第22話 片付けと補習

 引っ越しから一晩あけ、翌朝。リビングに降りて行くと奈々以外は揃っていた。奈々は恐らくネトゲで夜更かしでもしたんだろう。

 母さんはみんなの朝食を作ってて雪路さんはそれを眺めている。(ラブラブである)

 雪花は死んだ目で英語の教科書を眺め、紗雪はそれを苦笑いしながら雪花の髪を手入れしている。


「はよ。補習はどうだ?」


「おはよう。3日間の予定だったのだけれど、今日の再試験で40点以上取れれば今日で終わりなのよ。荷ほどき全然終わってないからなんとしても合格したいわね。」


「なるほどね。なら、ココとココの文法、後は次のページの単語は覚えていけばなんとかなると思うぞ」


 確実に点数の配当が高そうな所だけをおしえてあげた。

 そのまま紗雪にもあいさつするがどうもぎこちない。昨夜の事を気にしてるみたいだった。このままでも気まずいので周りに聞こえないように、紗雪の耳元で告げた。


〈昨日の事はちゃんと忘れるから気にしないで〉


「ひゃうっ」


 突然顔を真っ赤にして耳を押さえながらプルプルしながらこちらを睨んでくる。耳弱かったのか。失敗した。にしても可愛いな……。


 補習に行く雪花をみんなで(すごいイヤそうな顔をしてたが)見送り、奈々が起きてきてから今日は、殆んど段ボールから物を出していく作業だった。新聞紙で包んであった食器を全てだして一度洗ってから拭いて食器棚へ。姉妹が使う、組立式のラックやカラーボックスを組み立てて、とりあえず二階奥の大広間に。

 あらかた片付いてきて、一回休憩することになった。


「おにぃ、ちょっと奈々の部屋にきて」


 呼ばれたので行ってみる。久しぶりに入るけど、女の子らしい奈々の好きなピンク系でまとまっている。ベッドの周りには俺が昔ゲーセンで取ってやったぬいぐるみも飾ってあった。ベッドに腰掛け、手にとって見ていると奈々が聞いてきた

「おにぃ昨日の夜、紗雪ねぇとなにしてたの?」


 ドキーッ「んん?なにもしてないぞ?」


「はいはい、嘘乙。昨日隣からおっぱいとか聞こえたんだけど?」


 はぁ?そんな壁薄かったっけ?壁に耳でもくっつけない限りはたいして聞こえないと思うんだけど!?まさか昨日聞き耳たててたのか?とりあえず誤魔化すか


「あぁ!それな。ただ、世間話で大きな胸は好きかどうかとか聞かれてただけだな」


「………ふーん」


 信じたか?と思って振り向くといきなり頭を捕まれ、奈々の胸元に抱えられた。

 は?なんで?てかこのダイレクトなやわらかさ…こいつノーブラか?


「おにぃ動かないで」


 奈々の艶っぽい声に体が止まる。そのまま奈々が俺の耳元で囁く


「雪花ねぇには敵わないけど、紗雪ねぇよりはおっきいし、やわらかいよ?どぅ?」


 思わずうなずく


「…動かないでって言ったのに…」


 匂いで頭がクラクラする。力ずくで抜け出して告げる。


「俺達は実の兄妹なんだ。こーゆー悪ふざけはもうやめろよ」


 そう言って部屋を出ていく。

 なんなんだ一体…。 ブブッ


 奈々【ごめん。新しい家族におにぃが取られる気がして…】


 メッセージに既読だけつけてスマホをしまう。

(寂しかったならそれならそうだって言えばいいのに。後でお菓子でも持っていってやるか)


 で取られるって言ってるんじゃないって事に気づくのは少し先になってからだった。



 その後も片付けを続けていると玄関から物音がした。雪花が帰ってきたみたいだ。


「補習おつかれー!どうだった?再試験」


「42点でなんとか突破よ。あなたが教えてくれた所がちょうど出題されていて助かったわ」


「あーそれでも42点か。よし、とりあえず雪花の荷ほどきをみんなで終わらせるか!その後、今日の再試験の見直しな」


「私に休む暇なんてないのね…」



 とゆーわけで今は子供たちみんなで雪花の部屋にきている。俺が午前中に作ったラックやカラーボックスを運び込み、女子達で小物や服を片付けて、俺は本など重いものを重点に運んでゆく。

 しっかし、こいつも中々ラノベもってんなぁ。


「悠君見てみて。ブッカブカ!ブッカブカすぎて悲しくなってくる」


 呼ばれて振り向くと雪花のブラジャーを自分の胸に当てた紗雪がいた。悲しくなるならやめなさいよ…


「ちょっ、姉さん!?恥ずかしいから辞めてっ!」


「えー、別に義兄妹きょうだいなんだからいーじゃーん♪」


「おーい、遊んでないで片付けろー。あんま遊んでるとそのブラジャー貰ってくぞ」


「「「へんたいっ」」」


 なんでそこだけ揃うんだよ。

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