Step3 保育園の見学に行ってみよう




 本日快晴

 ヒロミが何件かの保育園に見学を申し込んだ日は、お出かけ日和の良い天気となった。おニューの洋服を着せたりぃちゃんは、パパとママと3人でお出かけが嬉しいのか朝からよく笑っている。

 ちなみに、保育園は基本的に月曜日から土曜日まで開園している。施設によっては日曜・祝日も預かってくれるところがあるが、休日保育は別料金となっているところも多いのでしっかりと確認しましょう。後で請求書を見て驚愕しても知らんからな!

 ともかく、ご機嫌のりぃちゃんを自動車に乗せて、今日は1日保育園見学デイである。


一件目

・まごころハウス:二番目に自宅から近い保育園。市街地のビルの中にある。

ヒロミ’s memo

・お遊戯会や鼓笛隊のイベントが少ない。

・施設はキレイ。

カズさん’s memo

・専用の駐車場が狭くて数がない。自動車で送迎するなら不便。


二件目

・珠の子保育園:三番目に自宅から近い保育園。大通りに面している。

ヒロミ’s memo

・学童保育もやっているから小学生になっても使えるかも。

カズさん’s memo

・送迎ルートが朝夕の通勤ラッシュで混雑する道路。送迎に不安。


三件目

・桜町保育所:中学校の側にある市立保育所。園庭が広い。

ヒロミ’s memo

・案内してくれた主任先生が怖い。ちょっと嫌。

カズさん’s memo

・開園が昭和で建物が古い。エアコンも設置されていない。


四件目

・清華保育園:ヒロミの勤め先の一つ前の駅近くにある保育園。評判がいい。

ヒロミ’s memo

・親子で参加するイベントが多い。手作りおやつ教室にりぃちゃんと参加したい♡

・年長さんからは和太鼓を体験。

カズさん’s memo

・親子で参加するイベントが多い。保護者会の集まりもあるのか……。


 以上、本日はこちらの四施設を見学に行って来た。


「今日、見学してきた中なら、清華保育園が一番良いな~あそこなら、私が通勤途中で送り迎えできるし。りぃちゃんも、あそこの先生にだっこされてご機嫌だったね~先生と相性が良いのよ、きっと!」

「けど、新規入園は無理って言われちゃったね」

「そう、残念だよね!」


 評判の良い施設は入園希望が集中するため、年度初めに速攻で枠が埋まってしまう。優りの木保育園然り、清華保育園然り。

 見学に対応してくれた保育士の先生に訊いてみたが、やはり0歳児の定員がオーバーしていて、これ以上の新規入園は無理とのこと。希望されるならば、来年度の4月入園で市役所へ申し込んでくださいと、申し訳なさそうに断られてしまった。

 否、清華保育園だけではなく、本日見学した施設の殆どが0歳児は満員との回答をいただいてしまったのだ。


「現状、入園できるのが桜町保育所だけか」

「あそこは嫌だな。あの先生、声が大きくて嫌」


 桜町保育所で見学の対応をしてくれた主任保育士の対応に、ヒロミは抵抗感を感じていた。奇声を上げて走り回る年長の男児に向かって、怒鳴り声とまではいかないが、些かドスの効いた大声で注意をしていたのを目撃した。

 その一瞬で、「ここは嫌」と直感する。

 小学生の頃の、大嫌いだった先生を思い出した。

 授業に関係のない物、自分でカスタマイズできる五色ボールペンや友達同士で交換するキラキラデザインのプロフィールカード。その他諸々、色々な物を不用品として摘発しては、鬼の首を獲ったかのように頭ごなしにヒロミや生徒たちを怒鳴り、取り上げられた。

 その先生を思い出させる保育士のいる施設に、愛娘のりぃちゃんを預ける選択肢などない。りぃちゃんに自分と同じような嫌な思いをさせたくはない。


「もっとじっくり、もっといいところを探そう。りぃちゃんが小学生になるまでお世話になるんだよ」

「最高6年間は通う事になるのか。確かに、あの公立保育所みたいに建物が古いとちょっとね……エアコンも設置されていなかったし」

「熱中症になっちゃう! 桜町保育所はナシね!」


 だけど、入園できる施設はない。市役所がHPで公開している保育園の空き情報によると、現時点で0歳児の空きは送迎困難な遠方の施設しかないのである。


「そうだ、確か僕の工場の近くにも保育園があったよな。結構大きかったよ」

「え、本当?」

「そこなら仕事場の近くだから送迎できるし」

「そこにしよう! 調べてみる、カズさんの工場の近くだよね!」


 名前は、そらのこ保育園。

 大きくてキレイな建物、イベントも充実している。写真の園長先生が優しそう。なにより、年少さんから着用する事になる制服が、スカイブルーで可愛い!


「ここ! ここにしよう! ここに入所希望で申し込んで来るね!」

「え、でも空いているの?」

「定員200人だよ。空いているって~!」


 信号が青になりカズさんが自動車を発車させるように、ヒロミの保活は一歩前進。希望の光が見えて来た。

 りぃちゃん! 毎日パパと一緒に保育園に行くよ。星組さん(年少さん)になったら、可愛い制服を着るよ!

 お出かけで疲れてしまいチャイルドシートで船を漕ぐりぃちゃんを他所に、ママは1人で盛り上がっていたのだった。




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