第56話「悪鬼」

◆ ◆ ◆ ◆ ◆


「グルスさま、討たれたようであります!」

「レ、レグナさま率いる魔法攻城部隊は、生死不明!」

「こっ、攻城軍は、敵の騎馬隊と剣を持った異様な強さの数百の部隊に蹂躙されております!」


 ――ズガァアアン!


 伝令から次々と上がってくる報告に怒気を発したドゥダーグは、持っていた鉄扇で床几を叩き壊した。

 だが、それでも収まらず地面に突き刺していた大剣を引き抜いて大きく振り上げる。


「ひぃいいっ!?」

「お、、お許しを!」

「ドゥダーグさま、なにとぞぉ!?」


 だが、もう止められなかった。

 激情に駆られたドゥダーグは、伝令たちを自らの大剣で皆殺しにしていった。


 それでも、まったく怒りは収まらない。


「どいつもこいつも役立たずどもがぁ! どこまでわしの覇業の邪魔をすれば気が済むのだああああああ!」


 大音声を上げて、狂ったように大剣を振り回して陣地を破壊する。


 近侍する側近や親衛隊士たちも怒り狂った主君を止めることなどできず、陣地から避難するありさまだった。


「……ぐふぅううう! やはりこの世で頼みとすべきは自分自身のみ! 他人などあてにならぬ! こうなったら、わし自ら決着をつけてくれるわぁあああああああああああ!」


 野獣のような咆哮をして、ドゥダーグは己が破壊しつくした陣地から出ていった。


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