第37話 異形の正体とキバの号哭
「・・・仮面、使うしかねえだろこんなの」
「その仮面、あの山にいる黒い塊どもがつけている仮面であろう?」
「・・・何でしってる」
それでも構うものかと、仮面を装着、呪力が溢れ出てキバを黒く染め上げる。
「<
「・・・くくく、そこまで放出するほどの呪力があるか」
「ただ適合させただけだ・・・無理矢理な」
ツルギの山にいた頃、夜中にこっそり小屋を抜け出してはゴソゴソしたりすることなど無く、必死でこの仮面と適合できるよう訓練をしていた。
時には体が暴れたり、頭が割れるように痛かったりと、苦労も多かった。
そんな中でも全力の力で押さえ込み、今では右目がジクジクと痛いだけへと変化させた。それでも結局痛いのだが。
「うるせえんだよ、俺はとにかく勝たないといけないんだ・・・<
日々の修練によってなんとか限界時間を10分にまで引き延ばせたキバ。この時間でケリをつけたい。
「ほう、貴様も中々珍妙な戦い方をする・・・ならば散れ、光刃よ!」
光の刃と闇の短刀。さながら神話の一節にある英雄と悪鬼の戦うシーンだ。
「<砕け散れ>ッ!!」
「<消え失せろ>ッ!」
光刃も短刀も消える。相殺された余波が暴風となって吹き荒れる。
「んのクソ野郎、なんで無効化するかなぁ!?」
「それは私も同じ事!大人しく受け入れよ!!」
目つきを険しくした二人の攻防の速度はさらにあがり、常人の目には追えなくなる。
(本来なら俺も見えないが・・・今は別だ)
ウロボロスと同じ体質になったキバには全てがゆっくり見える。動体視力が強化されたからだ。
(てかほんっと速くなればなるほど威力ってあがるな!これ筋力上げてなかったらもげるとこだぞ!!!)
弾くか受けるか消し去るか。攻勢に出る手段は今のキバにはない。
「〔ねじ切れ〕、<
巨大な煌めきの刃が、キバの元へと迫る。
「〔渦巻け、崩壊〕!!<
崩壊の魔力を辺りに放出し、光刃を分解する。
「そのような大技を連発していては、魔力ももつまいて」
「それを見越して俺は準備してんだよ!」
懐から錠剤を取り出し、口に含み、噛み砕く。
「・・・なんだそれは」
「へっ、秘密だよ」
ナイチ先生謹製、『
ログとの戦いの途中に一回使ったのでこれが最後。
「・・・またしても、奇妙な!!」
「へっ!非凡になれるんなら別にいいし!」
それが自然の摂理ならば、ぶち壊す。
崩して壊して消し飛ばす。それが俺のやり方だと言わんばかりに
片手は剣を振り、もう片方の手で魔力を練り上げる。
「貴様の剣など、恐るるに足りぬ!!」
「〔悪いけど、期待は裏切るよ〕。<
剣を振る、と見せかけて左手の魔力を風に変えてぶつける。
捻れる風が地面を抉り、アスモの右腕を掠める。
そして風によって巻き上げられた紙切れ、十数枚。
「〔もっかいやっちまえ〕!!<
紙片の中に封じられた魔術が解き放たれ、刃の如き突風がアスモの周囲を埋め尽くす。
「小癪な!!・・・ふん、たとえ削られようと治るがな」
削れた部分は肉が再生し、傷口も止血される。
「・・・自分を見てるようだな」
「呪いは元々私の物、その力を使うなど、児戯に等しい」
「・・・そういやそうだったな!!」
『原初の記憶』回廊内で聞いた話で、呪いは悪鬼から派生した物だと聞いた。
「熟知してるよな、性質くらい!!!」
「子細は分からぬが、大体ならばな!!」
光刃が喉元に迫る。ギリギリで黒魔力を放出して分解、ただの光へと戻す。
瞬間、気づく。
自分の頸めがけて二枚の光刃。さっき放出したから少し充填時間が必要だ。
(・・・死ぬ?これ)
不可避を感じさせる『死』が形をもってこちらへ来る。
『風に形を持たせろ!!魔力はこっちが負担する!!』
『そのまま、振り抜け!!』
刃に黒魔力が流れる。ウロボロスの中に流し込んだ魔力が中で練られ、さらに流された形だ。
「『<
ウロボロスと
集中が途切れ、風の剣は
(くっそ、再生させても体力までは戻らない・・・極度の疲労で体が震えてきた)
体が小刻みに震え、目の痛みも強まる。いっそえぐり取ってしまえば目の痛みはなくなれど、その後に支障が出るのでやらない。
しかも再生するもの。
「しかしながらその仮面、使うという発想をするとはな」
「・・・どういうことだ?」
「その仮面、というか異形だな。私の断末魔から生まれたのだよ」
「・・・はぁ!?」
時代は遡り、神話に描かれる頃。
「悪鬼!!貴様は多くの罪を重ねすぎた!!!」
「うるさぁあああああいッ!!!私は私の理想へとおおおお!!」
「今ここで眠りにつけ!悪鬼!」
英雄が最後の一太刀を振るい、悪鬼の弱点を切り裂く。
「う、があ、あああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」
最後の抵抗、最後の叫び。
その瞬間、地面から湧くように黒が生まれ、暴れ出す。
「あ、あっがああああがあああああ!!!!!」
叫ぶと、暴走は停まり、それを抑制する仮面が生み出される。
悪鬼の姿はかき消え、力尽きた英雄は上空から墜落する。
「・・・かはっ」
頭から落ちても、まだ死なない英雄。自分の周りにいる
それによって、異形と化す。闇の力を使っていた英雄の血肉によってより闇の深い所へと脚を踏み入れた彼らは、仮面に全てを宿した。肉体は仮初めである。
そしてその仮面を付けた者は同じ異形となり、気分によって異形は飛び立ち、人にとりつき呪いをかける。
しかし、その異形の仮面を装着しても平気な者が現われた。
呪いをもった人間は、耐性があって多少の適合化が必要なものの使いこなせる、ということが分かった。
そしてここ数百年現われなかったその使い手が、キバなのだ。
「へぇ、つまり俺は英雄とお前と。両方の力を持ってるって訳か!」
「そういうことだな。しかし、貴様はなんともつまらぬ」
「・・・あ?」
「貴様は戦い方が奴に似てるだけ、自分のみで使った技では覇気もない威力もない。無い無い尽くしの貴様は、なんともつまらぬ相手だ」
「・・・よしお前は一発切り飛ばす」
体全体から怒りのオーラを漂わせ、剣を構える。
脚に力を込め、爆発するような脚力で跳躍、剣を全力で振る。
「・・・ッ!!貴様、さっきまでのは」
「うるさいッ!!」
光で押し戻された刃を構え直し右へスライド、再び跳んで大上段から剣を振りおろす。光刃を切り裂けど、本体へは届かない。
飛び退き、距離を取ったキバは前傾姿勢を取る。
「
裂帛の気合いを放ち、鯉口を切る。
剣圧がアスモを苛み、瞬きの刹那。
「<居合い・
火花が散る居合いは靄を通して的確にアスモを狙い、脇腹に深い傷を負わせる。
「ちっ、頸まではいかないか・・・」
心底悔しそうなキバ、しかし驚愕に目を見開いたアスモは――
「許さん、許さん許さん許さん許さんッ!!貴様、よくも私に傷をおおおおッ!!」
怒りに身を任せるかのように魔導を放つアスモ。
怒りに任せた攻撃は直線的、避けるも弾くもお茶の子さいさい、そう思っていた――
ジュッ
何かが焼ける音。
キバの体のバランスが崩れ、左半身に強烈な浮遊感が訪れる。
後から訪れた痛みと、見た光景が全てを物語る。
左腕が、無い。
光で焼けた事で血は止まっていても、火傷で痛む。
地面に転がった左腕は、練っていた魔力を手放し、ピクリとも動かない。
「・・・は、はは・・・嘘だろ」
キバ自身、何が何だか分からない。
「く、くく、くははははははははははは!!私に傷をつけるからこうなるのだ!!」
アスモの高笑が響き、キバは驚愕に目を見開く。
「私は
「だから何だ」
笑っている間でさえ、暇を与えないキバ。火傷を呪いで治し、突撃。
「くッ・・・!?何だ、抜けぬ!?」
「<呪縛術・
左腕がないため、突き技は繰り出せないと判断したキバは、振りおろして斬る技を選択。時差で発動すr呪縛術で動きを封じる。バランスが崩れた一撃には、異常な威力が伴うかわりに、その後反動で硬直するというデメリットも持つ。
縛られたアスモは抵抗しようと光刃で迎え撃とうとするも、バランスを崩し続けるキバに上手く光刃を当てれない。
肩口に刃を押し当てられ、戦慄するアスモ。
「斬り、裂けええええええええ!!!!」
渾身の叫びもむなしく、キバの刃は通らない。
「はぁっ、はぁっ、はぁっ・・・嘘だろ・・・」
空中へと跳び、後退。
(刃が通らねえ程堅いなら、それを突き抜ける程強く・・・!でも腕が無いから突き技とかの一極集中がかけれない・・・!!ならもう一回腕を魔力で・・・魔力に質量も実体もない・・・)
距離を取って思考を開始、打開策を探すも見つからず、八方塞がりもいいところ。
「くくく!!呪縛か、考えたな。しかしこの私に刃が通らなければ意味はない!!」
「・・・ははは、これ勝てるか俺・・・?」
乾いた笑いしか出てこないような、圧倒的不利な戦い。体が芯から震え、腹の奥底が冷えるような感覚。今すぐに全てを投げ出して逃げたい。
(・・・打ち上げるッ!!)
低い姿勢。より空気抵抗を軽減する姿勢を取ってアスモの元へと迫る。
「くっそ、がぁあああああ!!!!!」
思いっきりの力を込めて、アスモを空中へと送り出す。
(あいつなら、ほぼ確定で飛行魔術くらい使える・・・!!)
飛行魔術は上級魔術師が使う魔術。文字通り空を飛ぶ。
「くっ、くそこれのせいで無意味に魔力を使う・・・!」
(よし、狙い通り!!)
空中戦では、より速いほうが主導権を握る。
(俺はバランス崩れるけど、軽量化されてる!)
普段とは違う感覚で上空へと駆け上がり、アスモの元へ向かう。
「さぁ、どっちが勝つかな・・・?」
「小癪な・・・!貴様如き、すぐにたたき落としてくれるわ!」
曲線を描いて空を駆け、衝突。貼られる弾幕のような光刃は全て躱すが、自分の刃さえ通らない。
速さについていく為に二人とも話さず、より速くなる為に風の魔法をかけたりする。
黒い線と輝きの線が混じり合い、螺旋を描く。途中に放たれる突風も、刃の嵐も、二人を傷つけられない。
雲の中を突き抜け、乱気流を断ち切り、雨雲を散らせる。
蒼天の中を駆け抜ける二人の目は爛々と輝き、『ねじ伏せる』『たたき落とす』『ここで殺す』など感情がこもった視線をぶつけ合う。
上がった速度は鳥も追いつけない。
(髪が焦げてきた・・・そろそろ空気摩擦が強くなってくる。俺はバランスを崩した変則的な攻撃で攻めるっ!!)
歪な折れ線軌道を生み出し、攻撃を回避。肉薄したアスモに小さい斬撃を与えると同時、キバも脇腹も斬られる。
(これには反呪がない、再生可能だ)
剣を鞘に戻し、右手に魔力を溜める。
あふれ出した風の魔力が推進力となり、突き進む。捻れて抉る風がアスモの両腕を削り、ばらまかれた紙片から生み出される突風の槍がアスモの足下を突き刺す。
アスモは反撃と言わんばかりに大きめの光刃で全てを裂く。
(速すぎる応酬、黙ってねえと舌を噛む!!)
床に叩き付けたボールのように跳ね返り、刃と刃を合わせる。
光を裂き、短剣を砕かれ、一進一退を繰り返す。
(こやつ、この神に等しい力を得た私に付いてくるだと!?あり得ん!!)
平凡を超える速度で成長していくキバに、驚きを隠せないどころか苛立ちさえ覚えるアスモ。それでも尚たたき落とそうとする。
右腕に魔力を溜め、突き出す。ただ突き出すというだけの動作さえ、左腕が使えないと難儀するものだ。
(〔静かであれ、海上の凪の如く〕・・・<カーム・ウィンド>)
優しく包み込み、消滅させる風がキバの周りを渦巻き、光刃をかき消す。
先ほどキバが行った『
曲がった光線が三方向から迫るも、身を捻って回避。反撃の風魔法は、より細く、速く、鋭い攻撃を目指し、糸のようにして射出。
先ほど回避した光線が一つに結ばれ、極太の光線に成って帰ってくる。
黒魔力を放出して光線を散らせ、余った分は弾にして射出。
アスモは傷を負っても即再生、全く傷つかない。
逆に精神も体力もギリギリで耐えきっているキバは、脳内が霞むように疲労が蓄積、今にも視界が暗転しそうである。
(くっそ、ここで仮面を使っておいてよかった・・・)
右目の痛みと与えられた力によって正気を保てる。反呪の力によって再生はできないが、耐えきれるとこまで耐えきる。いや、勝つ。
その気概だけが支えとなってキバを突き動かす。
(限界を超えろ、普通を超えろ・・・
脚の筋繊維が弾け、激痛が走ろうと、構わず突貫。剣を抜き、空中を疾走し、左肩から袈裟斬りにする。
血煙が溢れ、アスモの服を紅く染める。
(ふん、こんなものすぐに再生・・・再生できない!?)
傷口が塞がらない。ゆっくりと、時間をかけてしか再生できない。
(まさか、奴は一時的に反呪の力を・・・!?)
キバの知らぬうちに、剣は微弱な反呪の力を纏い、アスモの体を傷つける。
「小癪、不快、滅すべし!!」
とうとう怒りに口を開いたアスモが、とてつもなく太い光線を放つ。
(・・・見える、全部見えた)
光線の中心を見極め、剣先に黒魔力を集中。前に突き出し、中心に剣先を宛がう。
キバを避けるように光線が裂け、後ろでまた一つになり、消滅していく。
(俺の魔力八割、呪力四割を使用して、あの魔術を使う!!)
左肩に魔力と呪力を集中、魔方陣を展開する。
「〔神が受肉し、地は芽吹き、川はせせらぐ〕・・・」
目を閉じ、詠唱を開始。空気に触れた血のような色をした、禍々しい障壁が攻撃を阻む。瘴気が、アスモの肌をチクチクと刺す。
「〔しかし、我求むるは邪神、混沌也〕・・・」
聞いてるだけで耳が痛くなる。
「〔我が神となり、受肉する。贄ならばある〕・・・」
魔方陣が輝き、紅い線が蠢く。
「〔この手に、力を〕――<黒魔術『
血管が巡り、骨が生え、肉が付く。斬られた筈の左腕が、再生した。
「何故だ、斬った筈では」
「一時的に呼び戻しただけ、刻限付きの腕だ!!」
本調子とばかりに疾走、切り傷を負わせる。
風魔法で
(こやつ、腕を切っておいて正解だった!!)
光刃をノータイムで消し、突っ込んでくるキバは恐怖でしかない。
「お前は、絶対に倒すッ!!」
一極集中。全てをこの一撃に込める。
「貴様の剣など・・・!?がっ、アァッ!?!?」
突如、アスモの様子が急変する。目の焦点が狂い、口を大きく開け、舌を出して血反吐を吐き、手足があり得ない方向に曲がってめきめきと音を立てている。
(何故だ!?何故体が動かぬ!?動いてはいるが、制御ができぬ!!)
アスモの精神状態は異常、何かが荒れ狂うような感覚に苛まれる。
『やだなぁ、僕がそんなことだけで終わる訳がないじゃない』
あの時の言葉が蘇る。
<
時差で、相手の精神と肉体、それぞれがお互いを拒絶しあう。否定する。
藻掻き、苦しみ、死に至らしめる弾丸。それが<
「動かねえテメエなんぞ、貫けるわあああああ!!!!」
左腕がひび割れ、崩壊が始まっても尚、突きの姿勢を崩さない。
「<
左腕が崩れきる寸前、神速の突きを繰り出す。
アスモの鳩尾を貫く剣先が、さらに深く深く刺さり――
アスモの体に、大穴を開ける。
剣先は血に染まり、アスモの体は、動きを止める。
「はぁ、はぁッ・・・やった・・・!!」
力尽き、空から落下。
雲を突き抜け、地上が見える。
「おぉー!キバだ!」
「キバが帰ってきたぞー!」
「受け止めろ!!」
「凱旋だー!」
「ははは・・・ちゃんと受け止めて・・・」
瞬間、キバは見た。
怒りに目を開き、充血した目でこちらを睨むアスモ。その体の前で、
「全員ッ!!!!!!!!逃げろォオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!」
必死の叫び。靄を全力で展開するも、間に合うか――――
「許サヌ、ヨクモ私ヲ、傷ツケタナアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」
怨嗟の響き、展開される光の雨。
「ああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」
靄が、間に合わない――――
「おい、あれやべえんじゃ!?」
「逃げろ!逃げるんだ!!」
「これじゃ、無理か・・・?」
「無理でしょうね、・・・私も無理だもの」
「・・・原因が分からない、これじゃ斬れねえ」
雨が、降り注ぐ。
世界が、白くなる――――
地上に降り立ったキバが見た景色は、深紅の大地。
光刃によって切り刻まれた生徒や先生達の亡骸が、転がっているのみ。
爪や髪が散乱し、周囲に焦げ臭い匂いが立ちこめ、声など存在しない。
立っている人間が、いない。
フラーがいない。
スレインも、ジェムもいない。
ノアも、メイルーもレイラもジャスティンもグレムもアルロもタマモもスノウもクレナイもポートもゲインもソバーもいない。
アイギスがいない。
レイナが、いない。
誰も、いない。
キバは、地に這いつくばり、嘆き、涙を流し――
「うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!」
後悔と自責、無力感。全てが波となって押し寄せ、何もかもを諦めるような号哭。
「うああ、あっ、あっ・・・」
脈も無い、ただ冷たくなるのを待つだけの友人を前に、耳を塞いで目を閉じてしまいたかった。
「はははははははははは!!これも全て、貴様のせいだ!!」
髪を乱雑に掴み、持ち上げるアスモ。キバは、何も出来ない。
「貴様が最初から諦めていれば、友は死ななかった!!貴様が殺したも同然だ!!」
そうとしか思えない。俺があんな事をしたから。あの時、諦めていれば。
ただ涙を流し、謝ることしか出来ない。
ごめん、皆。きっと俺の事、恨んでるよな・・・
「向こうで、貴様の友は呆れ、失望しているだろうよ!!」
すべてを真っ向から否定され、キバは打ちひしがれるしかない。
『馬鹿野郎!!!』
頭の中で、ウロボロスの声が響く。
「もういいんだ。俺が、俺のせいで・・・」
『お前は、あいつらから何を学んだんだ!!!!』
うるさいよ、ほっとけよ。
『お前は!!あいつらから何て言われた!!』
・・・俺は
『思い出せ!声に出せ!』
お前に足りない物、信頼。
『そうなんだろ!!じゃああいつらは、お前の事を恨んでると思うか!!』
思うよ、思わないでいられるか!!!
『そんな訳あるか!!あいつらは!!お前が全力で戦ってるのを知ってた!!』
嘘だ・・!!
『お前のせいじゃない!!諦めるな!!』
・・・無理だよ、勝てる訳だない。
『お前は、あいつらを信じられねえのか!!』
『あいつらは、お前が
『そのお前が、いつまで蹲っている!!』
『立ち上がれ!!』
・・・やってやるよ。俺が、全部終わらせてやる。
『そうだろ!!それでこそお前だ!』
・・・お前の力を貸してくれ、ウロボロス。
『当たり前だ、全力を貸してやるよ』
・・・ありがとうな、ウロボロス、皆。
俺は、お前らのおかげで、ようやく非凡になれる。
「はははははははははは!!!どうだ、何か言ったらどうだ!?」
「・・・ぅ」
「あ?聞こえないぞ?」
「違う、俺の友人は、そんな風に言わない」
「・・・な?」
「俺の友人を、恩師を、先生を、好きな奴を、愚弄するなぁあああッ!!!」
全てをなぎ倒す、黒の波動。アスモを吹き飛ばし、周囲の物を吹き飛ばす。
黒い怒りと、想いが、波となる。
目を閉じなければならないような突風の後、そこに現われたのは、漆黒の玉座。
その玉座に腰掛けるは、一人の男。
光を反射する黒い短髪。
深紅の左目に、金色に染まった瞳の右目は、縦長の瞳孔が走り龍の目のよう。
黒い鱗の様な鎧を纏い、失った左腕も元通り。
傲岸不遜に頬杖をつき、傍らに剣を突き刺した男は、威風堂々とした佇まい。
龍をその身に宿した
「お前は、俺が殺してやる」
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