幽咲の桜火 ~近衛伝~
東風
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いろは
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その少女の眼前には業火がそびえたっていた。炭に焼かれた肉の
・・・・
「・・君が近衛君じゃな。」
少女は仄かな木の香りが漂う執務室の中に居た。目の前で鎮座する白髪の老人にやや圧倒されてこそいたが、背筋を伸ばし、冷静に
「ええ、そうですが。」
分かったような事を聞くな、と言わんばかりにその鬱色に染まった瞳を老人に向ける。老人はその目をあわれむように見つめ返し、こう言った。
「えーと、自己紹介がまだだったのう、儂は
「・・はい、よろしくお願いします。」
少女はその「よろしく」の意味をあまり良い意味とはとらえていないらしい。わざと目をそらし、頭を下げたのだから、芳泉にもその不機嫌さはよく伝わったことだろう。
「・・まあいい、単刀直入に言うぞ。」
「はい。」
少女は多少の身構えを見せたが、どうせ「いつもの」だろう、と思って翁の方を軽蔑するような目で見つめた。しかし、芳泉の言葉は彼女が予想していた「それ」とは全く違っていた。
「仇。」
「え?」
「親の仇だ、取りたくないか。」
・・・・
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