叫ぶ必要あるの?
LA軍@多数書籍化(呪具師220万部!)
スキル名を叫ぶ人たち
ゴォォォォォォォ───
硫黄交じりの空気が漂う、凍える大地……
作物すら育たぬその土地では、人は生きてゆけぬ───
人ならざるものを除いて………──
※
その奥地で輝く都市がある。
魔王領、最奥、エーベルンシュタット。
魔王軍の最精鋭が守りを固める難攻不落の魔都。
空には古代龍が舞い、陸は不死身のゴーレムが
賑わう都の半数は連れ去られた奴隷の叫びと、それを引き裂く魔族の
そして、都の中心には空へと届けと言わんばかりの尖塔が連なる魔王城がそびえ。
その地下には、地上部分をはるかに超える地下帝国と言わんばかりの構造が
──その地下空間の最奥。
星を貫かんばかりの地下深くに魔王の居室はあるという。
人類は、魔王に脅かされていた。
人を超える
人を超える数と技術。
人を超える知識と知恵。
ありとあらゆる分野で人を凌駕する魔族は、この星を席巻しようとしていた。
太古から魔族と戦い、平和を愛した人類の命運も途切れようとしていたその時。
人の行く末を憂いた天上の者たちは、御使いを地上へと降ろす。
天から遣わされた御使いが、魔族の軍勢を切り裂き、希望の
聖女は、魔族を退けた御使いと交わり、救世主を身ごもる。
100日の攻防を経て、聖女を守り切った人類はその半数を犠牲にして希望を見出した。
天の御使いは時は来たれりと、聖なる剣を地上へ突き立て、空へと帰還した。
聖女は、御使いの子を誕生せしめ、勇者をこの世へ導いた。
アルス───
聖なる王国から王は勇者に名を授け、一なる聖女の教えと、十なる魔術士の知恵と、百人の騎士から武術と、千人の信者から勇気を与えられ、彼のものは人類を救うべく彼の地へと旅立った。
穢れなき聖女の妹、
美しき戦士、
畏きエルフの長老、
鋭き鉄を鍛えるドワーフ、
異世界から来た兵士、
異種族、異性、異世界を越え、絆を育んだ仲間たちと共に遂に魔都へとたどり着く。
卑怯なる魔族の軍勢を退け、天の御使いの教えを受けて魔都の最奥へと侵入に成功したアルス。
魔王城の地下深くに続く転移魔法陣を前にして、彼は大きく息を吸い込んだ。
※
「みんな、ここからは俺一人で行く」
勇者の宣言を、仲間たちが驚きの表情で迎える。
当然、岩よりも固い絆で結ばれた仲間たちは、それを良しとしない。
聖女は慈愛の眼差しで見つめ、戦士は憤り、エルフは黙して語らず、ドワーフは苛立ちを隠さない。
異世界の兵士はスマホを
「聞いてくれ。ここから先は更なる困難が予想される。きっと、誰かが死ぬような目にあうだろう」
そんなことは覚悟の上だと、仲間たちが口々に騒ぐ。
勇者は泰然と構えて、仲間たちを信頼の眼差しでみつめる。
「だから、君たちに託す。地上の軍、地下の魔王軍親衛隊。彼らを引き付けてくれ」
勇者は、非道とも言える策を持ち出す。
仲間たちが魔都で暴れることで、魔王軍の精鋭を引き付けるのだ。
そして、手薄になった魔王城の最深部に勇者が挑む。
それは、仲間を信頼するとともに、勇者の優しい嘘だ。
魔王軍の精鋭が動くことは間違いないだろう。
それを数名で引き付けることは、決死隊のごときだ。
しかし、
しかしだ。
その精鋭よりもはるかに強大な魔王を、勇者はたった一人で倒そうというのだ。
それは、精鋭と戦うよりも遥かに危険で死に直結している。
だから、勇者は嘘をついた。
なぜなら、彼は、
仲間を愛しすぎていた。
それゆえに、
誰一人掛けてほしくなかった。
欠けた仲間を見たくなかった。
だから単身挑む。
最強、最悪の敵───魔王ズムフルトへと。
そして、皆がそれを理解していた。
勇者の優しい嘘とエゴに。
だから、気付かないふりをして
しかし、内心は勇者の気持ちを
勇者の期待に答えんと、
ドワーフが
エルフが古代魔法を解き放ち、
異世界の兵士が12連発グレネードランチャーを
そして、聖女は勇者を抱擁し、耳元で甘く呟く。
そして、戦士は涙に霞む眼を閉じて、勇者と口づけを交わす。
さぁ行こう!
それぞれの決戦へ!
※
ドォォォォォン!!
魔都を震わせる爆音と破壊の狂騒曲がそこかしこに響く。
一丸となった勇者のパーティが魔族の精鋭達を蹴散らしているのだ。
その
奴隷たちは魔王軍から奪った武器を手に、勝ち目など考えずに遮二無二突貫し、勇者パーティと駆け抜ける。
一人、また一人と奴隷たちは命を落とすが、その顔は晴れやかだった。
「皆、頼むっ」
勇者アルス。
いざ行かん!!
そうして───勇者が魔王ズムフルトと相対する戦いは、また別のお話……
これは、勇者と離れ魔都で大暴れする勇者パーティのサイドストーリである。……はず?
※
───はぁはぁはぁ……
──ハァァァ!!!!
穢れなき聖女は、勇者との約束を果たすため魔都で大暴れを開始する。
それに続くは大剣を振り回す美しき女戦士、
畏き老エルフ、
鋭き鉄を鍛えるドワーフ、
───そして、一風変わった装備に身を包んだ異世界の兵士、
彼らの技は
聖女がそのしなやかな手を天に差し伸べ───高らかに謳う。
「
ピカー!!!! ……キュバァァァァン!!!
ジュワワァァアアアと、アンデッドの精鋭たちが聖なる光に触れ溶けていく。
そして、
美しき女戦士が大剣を振りかぶって───ぶちかます!!
「
ズゥゥゥゥガァァッァァァァァァンン!!!!
大剣、長槍、大型クロスボウを携えたジャイアントオーガの群れが真っ二つになり、
余波を受けたものも──体がバラバラになるほどの衝撃波を受けて吹き飛ばされる。
そして、
畏き老エフルが朗々と詠うと───その手に持つ弓に精霊たちが収束していく。
「
バシュウゥゥゥゥン!!! ズン……ドォォォン!
空を舞う古代龍が一頭そして貫かれたもう一頭が相次いで墜落する中、貫通しないまでも腹に受けた始祖龍に命中し、彼の体を爆散させた。
そして、
鋭き鉄を鍛えるドワーフは息を吸い込むと───吼えた。
「
ゴッカァァァァァァァァン!!! ズズズズ……チュドォォォン!
命無き無慈悲のゴーレムの軍勢が一撃で半壊し、吹き出したマグマの奔流に飲み込まれ全滅する。
そして、
一風変わった装備に身を包んだ異世界の兵士は───引き金を引いた。
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
ドゥンドゥンドドドドドオドドドドドドドドドドオドドドドッド!!!
チリンチリンチリン……
彼らを包囲しようとしていた、鍛えに鍛え上げられたゴブリンの古参兵が、グッチャグチャのミンチになって吹き飛んでいく。
まさに、最強。
聖女、戦士、エルフ、ドワーフ、異世界の兵士───
ここに最強タッグはなった!
それもすべて……勇者の突撃を援護するため!
ゆけ、勇者!!!!!
と、皆の思いは一つだ!
さあ行け勇者!
ここは
なーのーで、
こちら──勇者を援護する「彼らの戦い」を追っていこう。
それゆけ、勇者パーティ!
……
…
ここは最強最悪の魔王が収める魔族の首都であり、最終拠点───
最大かつ最強の戦力が集結し、難攻不落だ。
そこに人類最強の戦士たちが突入し──
地下深くで待ち構えている魔王への血路を開くためと、
陽動のためにここで戦っているのだ。
彼らは強い。
めちゃくちゃ強い!
その強さをもう一度見てみよう。
聖女、
「はぁぁぁ!!
戦士、
「らぁぁぁ!
エルフ、
「ふぅぅ!!
ドワーフ、
「ぬぉぉぉ!!
異世界の兵士、
「死ぃねぇぇぇぇ!!」
ドォォォォォォン!!
……
…
個人戦果、
聖女→戦果:アンデッド軍団50% 壊滅(撤退再編成中)
戦士→戦果:巨人種兵団35% 損耗(増援要求中)
エルフ→戦果:空中機動龍兵団10% 撃墜(緊急発進中)
ドワーフ→戦果:ゴーレム機動師団70% 壊乱(至急再構築中)
異世界の兵士→戦果:軽装第1旅団5%
まだまだぁぁぁ!!
聖女
「セイト───、ホーリー───、サイレント───」
戦士
「ギガンド───、グラント───、ハイパー───、スーパー───」
エルフ
「スピリット───、フォレスト───、コーピング───」
ドワーフ
「グランド───、インフェルノ───、アイアン───」
ドカン、ボンン、グシャ、チュドーン!
ボボボン、ドォォォン、シャキーーン!
シャパァァー、ギィィン、ボォッォン!
ズガァァン、バァァン、ドッコォォン!
異世界の兵士
「……プッ」
………………
シーーーン───
聖女は言う、それはそれは酷く冷たい目で異世界の兵士を見ながら、
「笑いましたか?」
それを受けて女戦士も苦々しく、
「何がおかしい?」
老エルフは、皴を一層深くして言う。
「不謹慎な方ですね」
ドワーフは烈火のごとく怒る。
「あぁぁん! 笑ってる場合か! 全然敵が減ってねぇぞ!」
……いやさ、だってさ。
ブフッッ!!
「ブハハハハハハ!」
も、
もう我慢できない!
………
ひぃーひぃーひぃー…可笑しいぜ!
ダンダンダン!(近くの壁を叩いています
「何がおかしいのです! っつ!
聖女の隙を見て襲い掛かったアンデッドだが、聖女のカウンターを受け溶けていく骸骨姿の
しかし、それは二段構えの攻撃だった。グワバと白い煙を拭き出したリッチの屍から、その陰に隠れていた霧型の魔物、
「あまぃ!
ブワァァ! と剣撃の起こす風に巻かれて、霧の魔物は悲鳴を上げて消えていく。
「……ぶっ、ブハッハハハハッハ! ひひひ…そ、ソード…ソードシャ…ブヒャハハハハ!」
ゲラゲラと笑い転げる異世界の兵士に女戦士が目を吊り上げて詰め寄る!
「おい! 今私のこと笑っただろう!」
グィっとその兵士の一風変わった服を掴んで持ち上げる。
意外に筋肉質だが、バケモノと対等に渡り合うという女戦士の腕力の前では子猫のように持ち上げられる兵士だが……笑いは止まない!
「ちょ…ごめ、ごめんごめん! ヒヒ、アハハハッハ! いやさ、うひひ」
苛立ち紛れに異世界の兵士を突き飛ばす女戦士だが、その上空に鋭き牙を見せた龍たちが殺到する。
「しまった!」
思わず、頭を庇う女戦士。そこに異世界の兵士が、突っ込む!
「笑っちゃって、ごめんねぇぇ!!」
バン…ババババッバババババババッババババッバ!!
と猛烈な
7.62mm弾の乱射は、まさに乱射……ろくに当たりはしないが面制圧力は凄まじい。
それはAK-47の銃口をあちこちに振り回すだけ、まき散らされる弾丸の嵐───ほとんど命中しないが、その聞きなれない攻撃に驚いた先頭の龍が空中で静止したため、奴らは後続と空中衝突する。
ドカァァンと空中でもものすごい音がしたかと思うと、
「よくやりました、食らいなさい───」
老エルフが女戦士の前に立ち、彼女を庇うと弓を引き絞る、そして───
「……ちょ、やめて、絶対笑う!!」
「??
!!!!!
ぶふゥゥゥゥ!!
だんだんだん!(床を叩いています
「ぎゃははははっははは!!!」
ゲラゲラゲラゲラ! と笑い転げる異世界の兵士。
むっとした顔で振り返る老エルフの攻撃の先で、龍がまとめて貫かれて爆散していた。
「失礼な方ですね。私を笑いましたね!」
「…いや、ごめん、ブフ! いや、ごめんて! でも、笑う……笑っちゃうわ!」
だって、
スピリ───ぶふぅぅ!!
ギャハハハハッハ! スピリットサーチャージて…ぶふふふ! めっちゃ真面目な顔して、スピリットサーチャージ!
「ぎゃはははっはははは! ヒーヒーヒー…異世界面白れぇ!」
笑い転げる異世界の兵士をつまみ上げるドワーフは言う。
「お主……もしかしてスキルを笑っておるのか!?」
ギロっと睨むドワーフの強面に冷や汗を流しながらも、異世界の兵士は笑いを止められない。
「いや、違う違う! ふふふ、ゴメンて。悪気はないんだよ…ブハハハ、た…タダさ」
ズウゥンと、巨岩が着弾。
見ればゴーレムの破片が集結し、巨大なゴーレムへと変貌していた。
「ぬかったわ……魔石のゴーレムであったか…ならば、これで───」
「ぶふふーーー!!! 言うよ言うよ!」
絶対言うよ!! ダメだ。もう笑うこの時点で笑う!
ぶふひゃぁはは!
ガシャキと、AK-47と、MM1グレネードランチャーを構える異世界の兵士は、援護射撃を行う。
ッバババッバババババ…! ボン! バババ! ボンボンボンボン!!
ズガンボォォン!! と石くれをばら撒き傾くゴーレム…それを見た仲間達がドワーフを
重量級の敵にはドワーフの彼が適任だ。
「「「行け!!」」」「ぶふっ!」
「ぬぅぅぉおおおおおおお!
ぶっふゥゥゥゥゥ!! と盛大に異世界の兵士が吹き出す。
ばんばんばんばん!(膝をたたいています
ドッカァァァァンと巨大ゴーレムが吹き飛び、その破片がサラサラーと砂になっていく。
「なぁぁにがおかしい! 見ろこの
……ぶふふっ!
いやさ、威力とか、効果範囲じゃなくてぇぇぇ!
「なんでスキル名を
ぶふふっっ!!
───超ウケる!
……………
4人の異世界の戦士は、言う。
……
…
「それを言っちゃぁぁぁ、お仕舞です」
おしまいよ」
おしまいだ」
おしめぇよ」
いよぉぉぉぉおお……ポン♪
───────────────
むか~しに投稿したものです。
せっかくなので再投稿───!
そして、
新作!!!
『のろま『タンク』と言われ馬鹿にされた「重戦士」───防御力をMAXにしたら「重戦車」(ティーガーⅠ)に進化した』
https://kakuyomu.jp/works/1177354054892378214
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