第37話
「ということなんだけど」
「な、なるほど……」
ユウマたちが洞窟で得た情報、および資料や薬、加えて犯人の一味であるローブ男ことマルク。
これらを並べられたため、マリアスは信じざるを得なかった。
「わしのほうも結果がでたぞい。二人の話にあったとおり、あの周辺で原因不明の病気で倒れているものが何人もでておる。そして、患者のいる家はここになる」
タイグルが印をつけた地図、そしてユウマが洞窟で手に入れてきた地図。
双方を並べてみると、印がかぶっているのがわかる。
「これは……確実なようですね」
マリアスも証拠が揃ったことで、状況を認め動くことを考える。
「これさ、俺が持ってきたほうのこの丸。タイグルが調べて来た方にはないよな?」
いくつもの丸の中で、唯一タイグルの調査ではひっかからなった家がある。
「ふむ、わしが尋ねた時には特別具合の悪い者はおらんかったがのう。みんなピンピンしておった」
「なるほど……リリアーナ動くぞ」
「わかりました」
ユウマが立ち上がり声をかけると、リリアーナが続く。
「えっ? ど、どういう?」
「ふむ、つまりその家が次に狙われるということじゃな。ならば、わしも行こう」
驚くマリアスに対してタイグルはすぐに状況を把握し、彼らに続く。
「マリアス、お主は万が一を考えていつでも動けるようにしとくんじゃ。下手したら街に被害がでるかもしれん」
タイグルは部屋を出る前にそう言い残していった。
そこからは一言もしゃべらず、三人は走って目的の家へと向かう。
地図は三人とも頭の中に入っており、タイグルに至っては件の家を訪ねている。となれば、迷うことなく最短で向かうことができた。
「それでは、何かあればまたよろしくお願いします」
その声は目的の家から聞こえてくる。ちょうど誰かが家から出てくるところであり、その声は彼らのものだった。
ユウマはその男たちの様子を見て、彼らがマルクの言っていた仲間だと判断する。
一人は剣を持っており、一人は槍を持っており、一人は口元が隠れる服を着ており、最後の一人は胡散臭そうな笑顔を浮かべていた。
「リーダー……」
ユウマがボソリと呟くと、男たちがピクリと反応する。
「カーズ、ソード、スピア……」
更にあだ名を続けることで、彼らの動揺を誘う。
「なるほど、あなたたちは我々のことを知っている。そういうことですね」
リーダーが笑顔をたたえたまま確認をする。
カーズ、ソード、スピアの三人は既に戦闘態勢に入っていた。
「そういうことだ。”展開、石石石”」
間髪入れずユウマが石を戦闘態勢の三人に向かって放つ。
勢いよく射出された石だったが、ソードは剣で、スピアは槍で、カーズは杖を使ってそれを防ぐ。
「おやおや、いきなり攻撃をしてくるとは物騒ですね。というのは冗談がすぎますかね。まあ、あなたがたが何者かは知りませんが……ふりかかる火の粉は払わせてもらいましょう。いけ!」
リーダーが命令すると、ソードがリリアーナに、スピアがタイグルに、そしてカーズがユウマへと向かってきた。
「殺すなよ」
この注意をしたのはユウマである。
力量を知っているリリアーナはもちろん、これまでの実績を聞く限りタイグルも相当な実力者であると思われる。
ならば、小悪党程度がなんとかできるとは思えないため一応釘をさしておいた。
リリアーナは剣をナックルで迎え撃ち、タイグルは見事な足さばきで攻撃を避けていく。
「俺の相手は呪い使いのお前か……具体的にどうやるんだ?」
「自分の身で味わうといい……」
カーズは杖をかざすとその先端から黒いモヤが生み出され、小さな玉をいくつも形成してそれがユウマへと打ち出される。
「”収納、呪い”」
もちろんそれらはユウマの収納魔法によって、全て回収されていく。
「なに!?」
それに驚くカーズ、見ていたリーダーも同様に驚いた表情をしていた。
「”展開、呪い”」
その呪いをすぐさま反対に射出する。
「ぐあ!」
「なんだと!?」
その相手はカーズではなく、ソードとスピアだった。
呪いを身に受けた二人の身体は触れた部分から呪いが侵食していく。
「ぐ、ぐうううう」
「か、身体が!」
身体が重くなり、膝をついて苦しみだす二人。
「カーズ、呪いを解け!」
「は、はい! 解呪!」
リーダーに指示されたカーズが慌てて呪いを解く。
「ふ、ふうう」
「は、はああ」
呪いが解けたソードとスピアは、苦しみから逃れたことで大きく息を吐く。しかし、そんな大きい隙を逃すことなくリリアーナとタイグルは攻撃に移っていた。
「せいや!」
リリアーナの一撃がソードの顔にクリティカルヒット。
「くらえ!」
タイグルの蹴りがスピアの首のあたりにヒットして、そのまま意識を刈り取る。
「なっ!?」
一瞬のことにカーズは驚きの声をあげる。
「”展開、岩”」
驚いているカーズの頭上にユウマが岩を出現させてそのまま、重力に引かれた岩が彼を直撃する。
「ぐあああ!」
とっさのことで詠唱などできない状況。
魔法職であるカーズがそれに抵抗できるわけがなく、そのまま岩の下敷きになってしまった。
「さて、残ったのはリーダーさん一人だな」
「そのようですね。いやあ、彼らを一瞬で倒す手際はお見事ですね」
ユウマの言葉に対してリーダーは笑顔のまま拍手をしてユウマたちを称える。
仲間が倒されたにも関わらずその余裕のある態度にユウマたちは違和感を覚えた。
「さて、我々のことを知っているということはゴーレムが口を割ったということでしょうね」
「そういうことだな」
かまをかけてくるリーダーに、ユウマはあえて素直に答える。
「ふむ、彼のゴーレムは悪くないがまだまだといったところです」
急にあの男のゴーレムについての評価を始めるリーダー。
「そして、彼のゴーレムに対してアドバイスをした人物がいます……そう、私です」
ニタリと笑みを浮かべてそう口にしたリーダーは地面に手をあてる。地響きがあたりに揺れをもたらした。
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