@tEN
吐息が極端に熱く感じられるのは、自身が長い時間休んでしまっていたからかもしれない。眠りたくて眠いっていたのか、眠ることしかできなかったのか、眠らされていたのかもわからない。記憶の
再生されたのは街灯の下、逆光に照らされてまともに顔が判別できない自分に跨る人物の姿だ。しかしその映像再現はシルエットに留まり、人相は明らかではない。
しかしそのあと、何か言われたことは認識している。
それが、ものすごく懐かしく、ものすごく大切なものの再生であることが脳裏に浮かぶことで、マイナスだけだった記憶の性質がぶれていく。
輪郭が滲み、想いが入り混じっていく。
たくさんの後悔と、たくさんの憎しみと、たくさんの愛情と。
圧倒的な、絶望。
それらがコントラストの強いグラデーションを形成していったように見えた世界は、まるで一生抜け出せない檻のようにも思えた。
だから思う。
いつか、きっとここから抜けだしてやる。
そして思う。
いつか、きっとここから助けてあげる。
そんな希望を持っていた心は、与えられ続ける絶望に光を根こそぎ奪われて、どんどん痩せ細る。
その結果が、傷であり、抱いてはいけない、逃げ場としての想いだった。
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