第57話 ウソ……だろ?

 ☆雪花視点☆


 ジェラ男が教室を出て行った後、姉さんの所に歩いて行くまでに周りから色んな声が聞こえてきたの。


「え、なに?斎藤君、橋本君の事蹴ったの?それで今日中村さん達だけだったの?」


「うわぁ、だめだよ。あそこで女子に手をだそうとしちゃあ……」


「ぶっちゃけさぁ、斎藤の気持ちもわからないでもないけど……あれはなぁ」


「顔がイイだけじゃダメね。マジありえない」


「え?なに?俺今来たばかりなんだけど、なんかあったの?え?」


 ジェラ男に批判の嵐ね。当然だわ。許すまじ!


「にしても紗雪ちゃん、橋本君の事王子様だって!」


「ホントにねー!まぁ、どこがイイのかはわかんないけど!」


「あはは、たしかに!」


 失礼な!男は顔じゃないのよ!甲斐性よ!


「それにしてもエレナさん、さっき何したのか見えた?気付いたら斎藤君が飛んでたんだけど!?」


「なんだろうな?あんだけ美人なら護身術的な何かとか?」


 それは私も不思議だったわね。さて……


「とゆうわけで、姉さん大丈夫だった……みたいね。あの連続ビンタは見てて爽快だったわよ。エレナさんもありがとう。姉さんを守ってくれて」


「ふぇぇ、せっちゃぁぁん!こわかったぁ!それにしても斎藤君があんな人だとは思わなかった!もうホントサイテー!」


「いえいえ、大したことはしてませんよ。紗雪さんが無事で良かったです。それにしても、王子様……ですか?」


「ちょっ!それには触れないでぇ……。なんかカーっとなっちゃって言っちゃったぁ。恥ずかしい……」


「さすが、あざと乙女脳ね」


「なんか増えてる!?あざとくないからね!?」


「「えっ?」」


「二人してなによもうっ!」


 三人でそんな事を話してると、担任の先生が教室に入ってきた。いつの間にか時間になってたみたいね。


「なんだ?なんかあったのか?まぁいいや。お前ら座れー。今日は橋本休みな。斎藤はなんか痛いから帰るってよ。以上!」


 相変わらず適当な担任ね。


 それにしても早く学校終わらないかしら。

 彼、ちゃんと家で大人しくしてくれてればいいけど。


 はぁ、さみしいなぁ……。



 ☆悠聖視点☆



 あーだるいし痛いし眠い……。

 病院来たはいいけど、結構混んでるな。

 ちなみにインフルの時と同じ病院。

 はぁ、早く呼んでくんないかな。


「橋本さーん。橋本悠聖さーん」


 おっ、やっと呼ばれたか。


「あら?君はこないだインフルで来た子よね?」


「え?はい」


 いきなりなんだ?この美人な看護師さんは。知らんぞ。


「すごい可愛い子と来てたから覚えてたわぁ」


「はぁ……」


「ふふっ。じゃあ入って頂戴ね」


「はい」


 診察室に入って腕を見せると、すぐにレントゲンを撮ることになった。

 結果は──


「折れてはいませんが、キレイにヒビが入ってますね。無理をすると悪化かもしれないのでギブスで固定しておきましょう。今日は痛み止めの薬も出しておきますので、二週間後にまた来てください」


 だってさ。

 ヒビかぁ……すげぇな斎藤。

 俺も体鍛えっかなぁ……。


 処置室に入り、ギブスをつけてもらって一応痛み止めの注射もしてもらった。後は帰って安静にするだけ。


 すると、待合室に戻ると同時に視界に知った姿がうつった。


 ん?あれは斎藤?なんでだ?見た感じだと、来たばかりっぽいけど。

 うわっ、目が合った!めっちゃ睨んでくるし!退散退散っと。


 後は会計だけになり、母さんと座って待ってると、目の前に500円玉が現れた。

 なん……だと!?


「ほら、喉乾いたでしょ?これで何か好きな飲み物買ってきなさい。母さんはイチゴオレね」


「お、やったね!了解!」


 母さんから貰った500円を握りしめて階段下の自販機に向かう。とりあえずイチゴオレを先に買ってポケットに入れる。

 さて、俺は何にすっかなぁ?


 と、悩んでるところで後ろから影が差す。


「おい橋本」


 声に反応して後ろを振り返ると、怒りの形相の斎藤がモップを振りかぶっていた。



 おいおいおい、ウソ……だろ?

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