第19話 冬休み突入

 教室に戻ると朝の騒ぎは収まっていた。紗雪がどうにか説明したのだろう。やたらと微笑ましい目線を向けられてるのが気になるが…。

 雪花から聞いた話だと、俺が逃げた後すぐに追いかけて来たらしい。部活に入ってない俺がまさか部室棟にいるとは思わず、時間がかかってしまい、さらにはあの場を見られるハメになってしまった。はぁ…


 その後すぐに担任に呼ばれ、インフルで休んでるうちに返されていたテストの答案を受け取ってきた。もちろん赤点なんか無し。冬休みの初日から引っ越し作業の予定だからその準備もしなくてはならないのだ!ならないのだが……


「私、最初の三日ほど手伝えないからよろしくね」


 その日の帰り道、雪花がそう言ってきた。


「え、なんで??」


「……ほ、補習があるのよ…」


 目をそらしながら答える


「お前まじか……」


「けど、今回は頑張ったほうよ!英語の一教科だけだもの」


「何点?」


「……27点…」


「見た目は才女っぽいのになぁ…」


「見た目で決めるなんてダメよ。差別だわ。そーゆーあなたは何点だったのよ?」


「92点。英語なら割と得意だから後で教えてあげるのもやぶさかではない」


「ほ、ほんとに?……好きな人と勉強会…いいわね…。今初めて頭が悪くて良かったと思ったわ…」


「紗雪は乙女脳だけど、お前のラノベ脳も大概だな。そー言えば帰り一緒じゃなかったのか?」


「あら、姉さんが気になるの?姉さんなら朝の事で陽キャのリア充達に捕まって事情聴取中よ。ちなみに私に話かけてくる子はいなかったわ」


「……そ、そうか。にしても、待ってたほうがよかったかな?」


「いえ、大丈夫よ。クラスの中心にいた姉さんがあの場であんな事を言うんだもの。それなりの覚悟があったはずよ。そのかわり後であなたに甘えてくるかもしれないけど…それはそうと来週のイブに何か予定はあるかしら?」


「いや、なにもないな。あるわけないな。過去にもあった試しがないな………けどクリスマスには引っ越し終わってるだろうからみんなで何かするんじゃないのか?」


「…ちょっと行きたい所があるから付き合って欲しいのよ。24日の午後5時に駅前の電子掲示板の前に集合よ。誰にも言わないこと!わかった?」


「ん。あぁ、わかった」


「じゃ、また、明日ね」



 開けて翌日、今日は終業式とLHRだけなので午前で終わり。ちなみに紗雪は朝から疲れ果てていた。南無

 雪花は補習の説明を聞きに行くため、久しぶりに一人帰宅を満喫中。…オタク友達?腕組んで登校した日に「裏切者!」とか言われたきり一切絡んで来なくなったよ…。

 デパ地下で試食で腹を膨らませた後、辺りをブラブラ歩いてると、駐車場脇で一人の幼女が泣いていた。五歳くらいか?しかも、銀髪である。回りを見ても髪色のせいか、誰も話しかけようとしない。車の通りもあるから危ないな……


「どうした?何で泣いてる?」


 なるべく低い声にならないように、目線を合わせて話しかける。


「・・・・・マミー・・・・・!」


 やべぇ何喋ってるかわかんねぇ!かろうじて聞き取れるたのはマミーだけ。マミーって事は多分ママだよな?

 しょうがねぇ!


 とりあえず女の子を肩車して、デパートの中に入っていく。なんかめっちゃ喜んでるけど、サービスステーションにつれて行けばなんとかなるだろう。向かいながらも念のため声はかけてみる。


「この子のお母さんいませんかー?駐車場で迷子になってましたー!この子のお母さんいませんかー?」

 くそぅ恥ずかしぃ…。妹の小さい頃思い出してほおっておけなかったっ……。


「エリー!!」


 ん?声がする方を向くと迷子の子と同じかそれ以上の、腰まで届く銀色の髪。蒼い眼、透き通るような真っ白な肌の女の子がこっちに向かってきていた。すっげぇ綺麗だ…。


「・・・・・!」

「・・・・?・・・!」


 肩車してた子は何かを言い、俺から降りてその少女の元に寄っていき何かを話している。母親って事はないだろうから多分お姉さんかな?まぁ、見つかって良かった良かった!後は5階のアニメショップ伊藤で休み中に読むラノベを買って帰ろう………


「待ってください!」

 ん??

「おれ?ミー?」


「あっ、日本語で大丈夫です。エリーを、妹を助けてくれてありがとうございます。お礼をしたいのですが…」


「気にしないでください」(日本語上手いな)


「せめてお名前だけでも」


「橋本悠聖です」


「悠聖さん……もし次会えたら必ずお礼をさせてください!」


「気にしないでいいのに…なら会えるのを期待してますね。でわ」


 その後、銀髪系美少女キャラがメインで出てくるラノベを買ったのは言うまでもない。

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