お姫様の逃避行
遊び人
プロローグ
人は誰しもが黒歴史を抱えている。
代表例は厨二病。片目に眼帯を付け、封印されし魔眼などとほざいていたのは記憶に新しい。
他にも、自意識過剰による失敗、無意識の行動、余計な善意。あげるだけで沢山の例が俺に……誰にでもあるだろう。
ただ…
「ユキさんですか?」
「はい」
今からギルド登録をしようとしている俺…いや、私程黒歴史を量産している人は類を見ないと思う。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
事の発端は10年程遡る。
当時5歳だった私は両親が早々に死去した事で施設ぐらしになり、年上の義姉、義兄にとても可愛がられていた。
ただ……女として。
言わせてもらうが、”俺”は男である。確かに女顔だと言われる事が多い気がしないでもないが、完璧な男である。
当時は目の前で両親が殺されていた事などから引っ込み思案になり、誰も一定距離以内に近づかせること無く隅っこで生きていたのだが、それがより一層保護欲を掻き立てたらしい。
それから男と認識してもらえるようになるまで3年。それからも中学生の間はずっと女の子の衣装などを用意され__軽く女装癖になりかけたが__ある日、それが起きてしまった。
〘スキル【女装】が拡張しました〙
〘拡張スキル【性別変化】を習得しました〙
スキルの拡張だ。全てのスキルで一回ずつは起きると言われているスキルの拡張。それが【女装】で起きてしまった。本来、特殊な人々達により【女装】、【男装】はいくら拡張しても性別は変えられないと解明されているが……私の持っている固有スキル、【拡張領域】はその常識を覆してしまった。
勿論、固有スキルの事は誰にも明かしていないのでバレていない。
「ユキさん?」
「すみません、考え事を」
「いえ、大丈夫です。公開するスキルで悩む方は沢山いらっしゃいますから」
公開するスキル。まあ、当たり前の様に【女装】は公開するわけがない。人によっては1つも公開しない人もいるらしいが、それではパーティに誘われづらくなってしまうので選択肢として存在していない。
……まあ、そこらへんはもう決まっているので話を戻すと、私は固有スキルの能力を駆使して”姫プレイ”から逃げたかったのだ。
楽しくダンジョンに潜りたいと言うのに、彼女等は私がギルド登録をしようとするだけで止めてくるし、ギルドに脅迫紛いの事すらしようとする。
その所為で”幸久”の身でギルド登録をしようとしたらすぐに義兄がすっ飛んできたのだから。
「では、【大鎌術】【瞬装】【自動装備】で」
「畏まりました。【大鎌術】【瞬装】……【自動装、備っていうのは」
「それはちょっと」
「……失礼致しました。では、ユキ様で性別は女。年齢は15、公開スキルは【大鎌術】【瞬装】【自動装備】で登録致します。よろしければこちらに手を置いていただけますか?」
「はい」
〘スキル【魔力感知】を習得しました〙
「登録が完了致しました」
これで私は……
黒歴史の塊となった。
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