命燃やして

 遠隔からの狙撃。ハンドガンの連射。

 同時に操作する銃は四挺。消費する精神力は計り知れない。それでも、俺にはまだ余裕があった。

 ウェイズリーとは一定の距離を保っている。というより、やつはあえてこちらに近付いてこなかった。俺の精神力が尽きる時を待っているのだろう。

 俺はスナイパーライフルでの狙撃を止め、ハンドガンのみの攻撃に切り替えた。

 依然として鎧は壊れない。

 焦りはなかった。あの時、俺は焦りに押し潰された。だから、負けた。

 もちろん戦闘能力はウェイズリーの方が上。この距離では勝ち目なんてない。

 だが、俺には秘策があった。命を賭けた馬鹿らしい秘策が。

 確実ではない。それでも俺は自分を信じている。


「バース、君は勇敢な戦士だ。だが、それだけで勝てる世界ではない。とどめだ」


 ウェイズリーとの距離が縮まる。レイピアのリーチに入る。

 瞬速の突きが放たれた。

 レイピアの切っ先は俺の心臓めがけて飛び、皮を裂き肉を断つ。

 魔眼をもってしても避けられない。


 ――命ならくれてやる。


「終わりだな」


 心臓が串刺しにされる。全身の力が抜け落ちる。


「三度目はない。永遠に眠りたまえ」


「それはどうかな」


 レイピアが心臓から引き抜かれた瞬間、俺はウェイズリーの腕を掴んだ。

 間髪入れず拳を鎧へとぶち込む。

 避けようがない渾身の一撃。

 ついに無敵の鎧に穴が穿たれた。魂の一撃は心臓をも抉り潰した。


「がはぁっ……! な、何故……」


「文字通り命を賭けたのさ。安らかに眠れ、ウェイズリー」

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