九死に一生
目を開けると、夜空の星が視界いっぱいに広がった。
俺は屋上に倒れていた。その傍らにはチェリーコードが座り込んでおり、片手は固く繋がれていた。
折れたはずの腕が動く。チェリーコードが治してくれたのだろう。繋がれた手に少し力を入れる。
「バース……?」
「ああ、生きてるよ」
チェリーコードは目に涙を浮かべた。顔がくしゃっと歪みかけたところで、俺は慌てて起き上がった。
「な、泣くなよ。ほら、おかげでこの通りなんともないから。ありがとな、チェリーコード」
「よかった……全然起きないから死んじゃったかと思った……」
「心配かけたな。それにしても、あのリバースとかいう男、一体何が目的だったんだろう? 尋常じゃない殺意だった。あいつも俺と同じバーサーカーなのか」
「そうみたいね。目的はわからないけど、バースを狙っているのは確かよ。ねぇ、逃げましょう? またいつ襲われるかわからないわ。今回は運がよかったけど、次は本当に死んじゃうかもしれないわ」
「逃げても無駄かもしれない」
「どうして?」
「見つけるのが早すぎる。ある程度目星をつけていたにしても、このビル群の中からピンポイントで俺たちを見つけるなんておかしい。リバースには何か能力があるのかもしれない」
同じバーサーカーでも、俺が得意とするのは遠距離、リバースが得意とするのは近距離。奇襲を仕掛けられたらこちらが圧倒的に不利だ。俺たちを瞬時に発見したからくりを解かなければやられてしまう。
一発でも攻撃が直撃すれば互いに終わり。近接格闘はリバースの方が上手。そうなると、やはり遠距離から狙撃するのが最善策だ。
問題は、次の襲撃をいかにして凌ぐか、だ。リバースの能力がわからない限り再会は避けられない。
思案を巡らせているうちに、どっと疲れが押し寄せてきた。
「すっかり暗くなったな。早く宿屋で休もう」
「そうね。私も疲れたわ」
「ところで、いつまで手を繋いでいればいい?」
「ああっ、ごめんなさい!」
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