第30話 頬
玄関の前に立って大きく深呼吸をする。
睦月のおかげで大分落ち着いたが気持ちが消えたわけでは無いようで、会うことを考えると緊張を覚える。…よしっ
「ただいまぁーグフッ」
「おがえりぃぃぃ~~!ふえぇぇぇぇ~!」
玄関を開けるなり奈々が突っ込んできて背中に手を回すと胸元にグリングリンしてきたのを押さえながら体勢を整える。
「奈々!苦しいって!大丈夫だから離れろって!」
「ちゃんとおにぃが帰ってきてくれてよかったぁ~!……ん?スンスン……んん??」
やばいっ!匂いできづかれるか!?
「と、とりあえず冷えたから風呂いってくるわ!」
なんとか奈々を剥がして脱衣室に向かうと廊下で雪花と紗雪に会った。
「…………ただいま」
「えーっと、悠君おかえり…」
「………ッ」
紗雪は話してくれたが雪花は顔を歪ませてうつむいていて顔が見えない。
「じゃ、俺風呂はいるから」
言いながら脱衣室に入って戸を閉めた。
睦月の部屋の匂いのついた服を脱いで洗濯機にいれようとするとすでに洗濯物が入ってたので取り出そうとすると手が止まる。
ネットに入っているが、これはブラジャーというものだな。しかもカップの所がやたらとでかい。つまりこれは雪花のか…。そいえば睦月のもすごかったなぁ…。
このままだと変態認定なので、カゴにうつして自分のを回す。カゴにうつすくらいなら家族なんだし、文句も無いだろう。
シャワーを浴びてると奈々が部屋着をもってきてくれたのでそれに着替えてリビングに行く。(ちなみに奈々が一緒に入ろうとしたが全力で阻止した)
二人がけソファーに紗雪と雪花が並んで座り、その対面の三人がけのベッドにもなるソファーに奈々が座っていたので、奈々の隣に腰をおろし、頭を下げた。
「昨日は連絡もしないですまなかった。」
「ホントだよ!こんな事はじめてだったじやん!まぁ、誰かさんのせいだけどっ!」
「奈々ちゃん!そこまで言わなくても!」
奈々が目の前を睨むと雪花がビクッとなり膝の上で両手を握りしめていた。紗雪が庇うが視線の鋭さは変わらない。
そう言われて、雪花はゆっくり顔を上げると目尻に溜めながら謝罪の言葉を口にした。
が、そんなことより気になることがあった。
「ホントに……ご、こめんなさい…」
「いや、その前になんだその頬は!?真っ赤に腫れてるじゃないか!?」
雪花の顔は頬が痛々しいくらいに真っ赤に腫れてしまっていた。
思わず奈々を見ると気まずそうに目をそらしながら俺に告げた。
「この人が悪いんだもん。あんな理由でおにいの事を弄ぶだけ弄んで捨てるなんて。」
「っ!もてあそんで捨ててなんて!」
「捨てたじゃん!だからおにぃ帰ってこなかったじゃん!それにイブの日にあんな幸せそうな顔で帰ってきて何言ってんの!?」
「そ、それは……グスッ、グスッ。」
「何泣いてんの?泣きたいのはおにぃのほうじゃないの!?」
雪花が叫ぶように言うが奈々の剣幕で押されてしまっている。それを紗雪が背中に手を当てながら気まずい顔をしていた。
「おい、奈々落ち着け!昨日なにがあったんだ?紗雪も何も言わないけど何かしってるのか?」
そうして、俺は昨夜の話を聞いた。
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