソフィアを見ると泣きそうになっている。


「どうしよう……私賢者なんだって……」


 彼女は賢者という魔法を使う職業を賜ったらしい。

 古今東西のあらゆる魔法を使える超レアな職業。そして、勇者のお供として魔王と戦った英雄の職業でもある。


 オーケー、落ち着け僕。まだ慌てる時間じゃない。

 魔王が復活したなんて話は聞いた事無いし、勇者も現れたなんて噂も無い。


 ソフィアの呟きを聞いた親たちも唖然としている。


「賢者ってあれだよね。私……勇者のお供にならないといけないのかな」

「だ、大丈夫だよ。へ、平和な世の中なんだからお供とか無いって」


 僕がソフィアを宥めていると、父親が取り敢えず報告してこいと言ってきた。

 ソフィアが自分の職業を役人に報告すると、てんやわんやの騒ぎになった。


「そ、それは本当かね! 嘘じゃ無いだろうな? 代官様と司祭様に報告をしないと。君、少しここで待っていなさい」


 慌てて走り去っていく役人を待っていると、しばらくして代官様がお呼びだと別室に連れて行かれた。当然僕らも付いて行った。


 それに引き換え、自分の職業は飼育士だった。

 親はこの村の特産でもある軍馬の育成を生業にしているので、この職を賜った僕を喜んでくれたけど、彼女が心配な僕は喜べなかった。

 戦闘職で彼女に付いて行きたかった。


 だけどそうして日が経ち、田舎者の僕たちは知らなかった

先だって勇者は異世界より召喚されていて、迎えに来た勇者に付いてソフィアは村を出て行った。

 彼女からは、一月に一通の割合で手紙が届く。

 彼女の近況が書かれているので、手紙を読む度に安心する。

 しかし、一年が過ぎた頃、段々と手紙の内容が変化していく。


『勇者が馴れ馴れしくて嫌だ』

『戦うのが怖い。早く帰りたい』

等と書かれていたのが、

『ミツル君』と名前呼びに変わっていたり

『ミツル君のアシストをして、魔王の幹部を倒した。最近、連携が上手くいって嬉しい』と戦闘にも意欲的になっていたり、手紙が送られてくるのも二、三ヶ月に一通と少なくなり、半年に一通になり、今では全然届かなくなった。


 ある時、軍馬を納品する為に王都に行った際、嫌な噂を聞いた。

 勇者と王女、剣聖、聖女、賢者がデキているという噂だ。

 信じたくない。嘘だと思いたい。だがその他にも勇者はお手付きの女を増やしているという話も聞いた。

 かなりの好色であるらしい。

 そんな男に幼馴染みが奪われたなんて許せないと、怒りで気が狂いそうになる。


 やがて魔王を討伐したと知らせが村に届く。

 彼女が帰ってくる。

 彼女は自分との関係をどうするのだろうか。

 彼女は自分の元に戻ってくるのか、それとも捨てられてしまうのだろうか。

戻ってきた場合、僕は彼女を許せるのだろうか、それとも……







 深夜、誰かが家を訪ねてきた。


「いらっしゃい、別に来なくても良いのにこんな遅い時間にどうしたの?」


「別に来たくて来た訳じゃ無いわ」

僕の言葉が気に入らなかったのか、少し怒りながら幼馴染みが答える。


「じゃあ帰れば良いじゃないか。僕は用はないよ」


 僕は嘲る様に笑い、彼女を貶める。


「だって……」


 彼女の声は小さく顔は悲壮感たっぷりだった。


「何しに来たか、僕にホントのことをはっきり答えるんだ」


躊躇いながら彼女が答える。


「カツミ……抱いて……欲しいの」

「……聞こえないなぁ。誰が誰をどうして欲しいの?」


 泣きそうなのか、瞳を潤ませて彼女は僕が求める答えを絞り出す。


「来たくないなんて嘘……ご主人様……私にも……ご主人様の雌奴隷にお慰みを……与えて下さい」

「勇者様は良いのかい?」


 激しい僕の責めに、縛られたまま気を失ってしまった王女殿下の頭を撫でながら、僕は彼女に問う。


「剣聖に今日の伽を代わって貰いました。じゃあ私がご主人様に会えないって彼女は怒ってたけど……私もう我慢できないの。ここ最近ずっとご主人様にお預けされてて気が狂いそうなの」

「僕は君を寝取られて気が狂いそうだったよ」

「それは……ご主人様がそうしろって言ったんじゃない!」


「聖女様はどうしてる?」


 聖女は先日、勇者の子を懐妊したと国中に知らせがあった。


「つわりが始まったみたいで大変みたいよ。勇者様の御子だということにしてるから大事に育って欲しいって嬉しそうに笑ってたわ」


「剣聖も昨日、僕に早く子供を身籠りたいって懇願してきたよ」


 寝取らせってどんな気分なんだろうと思って彼女にやらせてみたけど、大概頭にきたので、仕返しに王女、聖女、剣聖を寝取ってやった。

 三人とも初めては僕だったりする。

 もちろん幼馴染みも魔王討伐の旅に出る前から僕とそういう関係だ。恋人だったんだから。

 田舎の村人なんだから貴族と違って婚姻前からでも関係を持ったりする。楽しみも少ないしね。

 飼育士の職スキルである<調教>スキルが人間にも効くなんてびっくりしたけど、しっかりと飼育調教済みで出荷してみた。

 勇者が持ってると云われる<魅了>スキルに対してどうなるかと少し心配だったけど、そんなのは杞憂だったみたい。

 旅の途中で幼馴染みの転移魔法で一人ずつ僕の家に招待? 拉致? された勇者パーティーの女……雌ぶ……ゲフンゲフン、雌豚はしっかりと飼育調教してあげたんだよね。

だから今では全員が僕に従順になっている。

あ、手紙が届かなくなったのは<転移>スキルを覚えたからで、直接会えるんだから要らないよねって話ね。


 勇者にはこのまま托卵された僕の子を頑張って養って欲しいと思う。

笑えるわー。あんなにどや顔で幼馴染みを寝取ってやったぜって態度だった勇者は、僕の子だって知らないんだから。

 まぁ、勇者の妻と呼ばれてる四人以外の子は僕は手を出してないから、探せば勇者のホントの子はいるんじゃないかな、知らんけど。


「まぁ、気づかないとは思うけど勇者よ、地獄を楽しみな」

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