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エリー.ファー

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 あの子のことが好きなので、どうにか告白がしたい。

 というわけで。

 グランドにあの子の名前を書くことにする。

 そして。

 大好きです。

 完璧ではないか。

 いや。

 完璧に決まっている。

 僕が考えるのだから。

 僕は数学、国語、理科、社会、家庭科、技術が得意なスーパー高校生。

 学校のテストの合計得点は学校で一番だ。

 一番好きな科目は家庭科と技術だ。教えてもらったことを直ぐに家で実践できるから。

 一般的な頭のいい高校生の好みからは少しばかり外れているような気がするけれど、そんなことは気にしない。何故なら、僕は完璧だからだ。

 イエイ。

 さて。

 どうするか。

 彼女の名前は少しばかり長い。

 じゅげむじゅげむごこうのすりきれかいじゃりすいぎょすいぎょうまつふうらいまつくうねるところにすむところやぶらこうじのぶらこうじぱいぽぱいぽのしゅーりんがんしゅーりんがんのぐーりんだいぐーりんだいのぽんぽこぴーのぽんぽこなーのちょうきゅうめいのちょうすけ子。

 どうも母親が相当な落語好きらしく、その名前をつけたらしい。

 もう、そういう不遇な人生が確定しているところとか特に可愛い。

 彼女は名前にコンプレックスがあるようだけれど、僕からしたらそんなことはどうでもいい。

 何故なら。

 彼女になった時には名前を変えてもらうからだ。

 名まえの変更手続きというものは結構簡単なものであるから、僕が手伝ってあげればすぐだろう。もう、名前は考えてある。

 シエナスプライトパンナコッタペペテロンベデストロワゲテロスキージョナイダショウトワンゼケロウェテストリシアザムジョックルワシンディエセンデイトドノトアフォクロゼンデイシンディバクワダンセル。

 短い方が良いに決まっているので、当然、じゅげむじゅげむ、とかいうやつよりかは短くした。

 省略してシエナにしようと思う。とにかく、愛する彼女のことを僕はシエナと呼びたい。

 想像するだけ、顔がにやける。

 しかし、今現在の彼女の名前は。

 じゅげむじゅげむごこうのすりきれかいじゃりすいぎょすいぎょうまつふうらいまつくうねるところにすむところやぶらこうじのぶらこうじぱいぽぱいぽのしゅーりんがんしゅーりんがんのぐーりんだいぐーりんだいのぽんぽこぴーのぽんぽこなーのちょうきゅうめいのちょうすけ子。

 これをいかにグラウンドに書くか、という事なのである。

 僕の計算によれば、グラウンドを一望できるのは屋上からになる。しかし、屋上からとなるとある程度文字が大きくなければいけない。

 文字数が多いため、当然文字一つ一つの大きさは小さくなるので残念ながら彼女が目視できるものにはならない。

 つまり。

 これは、失敗する。

 五日もかかって考えた告白方法なのに。

 不可能だった。

 僕は。

 僕は好きな人のことを考えると頭が回らなくなる。事実や事象、今現在の自分が置かれている状況など全く分からなくなるのだ。

 嫌になる。

 こんな簡単なことにも気が付けないとは。

 僕は天才だというのに。

「ねぇ、何してるの。難しい顔して。」

 僕は驚き振り返る。

 未来の僕の彼女になると心から嬉しい、その人、じゅげむさん、いや、シエナさんではないか。

「えぇと、その。あの。」

「それって、グラウンドに文字を書く下書き、かな。すごいね、やっぱり頭のいい人はいろんなことを考えるんだね。」

「あ。いやいや。その、あ。」

「なんか、最近テレビのドラマでそうやって告白するシーンあったよねぇ。」

 四日間考えて。

 五日目に何の気なしに見たテレビドラマの告白方法を丸パクリしたことを改めて自覚させられる。

 変な笑いが出る。

 恥ずかしい。

「実は、その、僕はその方法で告白しようと思っているんだ。」

「え。」

 彼女が驚いた表情をしてから、首を傾げる。

「わたしたち、付き合ってるよね。」

 

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