第9話 雪花side2 電話
午後11時50分
そろそろ日付が変わる頃。帰り際に約束した通り彼に電話をかけるために私はスマホの電話帳を開く。
お父さん以外では唯一の男の子の名前
男の子に電話をするのも初めて
登下校であんなに話をしたのも初めて
通話マークをタップ……
1コール
2コール
3コール ……ピッ
「はい、もしもし」
耳元で声がする
「も、もしもし?雪花です」
「おう、名前出るから言わなくてもわかるぞ」
「……ッ」
初めてかけるから緊張してたのに!
「でさっそく理由を教えてくれないか?おそらく……再婚の事が関係してるんだろ?」
「そうよ」
そして私はこちらの事情を話した。お父さんの事、姉さんの事。そして姉さんのために再婚を辞めさせようと思っている事。
「あなたはどう思うかしら?」
「俺は母さんが幸せになるなら再婚に賛成だな。妹も賛成してる。第一、あまり父親に依存しすぎるのもダメなんじゃないか?姉ちゃん可愛いんだし、彼氏とかつくらないのか?」
「あなたも可愛いって思うのね……。でも姉さんは彼氏を作ろうして作るのは無理よ」
「なんでだ?」
「姉さん、乙女脳だもの」
「乙女脳?」
「いまだに王子様や運命の出会いを信じているのよ。私は行ってないのだけれど、小6の時にデパートのショーを見に行った時に迷子になってその時助けてくれた男の子に恋をしてその時一緒に撮った写真をまだ大事に持っているわ。初恋だったみたい」
「そりゃ確かに乙女脳だ」
「でしょう?」
「で、話戻すけどその再婚を阻止するために俺と付き合ってるフリをして、それをどう使うつもりだ?」
「それは内緒よ。とっておきがあるの」
「とっておきねぇ。一時的なものに過ぎなさそうだけど、よくやるねぇ」
「それはわかっているけど、気がついたら動いていたの。馬鹿みたいでしょう?」
そんな事は思ってないのに何気なしに出た言葉
それなのに
「馬鹿じゃねぇよ」
「え?」
「大事な姉ちゃんのために頑張って考えて動いた事は馬鹿な事じゃない。俺は賛成はできないけど止めもしない。どうなるか最後まで見ててやるよ」
ドクンッ
心臓が跳ね上がる
あの時私を助けてくれた言葉
あの何気なしに放たれた言葉にどれだけ救われたことだろうか
きっとあの人の子供が彼じゃなければこんな計画もたてなかったはず。
そっか
きっと私はあの時から……
「おーい!寝たー?寝落ちしたー?俺もう眠いんだけどー」
…………なんかもう色々台無しだわ
「お、起きてるわ。じゃ、そろそろ切るわね」
「おう、おやすみ」
「おやすみなさい……悠聖君」
「んをっ!?おまっ、初めて名前で……」
ピッ
フフッ、慌ててたわね
台無しにされたお返しよっ♪
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます