光の旋律

 記憶の宮殿の廊下。

 ドアの一つ一つから声が聞こえる。その声は歪に重なり合い、おぞましい響きを含んでいる。


「あらあら、適当に詰め込んだ感じね。バースくんの記憶じゃないものも混ざっている……アレシャンドラって娘の記憶が散らばっているわね」


「さすがは仙人。なんでもわかるんですね」


「まあ、長いことこの世界にいるからね。知識が多いってだけよ。さて、掃除を始めましょうか」


 レティの指が空を切る。

 ドアが一斉に開いたかと思うと、光が廊下を照らした。

 光は球状だったり糸状だったりと形状は様々。レティが指揮を執るように指を振ると、光は廊下を飛び交い次々にドアの中へと吸い込まれていく。これはこっち、あれはあっち、といった具合に。

 しかし、不意にレティの動きが止まった。


「あら? あなた……この世界の住民じゃないのね。別の世界の記憶は断片的なようだけど」


「はい?」


「いえ、なんでもないわ。続けましょうか」

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