お話しと詩、短編集

とろん

第1話 2014年に書いた「勝手にジブリ」シリーズより

勝手にジブリの題名を借りて物語を作るシリーズです。



紅の豚


「飛べない豚は只の豚だぜ」

彼はそう言うと大空へと飛び立っていった。


彼はしがない飛行機乗りだった…。

毎日田舎の空港でお客さんを乗せ遊覧飛行…。

それが彼の仕事だった。貧しくても愛すべき仕事…そう思ってお客さんが来れば大空を飛びまわっていた。


あの戦争が始まるまでは…。

体重は重かったが飛行機の腕が一流だった彼は真っ先に徴兵された。

その腕前で次々と敵を打ち落とすも、戦局は日に日に劣勢…本国まで爆撃がくる様になった…。


彼の腕前は一流だった。だから、最後まで残った…。

仲間はどんどん死んでった。



もうどうしようもない状況でこんな命令が下るようになる「爆弾を抱えて敵艦に体当たりし、御国の為見事敵艦を撃沈させるのだ!!」

勇ましく声を荒ぶる上官どのは飛行機には乗れない…。


今、70年後を生きる私は彼に想いを馳せる。

彼は何を守りたかったのだろうか…?御国…?いやちがう。愛する人?家族…?。


それは…彼にしかわからない。



最期の出撃の日。


「飛べない豚は只の豚だぜ。」

彼はそう言って大空へと飛び立っていった………。

悲しみのない大空へと…。

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